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「不確かさ」は全て投資リスクとして認知されるという原則

資金調達側、もしくは出資側に付いたことのない人間は、「不確かさ」は全て投資リスクとして認知されるという原則をこれほどまでに理解しないのか、ということをマジマジと感じている次第です。以下、毎日新聞より転載。


カジノ最大3カ所 見直しは7年後 最終調整入り
https://mainichi.jp/articles/20180331/k00/00m/010/109000c

認定区域数を巡っては、2016年の臨時国会で議員立法のIR整備推進法が審議された際、自民党が「最初は2~3カ所からスタートする」と答弁した経緯があり、これに沿った上限設定で決着を図る。  一方、上限の見直し時期は最初の認定から「10年後」とする案が有力だったが、「7年後」を軸に調整する。自民党が数で譲り、公明党が期間で譲って妥協した形だ。


「全国の誘致地域の要請に基づいてカジノ設置数を増やしたい自民党 vs 国民の反発を考えて少数に抑えたい公明党」この構図の中で「落としどころ」として見出されたのが、当初の設置数で自民党が譲り(当初2,3か所)、その後の追加設置の見直し期間で公明党が譲る(最初の認定から7年後)という政治決着であったのでありましょう。しかし、結果としてこの「落としどころ」は投資をする民間側から見ると最低最悪の決断であります。

本件と併せて、以前からエントリで述べている官僚サイドが押し付けたい「カジノ入場にマイナンバーカードの保有必須化」を愚策として私が批判をしているのは、すべて「『不確かさ』は全て投資リスクとして認知される」という民間投資側の原則に基づくものです。

例えば発行されるカジノライセンス数に関して、マカオ、シンガポールと近年、統合型リゾートの開発の進む東アジアの国や地域では、民間の投資リスクを最小化する為にライセンスの追加発行そのものに政府自身が「縛り」を設けることで、民間に一定の投資回収の為の期間を保証するという制度を取っています。具体的にはマカオは最初のライセンス発行から20年、シンガポールでは10年、新たなライセンス発行は行わないという政治的な「お約束」を行い、これが有るからこそ民間は思い切った投資にむけた意思決定が可能であったわけです。

一方今回、自公間で政治的決着が為されようとしている「妥協案」の元では、最初の2,3箇所の認定区域に設備投資を行った事業者は、建設期間まで念頭において考えるとおそらく施設開業3年程度で競合施設の追加設置論議が始まり、下手をすると未だ投資回収が終わらない状況の中で競合施設が国内に誕生することになります。しかも、それが幾つになるのか、どこに出来るのかなど一切不明なままでありますから、これら「不確かさ」は全て投資上のリスクとなって彼らに跳ね返ってくることになるわけです。

このような環境の中では当然ながら大きな投資は引き出せませんし、下手をすると後発の追加ライセンスに乗った方がリスクが少ないと考え、そちらに回る決断をする業者も出て来るでしょう。近々にライセンスの追加があるとすれば「後出しジャンケン」をした方が、圧倒的に投資リスクが少ないですから当然の民間側の判断となります。

同様に私が批判をし続けている「カジノ入場へのマイナンバーカード保持の義務化」でありますが、これをどうしても押し付けたい官僚側は「今後の普及策によって開業時にはマイナンバーカードが十分普及しているのではないか?」などと寝言を言っていますが、各企業が資金調達計画を立てるのは実際の開業よりも5年も、6年も前のことであります。

マイナンバーカードの普及促進というのは全てが行政責任に基づいて行われる施策であり、民間側には一切の責任及ばないのは勿論のこと、実際の開業時の5年も6年も前となる資金調達時に開業時の普及率を「予測」することすら不可能なものです。ましてや日本では13年間に亘って延々と普及促進を行って、保有率がわずか5.5%に終わった「住基カード」という先例がありますから、行政のいう「開業までには十分普及する」などという言を信じる投資家はいません。この様な「不確かさ」は全てが民間側には投資リスクとして認知されてしまうワケで、全てがその後の投資決断に跳ね返ってくるワケです。

ということで現在、日本のカジノ統制は小出しにされてくる様々な制度要件が全て民間投資を減退させる方向で進んでいる状況。政治に向かって申し上げたいのはカジノ設置数を「当初2~3箇所、7年後に見直し」とするのなら、じゃぁその7年後には最大どの程度まで設置数を増やすことを検討するのか、せめて追加ライセンスの上限を定めること。一方、どうしてもマイナンバーカードの利用をさせたい行政側に申し上げたいのは、その保持をカジノ入場の要件とするのならば開業までに何パーセントの普及率を実現するのか、せめて民間側が目安とできる目標値を「行政側が」提示すること。

モノゴトを「どどめ色」で決着を付けたがる政治と、施策提案をしても数字で達成責任を求められるのを嫌がる行政。どちらも日本の統治機構の特徴でありますが、貴方達が様々な要件を曖昧にすればするほど、その全てが民間側には「投資リスク」として認知され、その後の投資判断に跳ね返ってくることを認知して頂きたいと思うところ。民間投資を原則として導入が検討されている統合型リゾート政策において、その「曖昧さ」は致命傷になりますよ、と私の立場からは申し上げておきたいと思います。

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