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「女性は土俵に上がってはいけない騒動」の詐術〜あれはただの間違いだ!

ただの間違いなんじゃないの?

4月4日のこと。すでにメディアでよく知られている事件だが、京都府舞鶴市文化公園体育館で開催された大相撲の春巡業で、土俵で挨拶中の多々見良三市長がくも膜下出血で倒れ、女性医療関係者が土俵に上がり救命処置を施した際に、土俵上での女人禁制のしきたりに基づき「女性の方は土俵から降りてください」のアナウンスがなされたことが物議を醸している。

さらに一部のメディアは騒ぎが一段落ついた時点で土俵に塩がまかれたことについても批判的な論調で報道をおこなった。加えて6日に開かれた宝塚市の大相撲地方巡業で中川京子宝塚市長が「土俵で挨拶したい」と希望したにもかかわらず相撲協会から断られたことについて「女性や知事の市長も増えている。女性の総理大臣が現れたとき、土俵に登ってはいけないのか」と意見したことが、さらに議論を賑わせている。

さて、これらの展開、僕にはどうも奇妙なものに思える。簡単に言えば、最近流行の「協会バッシング」の一環にしか思えないからだ。メディアの論調は極めて一方的であり、また論理を勝手にすりかえている。まあ、騒ぎが大きくなって視聴率が稼げればよいと言うことなのだろうか。いいかえれば「弱いものイジメ」にも見える。調子こいているようにしか思えない。

騒ぎの奇妙な点を時系列に沿って整理してみよう。先ず多々見市長が倒れて、その直後に女性があがったことが咎められた件。これは完全にアナウンスした方が誤っている。担当者=行司のアタマが固すぎたのだ。このことは類例に喩えれば簡単だ。たとえば女性が公衆トイレで同様に倒れ緊急の処置が必要になったとする。その際、近くに医療関係者の男性がいれば、当然、女性トイレに入るだろう。

さらに救急救命士が男性の場合(現在、多くが男性)、躊躇亡く女性トイレに入る。そしてこれを咎める人間などいないだろう。いるとすればアタマの固いフェミニストくらい。つまり「男性禁制の場になぜ入ってくるのか」という主張になるのだが、そんなフェミニストがいるわけはないだろう。ところが、これを今回はアタマの固い協会の人間=行司が気が動転してやってしまった。先ずは人命が尊重されるのがあたりまえなのだから(もちろん、こういう動転する人間が存在することが日本相撲協会がさまざまな問題を引き起こす構造的問題点を象徴しているともいえるのだけれど)。

相撲協会も、これについては八角理事長名義で謝罪を行った。つまり、「行司が動転して呼びかけてしまいました。不適切な対応でした。深くお詫び申し上げます」さらに「とっさの応急処置をしてくださった女性の方々に深く感謝申し上げます」ともコメントしている。つまり、事件それ自体は「単なる間違い」。だったら、とりあえず、これでチャンチャンでよろしいのでは?

「女性差別問題」を利用する潜在的女性差別主義者?

ところが、ここから議論がすり替わる。先ず一部メディアが多々見市長を担ぎ出した後、土俵に塩をまいたことを指摘。これは、明らかに「女性は不浄な存在だから塩をまいたのだ」という女性差別認識に基づいた行動と判断しての報道だった。

もちろん、これは間違い。何か事があったら土俵に塩をまくのはごく当たり前のことで、これは事件の後のお清めくらいの意味しかないだろう。ましてや女性が土俵に上がってきたことと接続するのはあまりに無理がある。というか、そういう判断を無意識に行い報道するメディアの方がはるかに女性差別主義者と言わざるを得ない。女性差別主義者はアンタだよ!

さらに宝塚中川市長のパフォーマンスも極めて政治的だ。彼女もまた行司が動転してポカをやったことをスルーし、議論の対象を相撲の土俵での女人禁制にすり替えている。この市長も、極めて嫌らしい存在に僕には思えた。中川市長の行動もメディア同様、浅はかでスタンドプレイ的なパフォーマンスとしか考えられない。現状では土俵に上がれないのは伝統上あたりまえ。ここでゴリ押しをしても無意味なことが解らないこの市長が僕には少々哀れに思えた。この議論は別の「土俵」でやるべきことなのだ。「相撲の伝統についての議論を戦わせる」という土俵で。

間違えないでもらいたい。ここまで僕は土俵上に女性があがることの是非を議論していない。もちろん、相撲という伝統と男女平等をどのように考えるべきかは当然議論すべき対象だ。個人的な見解を述べれば、いずれ女性が首相になった際に、幕内最高優勝の力士を表彰するのが女性であってもよいと思う。この議論はもっとやって然るべきだろう(今回の事件が、そのきっかけになるとすれば、それはそれでよいだろうが)。

むしろ、ここで指摘したいのは、この「議論のすり替え」だ。このすり替えの背後に潜んでいるのはメディアと中川市長の利権獲得(視聴率、そして支持率アップ)という私的欲望に他ならない。しかも、このメカニズムが無意識に作動しているところが怖いのである。

そして、こうした無意識の私的欲望の作動、実は女性を無意識に差別している人間たちのメカニズムと何ら変わるところがない(そういえば昨日(4月9日)、NHK7時のニュースで真っ先に大谷翔平の大リーグでの活躍が大相手機に報道され、同じ時間帯に発生した島根の震度5を超える地震の報道が後に持ってこられたことを友人がfacebook上で嘆いていた。友人が指摘しているのもこれもまったく同じメカニズムだろう。つまり、NHKも視聴率優先を無意識にやっている)。

だから、メディアのこうした怪しい報道や政治家のパフォーマンスは適当にスルーしたほうがいい。今回の事件。間違いと女性差別問題。先ずは切り離して考えないとアブナイ!

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