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森友問題で「安倍叩き」を続けるおかしさ

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はたして「総理の意向」はあったのか。「森友文書問題」で当時の財務省で理財局長だった佐川宣寿氏は、国会で安倍首相や昭恵夫人の関与を否定した。「疑惑は深まった」とするメディアも多いが、元理財部長の高橋洋一氏は「疑惑と思惑を取り違えたおかしな議論が続いている」と指摘する。真実はどこにあるのか――。


2018年3月27日、佐川宣寿前国税庁長官の証人喚問が行われた参院予算委員会に集まった多くの報道陣。(写真=時事通信フォト)

■元理財部長である筆者にも取材が殺到

この国にはびこる「おかしな議論」を象徴する森友学園問題が、再び息を吹き返した。

きっかけはご存じのように、2018年3月2日付『朝日新聞』が報じた「財務省による決裁文書の書き換え疑惑」だった。世間が大騒ぎするだけのインパクトはある。公文書の改竄は刑法の「虚偽公文書作成等罪」にも抵触する。第一報に接したときの筆者の直感は、「もし記事が事実なら財務省が解体、逆に誤報なら『朝日新聞』が解体、巨大組織のクビを賭けた論争になるか?」というものだった。

マスコミが“疑惑”を追及するのは、大いにけっこうなことだ。それが権力の腐敗をチェックするジャーナリズムの正しい姿勢でもある。しかし、この国のマスコミが報じるニュースは、“疑惑”と“思惑”がごちゃまぜになっている。

昨年来、この森友学園問題をめぐっては、元財務官僚で理財部長を務めた経験もある筆者にも、各方面から問い合わせが殺到した。そして、このたびの財務省の書き換え疑惑についても、マスコミの記者から以下のような質問を受けた。

「官僚の一存で文書は書き換えられませんよね」
「政治家の指示があったのでは?」
「指示がなくても、官僚の忖度はあったはず……」

こうした質問は、すべてマスコミの“思惑”から発せられている。識者や関係者から「イエス」の言質をとることを狙いとした、稚拙な取材である。筆者は官僚時代の経験に照らして正直に答えた。

「文書のありかを知っている官僚なら書き換えはできるだろう」
「文書の存在を知らない政治家に指示はできない」
「財務官僚が政治家に忖度していたら、省内で出世できなくなる」

筆者のコメントは、その場で取材記者から「使えません」といわれた。そもそも取材をしておいて、コメントが「使える」「使えない」ということ自体が理解できない。“思惑”どおりの記事に仕立てるためには、都合のいい論調だけが切り取られ、都合の悪い意見は捨てられる。だから筆者が知る「真相」は、闇に葬られる前に自身の連載や書籍に書きとどめてきた。

森友学園問題が最初に報じられたのは2017年2月。当時から多くのマスコミは、「国有地の大幅値引きには安倍昭恵夫人の関与があり、その陰では『総理の意向』が働いていた」というストーリーを展開してきた。そのストーリーに沿って、設立予定だった小学校の趣意書に書かれていた校名が「安倍晋三記念小学校」であったなど、数多の報道がなされた。

たとえば、この趣意書に書かれていた小学校名が「安倍晋三記念小学校」ではなく、実際には「開成小学校」であったことをご存じだろうか? この情報は昨年12月22日付『朝日新聞』で報じられたが、それまで「安倍晋三記念小学校」という誤った情報は半年以上も放置され、それが謝罪とともに訂正されることもなかった。

■実態は「近畿財務局のチョンボである」

さて、この問題が報道されはじめた当初から、森友学園問題と安倍総理は無関係であり、実態は「近畿財務局のチョンボである」と、筆者は繰り返し述べてきた。しかし財務省の責任についての議論は、一向に起こる気配すらなかった。

そして、今年3月に財務省による決裁文書の書き換え疑惑が報道されて以降、どういうことか、「総理の意向」というストーリーがさらに強化された。3月20日付『朝日新聞』には、<改ざん把握いつ、追及「事実関係確認できるのは財務省だけ」官僚に押しつける首相>というタイトルの記事が出た。そこには記者が「使える」と判断したのだろう、筆者と同じような経歴をもつ大学教授のコメントが掲載されていたから、引用しておこう。

<公文書改ざんという危険を冒すことは、やはりよほどの政治的な圧力でもない限りあり得ないことだ。「忖度(そんたく)」の領域をはるかに超えた行為と言える。今のままでは平行線の議論が続く。佐川氏の証人喚問は当然、安倍首相の妻・昭恵氏付の政府職員(当時)の国会招致も必要だ>

そして3月27日。佐川宣寿・前国税庁長官(当時の理財局長)の証人喚問が実施された。結果はご存じだろう。決裁文書の改竄は理財局のなかだけでやったことで、官邸には報告されていなかった。安倍首相、昭恵夫人、菅官房長官、麻生財務相らの関与はすべて否定され、指示も、協議も、相談もなかったと、佐川氏は証言した。1年前から筆者が指摘し、マスコミが無視してきたことが、証人喚問で語られたのである。

この間、国会の一日の開催予算が3億円とすれば、1000億円もの税金が費やされた。証人喚問後、一部のマスコミは証言拒否が多かったことを理由に「疑惑が深まった」と報じたが、現在の法律では、佐川氏自身が刑事訴追の恐れのある事実に限られる場合にしか証言拒否は使えない。彼は自己の権利を行使しながらも、真相解明に協力したといえるだろう。

マスコミにとっては、この証人喚問も「使えない」ものだったかもしれないが、正当な権利である証言拒否について「疑惑が深まった」としている時点で、その“疑惑”は“思惑”にすぎない。

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