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西尾維新アニメプロジェクトINTERVEW 西尾作品初のアニメ化だからこそ監督・スタッフ選びは慎重にした- 岩上敦宏

『化物語』監督は新房氏をおいて他にいないと思った

―― 初めて西尾作品を読んだときの印象は?

最初に読んだのは〈戯言〉シリーズなんですが、本当に面白いと思いましたし、なんというか「本物だ」という感じがしました。それですぐに、当時西尾維新さんの(講談社の)担当編集者だった太田克史さん(現・星海社副社長)に「アニメに興味はありませんか?」と話をしに行きました。しかも飛び込みで。

―― 講談社ノベルスで刊行されているような本格推理小説をアニメ化するのは難しいイメージがありますが。

あまり(小説の)ジャンルは考えなかったですね。単純に「アニメにしたら面白い」と思いましたから。当時言われていた、〝アニメやコミックのキャラクター的要素とミステリーの融合〟というような部分もアニメに向いているのではないかと思いました。竹さんのイラストの表紙で、中身はミステリーなものを描くというのが、バランスが良かったと思うんですよね。ちょっと変わったアニメにはなるとは思いましたけど。あとはキャラクターの台詞が雑談のようで単なる雑談ではなかったり、ボキャブラリーが豊富だったりと、とても新鮮でした。

―― ご自身のプロデュース業のヒントに読んでいたんですか?

そうですね。西尾維新さんの作品はライトノベルと言えるのかどうか、という議論もありますが、ああいう表紙の雰囲気などに惹かれて最初は手に取ったのだと思います。

―― 小説原作でアニメを作る場合は、漫画原作よりも労力がかかるのでは。

最初太田さんとお話ししたとき、〈戯言〉シリーズのアニメ化のオファーまではいかなかったんです。「これをアニメ化できたらいいですよね」とお話をするくらいで。適正なスタッフと作らなければ、良いフィルムには仕上がらない。特に西尾さんの初のアニメ 化となれば、簡単にスタートするわけにはいかないと思っていたんです。どのタイトルをどの監督でどういったアニメスタジオで作るのかを考えながら時間が過ぎ、そこで巡り会ったのが新房(昭之)監督と(アニメ制作会社の)シャフト。これで『化物語』をやろうという組み合わせだった。最初に西尾さんの作品に興味を持ったのは2003年ごろで、アニメの『化物語』は09年の作品ですから、結構時間は経ちました。

―― 講談社を口説き落とした、という感じですか?

口説いたということではないんですが(笑)、僕自身も「中途半端な形でアニメ化しても……」と思っていましたので。ちょうどいいタイミングでよい監督とスタッフに巡り会えたのだと思います。

―― プロジェクトを打ち出した際のメンバーは?

太田さんと僕です。立ち上げ時点で『化物語』の後に『刀語』をアニメ化することまでは意識していました。西尾さんは非常に速いスピードで、タイトルごとに違う個性の作品を生みだしている。そういう精神をうまくアニメ化できないかと思いました。その結果、制作は2作品同時に進んでいましたが、それぞれ別のアプローチで、違う面白さのアニメにできたと思います。

―― アニメ化をするにあたりブランディングは意識されたのですか?

西尾さんのブランディングは講談社の範疇ではないでしょうか。僕らは作品と向き合っている感じなので、それぞれ魅力を引き出して良い映像にしようと。
『化物語』は西尾さんが「100%趣味で書いた」と言っている通り、キャラクターが非常に立っていて、会話の面白さが大きい。そこに絶妙な感じでストーリーがからんできているのも魅力。アニメでいう半パート(CM前後、各10分程度のアニメ本編)に2 人しか登場せず、ずっと公園で話している特殊なシチュエーションが続く〝会話劇〟もある。それをこなせるのは、『さよなら絶望先生』や『ひだまりスケッチ』を手掛けた新房監督以外にはいないと思っていました。

―― 『刀語』については?

小説が〝大河ノベル〟というコンセプトで作られていました。前半は会話のウエートが高かったんですが、後半になるとストーリーがうねりを増してきた。その面白さは非常に良いフィルムを作るWHITE FOXというスタジオで実現できました。月に1話1時間番組として〝大河ノベル〟と呼応して〝大河アニメ〟という形で。それぞれ個性に合わせたアニメ化にはなっていたと思います。

―― 『化物語』は特に大ヒットしましたが、手ごたえはいつごろ感じましたか?

あそこまでいくとは正直思っていませんでしたが、放送して回を重ねるごとに盛り上がっていきました。だいぶ期待値を上げて臨んだパッケージの発売日でも、想定した以上にバックオーダー(事前注文)が来た感じだったので。当時の反響はすごかったですね。

作家本人がアニメの一番の視聴者でいてくれた

―― 西尾作品は〝キャラクター設定〟〝台詞回し〟〝言葉遊び〟が特に秀逸という評価が多いですが。

一言で「面白い」としか言えないですよね。西尾さんが〈戯言〉シリーズの1作目『クビキリサイクル』を書いて、あれは〝天才たちが集まる島〟という設定でしたけど、「それぞれが主人公で1本話が書けるような、そんな登場人物にしたい」みたいなこ とをどこかで話していたんです。それは読んでいて非常にわかりました。登場人物全てが面白い。捨てキャラがいない感じがしました。

―― 〝台詞回し〟に関しては?

〝天才的〟としか言いようがないですよね。軽口とか雑談系のライトノベルは結構あると思うのですが、やっぱり雑談なんだけどちょっと意味が違うと言いますか。『化物語』のBlu -rayとDVDの限定では、特典としてキャラクターコメンタリー(副音声)を書いても頂きましたが、あれは真骨頂でした。ご本人と話しても面白いですね。
なんていうか、〝あぁ、この人は確かに西尾維新だな〟と。コメンタリーはシーンに合わせて脚本を書く必要があるので大変な作業で、通常ならば頼みにくい企画なのですが、自ら「やる」と言ってくれたので、喜んでお願いしました。シナリオも書くのが速くて驚きました。

―― 西尾作品のライトノベルとの境界については?

ジャンル分けというのは、個人的にはよく分からないのですが、独特の立ち位置にいると思います。ライトノベルとも言い切れないし、既存の小説とも違う。アニメの制作を進める中では、作家と原作者それぞれの立ち位置を非常によく分かって振る舞われている感じがしました。そういう意味では『化物語』が西尾さんにとって初めてのアニメ化とは思えなかったですね。こんなふうにしてほしいというのは明確にありますし、逆にアニメの現場を信じて自由にやらせてくれるところもある。しかも一番の視聴者でいてくれた。何度も見て楽しんでくれていたみたいですから。

―― 制作冥利に尽きますね。

そうですね。いろいろな意味で素晴らしい原作者でしたね。一緒に仕事をできるのが嬉しいですね。結構収録現場にもまめに来てくれます。

新作でも〝挑戦〟をしている

――11年1月から放送される『偽物語』はどれくらい前から準備されているんですか? 公開できる情報は少ないようですが、注目してほしいところも教えてください。

(準備期間は)1年半くらいでしょうか。オープニングは『化物語』のときは各ヒロインによって変えていったので、その辺もぜひ楽しみにしてもらいたいです。

―― 『傷物語』も映画化されますが。

『傷物語』は『化物語』の前日譚で、ストーリー性が強くシリアスな要素が多い。アクションやバトルもあるので劇場映画には向いていると思います。

―― ファンからは〈物語〉シリーズを全てアニメ化してほしいという要望もあるのでは?

僕も一読者として読んでいますので、最新刊までずっと面白いのでぜひやりたいと思っています。新房監督は映像の演出家としても面白い人で、新しい表現を生みだす人なんですけれど、同時に原作の魅力をちゃんと把握して、それを損ねることなく引き出すこともできる人なんですよね。ともするとアニメとしてのクリエーティビティーが強い人だと、原作とはまた違うもので存在感を出すことに走りがちになるんですが、そこのバランス感覚が非常にうまい。
ほかの作品も〝西尾維新アニメプロジェクト〟としてやっていきたいですね。

―― また期待値があがります。待ちに待ったという感じですか?

作り手的にはあまり気負ってないですけれど。西尾さんが、「『偽物語』は『化物語』のボーナスステージのような感じで書いた作品」と言っていて、新房さんもそこら辺をしっかり分かって作っている。あのキャラクターたちとまた会えるというのが魅力だと思 うので『化物語』を見た人にはぜひ楽しんでもらいたいと思います。

『化物語』は本当に面白いアニメ作品になりましたが『偽物語』ではまた、新しいことも現場のスタッフの間で試してくれているので、新鮮でもあると思います。もちろん『化物語』を見たことがない人にもぜひ触れてみてほしいですね。














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