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急成長「ストロング系酎ハイ」の人気が過熱する3つの理由


【各社がしのぎを削っている】

 試しに買ってみた「ストロング系酎ハイ」をプシュッと開けて飲んでみると、強炭酸に強アルコールがグッと来て、飲み切る頃にはほどよく酔いが回ってきた。今まではロング缶を2本買わないと飲み足りなかったが、これなら1本で済みそうだ──。

 初体験の記者の感想だが、この“ストロング系”が、売り上げを急激に伸ばしている。酒造業界に詳しいジャーナリストの永井隆氏は、その急成長ぶりをこう語る。

「ストロング系酎ハイは、『割らずにすぐ飲める』を意味するRTD(レディー・トゥー・ドリンク)カテゴリーに入る商品で、RTDの市場規模は2015年から3年連続で10%以上の拡大を続けています。ビール類の出荷量が13年連続で史上最低を更新するなかで、RTDは酒類として最も伸び率が高い。なかでもストロング系酎ハイ市場は2010年から2017年までに2.5倍に拡大。酒類ではほぼ唯一ともいえる販売増が見込めるジャンルなので、各社が鎬を削る状況になっています」

 最初に商品名に“ストロング”を冠したのはキリンだった。2008年に「キリン 氷結ストロング」の販売を開始。アルコール分8%と缶ビールよりも濃いのに、値段は安いとあって、それまで“缶酎ハイは女性やお酒の初心者向け”と敬遠していた40~60代の男性たちからも強い支持を得た。

 その成功に着目したのがサントリーで、2009年2月にアルコール分8%の「マイナス196℃ストロングゼロ」シリーズを発売。2013年には甘さを抑えた「ストロングゼロ〈DRY〉」を、2016年に果実の苦味が特徴の「ストロングゼロ〈ビター〉」シリーズを追加した。後発ながらストロング市場の最大のヒット商品となる。

「『ストロングゼロ』シリーズの2017年の販売実績は3536万ケース(250ml×24本換算)です」(サントリーホールディングス広報部)と高アルコール市場の販売実績では首位を独走している。

 いまや、ビール大手にとって、ストロング系酎ハイはビールより期待できる売れ筋商品となっている。

 後を追うアサヒも、2016年に販売開始したアルコール分9%の主力商品「アサヒもぎたて」シリーズが2017年の販売実績で前年比32%増(934万ケース)となった。今年4月3日には香味バランスを見直し、パッケージを刷新するなどの「クオリティアップ」を敢行。さらなる販売拡大を目指している。

 サッポロも、2015年と2016年に期間限定で販売していたアルコール分9%の「サッポロ 超男梅サワー」を2017年に通年販売に切り替えた。この4月3日からは、同8%の「サッポロ りらくす」を発売し、本格的に“ストロング系酎ハイ”に参入した。

 後発のサントリーにトップの座を奪われた格好のキリンは、この4月10日に新ブランド「キリン・ザ・ストロング」を投入。「ストロングゼロ」に次ぐ1330万ケースの販売実績(2017年)を誇る「氷結ストロング」シリーズがあるにもかかわらず、さらに社名を冠した商品を投入したのだ。

「『キリン・ザ・ストロング』は当社のRTDで最も強い炭酸ガス圧の“ハードな炭酸感”、新開発のハードエキスを使用した“ハードな味わい”、アルコール分9%という“トリプルハード製法”で実現した刺激と飲みごたえが特徴です」(キリンコーポレートコミュニケーション部)

 こうしてビール大手4社が競い合うなか、“存在感”を見せているのが焼酎の製造販売老舗である宝酒造だ。ストロング系酎ハイの販売実績では、サッポロを凌ぐ。

 2006年から販売するアルコール分7%の「タカラ焼酎ハイボール」は、販売実績で1000万ケースの大台を突破した。

「ご好評をいただき、2017年度の販売実績は前年の2桁増となりました。2016年9月からアルコール分9%の『タカラcanチューハイ〈ドライ〉』も発売しています」(宝酒造広報課)

◆男性好みの味も続々

 ストロング系の人気について、前出の永井氏はこう分析する。

「小売りの値段が350ml缶で140円(税抜)程度とビールよりも70円ほど安い。さらにコンビニ大手のセブン―イレブンやイオン、西友などのプライベートブランド商品では100円ぐらいのものもあります。手頃な価格で、少量でも酔えるというコストパフォーマンスの良さがまず挙げられます。

 酒税でも、缶酎ハイ(350ml缶)の税額は28円で、ビール系飲料のなかでは一番安い『第3のビール』と同じですが、第3のビールは2020年に37.8円、2026年に54.25円へ増税されるのに対し、缶酎ハイは2026年でも35円に抑えられる予定です。今後、各社がますます力を注いでいくのは間違いないでしょう」

 値段だけでなく、味でも顧客ニーズの追求が熱心にされているという。

「アルコール分が高いと独特のアルコール臭が強くなりがちですが、各社とも技術革新を進めて、誰もが飲みやすい商品を開発しています。さらに、ベース酒となるウォッカや焼酎は蒸留酒なのでプリン体や糖分がほとんどなく、健康志向に合致したこともヒットの要因と考えられます」(同前)

 もうひとつ、酎ハイといえば果汁の風味を活かした女性好みの味というイメージもあったが、ストロング系には男性の好みを意識した味が展開されている点も注目だ。

 サントリー「ストロングゼロ」シリーズでは、「果実しっかりシリーズ」に加えて「甘くないシリーズ」を投入して、男女それぞれのニーズに応えている。「もぎたてシリーズ」が主力のアサヒも、2017年からアルコール分9%の「ウィルキンソン・ハード無糖ドライ」を展開、炭酸が強めで“全く甘くない”シリーズを販売している。味や炭酸の刺激でも“ストロング”を志向しているようだ。

※週刊ポスト2018年4月20日号

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