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世界糖尿病デーに知る、糖尿病のいま - 大杉満×近藤克則×荻上チキ

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かつて「贅沢病」と言われた糖尿病。今、貧困層の患者が増え、世界的な問題になっている。「自己責任」では片づけられない糖尿病の複雑な要因。社会的な対策の必要を、専門家が訴えます。2017年11月14日放送TBSラジオ荻上チキ・Session22「世界糖尿病デーに知る、糖尿病のいま」より抄録。(構成/増田穂)

■ 荻上チキ・Session22とは

TBSラジオほか各局で平日22時〜生放送の番組。様々な形でのリスナーの皆さんとコラボレーションしながら、ポジティブな提案につなげる「ポジ出し」の精神を大事に、テーマやニュースに合わせて「探究モード」、「バトルモード」、「わいわいモード」などなど柔軟に形式を変化させながら、番組を作って行きます。あなたもぜひこのセッションに参加してください。番組ホームページはこちら →https://www.tbsradio.jp/ss954/

誰でもなりうる糖尿病

荻上 今夜のゲストを紹介します。国立国際医療研究センター病院、糖尿病情報センター長の大杉満さんです。よろしくお願いいたします。

大杉 よろしくお願いします。

荻上 大杉さんは糖尿病について、どういった活動をされているのですか。

大杉 国立国際医療研究センターは国の糖尿病など代謝疾患対策の中核として、糖尿病並びに関連する疾患の研究と啓発を進めながら、新たな治療法の開発をしています。具体的にはこうしたラジオでの啓発活動、基礎研究から臨床研究、国の政策にも関係する研究をおこなっております。

荻上 本日11月14に日は糖尿病の啓発デーとのことですが、この日はどういった位置づけになっているのでしょうか。

大杉 11月14に日はインスリン発見者のひとりであるバンティング博士の誕生日です。この 日を糖尿病の啓発デーとし、全世界で糖尿病についてよく知るための日として位置づけています。糖尿病は、感染症でない病気として初めて国連に重要な問題と認定された病気です。このままでは、世界中で6億近い人々が糖尿病になると予測されています。啓発を進め、病気を防ぐための活動として、10年以上前に制定されました。

荻上 世界中で糖尿病が問題になっているわけですね。

大杉 はい。文字通り世界的な問題です。よく糖尿病は裕福な国の病と思われがちですが、実は発展途上国など、貧困にあえいでいる国こそ重要な課題になっています。

荻上 そもそも糖尿病、どのような病気なのでしょうか。

大杉 人間の身体の中は、ブドウ糖が体中をめぐっています。これは人間にとって欠かすことのできない栄養素です。糖尿病になると、ブドウ糖もしくは血糖値と言われるものが必要以上に上昇し、それが慢性化します。初期の状態ではほとんど症状がなく、気づかずに放置されてしまうことが多いのですが、その間にさまざまな合併症を起こしてしまうのが糖尿病の恐さです。

大杉氏
大杉氏

荻上 症状の出方はさまざまなのですか?

大杉 ええ。最初期のころは、ほとんど症状はありません。糖尿病の症状としてよく言われるような「のどが渇く」「体重が落ちる」「トイレが近くなる」といった症状は、平均すると6~10年状況を放置して、かなり血糖値が高くなった方々から出てきます。つまり、身体への障害として、何らかの症状が出ている場合、すでに病状は進行していることが多いのです。

荻上 日本での患者数はどの程度なのですか。

大杉 今年の9月に厚生労働省などからあった発表では1000万人という報告になっています。

荻上 確率として誰がなってもおかしくない病気なのですね。患者数は増加しているのでしょうか。

大杉 以前ほどではありませんが、今でもゆるやかに増加しています。

荻上 糖尿病になりやすい人というのはいるのでしょうか。

大杉 性別では、女性より男性の方がなりやすいです。さらに、これは日本で初めて確認されている状況なのですが、65歳、とくに75歳以上の年齢の高い方は、かなりの確率で血糖値が高い方が多いです。年を取ることで筋肉量が落ち、ブドウ糖を上手く消費できないことがひとつの理由と考えられます。

さらに、一般に誤解されがちですが、糖尿病は社会的な弱者、経済的に豊かではない方々にも多い病気です。高齢者の中にも、困窮していて健康管理に費やす時間などがとれず、糖尿病になられる方が増えていると推測されます。

早期発見が難しい

荻上 糖尿病の初期症状についてリスナーから質問が来ています。

「最近夫がやたら喉が渇くといって、ペットボトルをがぶ飲みしていて、糖尿病の初期症状ではないかと心配してます。糖尿病になると喉が渇くとよく聞きますが、こうした症状はなぜ起こるのでしょうか。」

大杉 血糖値が高くなると、身体の反応として処理できない分の糖を抱えることになります。その処理方法の一つとして、身体は尿の中に余計な糖分を出します。すると、糖分だけでなく水分も一緒に排出し、おしっこの量が増えます。そのために糖尿病の古典的な症状の一つとして、トイレが近くなる、おしっこが増えるという症状があるんです。ただ、ここまで症状が出ているとなると、血糖値はすでにかなり高くなっているかもしれません。

荻上 お話の中ではペットボトルをがぶ飲みしているとのことでしたが、飲み物に入っている糖分も避ける必要があるのでしょうか。

大杉 糖尿病の患者さんには、糖質の入っていない飲み物、具体的には水やお茶をお勧めしています。しかし、なぜか糖尿病になられてる方は冷たくて甘い飲み物を好まれます。理由ははっきりわかっていませんが、そのほうが喉が乾いた感じが癒されるというのがあるそうです。ただ、血糖値が高い方が糖質をたくさん飲むと、さらに血糖値が高くなり、あまり良い状態ではありません。

荻上 スポーツドリンクなどはいかがですか。

大杉 実はスポーツドリンクも、かなり糖質が含まれています。他のジュース類と同じか、控えめにいっても半分くらいの糖質が入っているので、糖尿病の患者さんにとっては警戒すべきもののひとつだと考えられます。

荻上 こんな質問も来ています。

「私は体重130キログラムの者です。もう10年ほどこの体重なのですが、幸いにして健康診断では糖尿病といわれたことはありません。おそらくは私も糖尿病予備軍で間違いないと思いますが、糖尿病と体重の関係はあるのでしょうか。」

大杉 一般に体重の重い方は、糖尿病のリスクが増えます。ただし、一定の肥満の方が全員糖尿病かというと、そうではありません。これは医学上の謎で、その率も民族ごとに違うのですが、ある程度の肥満があっても、その内せいぜい10%ほどしか糖尿病にはならないと言われています。

荻上 糖尿病には種類があるのですか。

大杉 糖尿病には大きく1型と2型があります。1型は少数ですが、何らかのウィルス性の感染が引き金となっていると考えられています。例えば風邪を引いた時に何かが引き金になって、免疫異常を起こし、体のなかのインスリンを分泌する細胞を障害して血糖値の以上が起こる場合などです。

より一般的な糖尿病は2型です。肥満などを原因、要因として発症します。大きく関係しているのが家族歴。ひとつは遺伝による糖尿病になりやすい素因があり、さらにその人に合わない体重が増えるような食生活をしていると糖尿病になりやすくなります。

その他に、その他の病気が引き金になって糖尿病になる場合、厳密な意味での遺伝性の糖尿病などがあります。糖尿病と一言でくくっても、原因は多岐に渡ります。

荻上 質問が続いています。

「糖尿病であまりに血糖値が高いと手術ができないそうですがその場合、どう対処したらいいのでしょう。そしてそれはどのぐらいの経済負担になるのでしょうか。」

大杉 確かに血糖値がある程度高いと手術にリスクがあります。例えば手術をしたあとに傷が治りにくい、術後に感染を起こしやすいなどです。そのため、外科の先生は手術前に血糖値を下げてほしいとおっしゃいます。どうしても急ぎ手術をしない場合は、入院をして1週間ほど血糖値が下がるのを待ち、手術を行うこともあります。

経済的な負担については、もちろんある程度のお金はかかりますが、日本は入院をしても個人の負担はそこまで大きくありません。内科の入院であれば1日1万円くらいの金額になります。そういったものはすぐに高額医療の上限などに引っかかり頭打ちになりますので、治療自体ではそれほどものすごい負担にはならないと思います。

荻上 糖尿病は症状が出るのは病状が進行してからとのことですが、健康診断などで早期発見することはできるのでしょうか 。

大杉 はい。ただ、初期の段階では症状がないので、深刻に考えず、忙しく過ごしているあいだに病状が深刻化してしまうケースがとても多いです。

荻上 早期発見だけではなくて、通院しやすい社会環境を作っていくことも重要な課題なのですね。

大杉 いかにもです。

荻上 体験者の方からは、四肢の壊死や網膜症などさまざまな合併症を発症しているというお話もありました。

大杉 目の症状は、血糖値の高さを放っておけばほぼ確実に出てきます。足の壊死、もしくは壊疽といわれる症状も、糖尿病の合併症です。壊疽の過程として、真っ先に出るのは神経障害で、徐々に感覚がなくなり、多少のケガがあっても自分では気づかなくなります。さらに、治癒の力も落ちるので、少し赤く腫れている程度の傷が治らず、どんどん広がっていくことなどもあります。

荻上 いろいろと合併症を併発しだすと、精神衛生上もよくないと思います。そうした精神的な面が影響してくることもあるのでしょうか。

大杉 糖尿病の場合は双方向の関係があります。糖尿病があって、例えば治療の負担がある。さらに合併症が進んでしまい、それを苦に感じてうつになる方というのは健康な方よりも増えます。一方で、うつを患っている方は活力が湧かずどうしても糖尿病の治療からも距離を置きがちです。結果、症状が悪くなる、ということも起こっています。悪循環が起こってしまいますね。

荻上 糖尿病は完治する病気なのでしょうか。

大杉 一定期間の治療後、まったく病気のことを忘れ去ることができるという意味での完治は残念ながら今はできません。糖尿病の影響が出ないように、病状をコントロールするという方法になります。今の医療では付き合い続けるのが最前の方法です。

荻上 それは毎日服薬したり、頻繁に通院したりということになるのでしょうか。

大杉 血糖値が高かったり、1型の糖尿病であると、生きていくためにはインスリン注射が必要になります。こうした方は通院回数も頻繁になり、治療も複雑になります。

荻上 さらに質問が来ています。

「通院の際、アルコール依存の患者さんの中に糖尿病を併発している方を多く見かけました。アルコールと糖尿病の関係が知りたいです」

大杉 これにはさまざまな議論があります。一説では、アルコールを摂取しすぎると、肝臓と膵臓に及ぼしまします。膵臓はインスリンという血糖値を下げてくれるホルモンを出している臓器です。そこがダメージを受けることでインスリンが出にくくなる。結果糖尿病になりやすくなる、ということが考えられます。同じく肝臓も血糖値をコントロールする上で非常に重要な役割を果たしているので、アルコールによる影響で調節ができなくなり、糖尿病になりやすくなるなるようです。

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