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アングル:歪んだ米国の対中赤字、犯人はiPhoneか

Adam Jourdan

[上海 21日 ロイター] - トランプ米大統領は、よく自身の「iPhone(アイフォーン)」を使って、中国に対して3750億ドル(約39兆円)に上る対米貿易黒字に対処するようツイートで圧力をかけている。

しかし米アップル<AAPL.O>のアイフォーンをよく調べてみると、その数字がいかに歪(ゆが)められているかが分かる。

貿易戦争の引き金となり得るこの大きな貿易不均衡は、中国からの最大輸入品である電気・IT製品が主な要因だ。

だが、その貿易不均衡の大部分をもたらしているのが、実は「米国製」とされる製品の輸入であることを、アイフォーンは示している。そうした製品の多くは、部品に世界的なサプライヤーを使い、中国で組み立て、世界中に出荷している。

最新のアイフォーンXを見てみよう。

金融データ会社IHSマークイットの試算によると、部品コストは計370.25ドル。そのうち、110ドルは、韓国サムスン電子<005930.KS>製のディスプレー費用に充てられている。また、東芝<6502.T>と韓国SKハイニックス<000660.KS>のメモリーチップ代として計44.45ドルが計上されている。

台湾や欧米のサプライヤーからも調達している。一方、鴻海精密工業の中国製造子会社フォックスコンのような委託製造業者による組み立てコストは、製造コスト全体のわずか3─6%にすぎないとみられる。

だが現在の貿易統計は、中国の輸出額として製造コストの大半を計上しており、そのため世界貿易機関(WTO)のような世界的機関は付加価値ベースなど別の算出方法を検討している。

アイフォーンの輸出データだけを見ても、その影響は多大なものになりかねない。

調査会社カウンターポイントとIHSマークイットのデータによると、アップルは昨年、米国向けにアイフォーン6100万台を出荷している。また、アイフォーン7と同7プラスをそれぞれ1台製造するのにかかる費用は平均258ドルだった。

ざっと計算すると、アイフォーン7シリーズは昨年、米国の対中貿易赤字に157億ドルを加算したことになる。それは対中貿易赤字全体の約4.4%を占める。また、中国から米国に輸入される携帯電話や日用品総額700億ドルの約22%に相当する。

「最終的な組み立てが中国で行われるアイフォーンの場合、(中国によってもたらされる)価値の大半は部品そのものではなく労働力だ」と、米シンクタンク「情報技術・イノベーション財団(ITIF)」の経済アナリスト、ジョン・ウー氏は指摘する。

また、オックスフォード・エコノミクスのアジア経済担当責任者ルイス・クイジス氏は、米国企業が世界的なサプライチェーンを使って中国で製造することは、その他の経済も貿易戦争に巻き込まれることを意味すると強調する。

「まさにそれこそ、米中貿易摩擦が、とりわけ他のアジア経済に『コラテラルダメージ』を与える重大な理由だ」とクイジス氏は説明。付加価値ベースで見た場合、米国の対中貿易赤字は昨年、2390億ドルにすぎず、米国が主張する数字よりも36%減少すると付け加えた。

対中貿易赤字に向けたトランプ大統領の懸念に対し、アップルは一部のサプライヤーを米国へ移転させると約束。同社は1月、米国で550億ドルの設備投資を今年行う計画だと発表した。

<設計はカリフォルニア>

調査会社ストラテジー・アナリティクスによると、アップルは過去10年間で、米国向けに3億7300万台のアイフォーンを出荷。その製造業付加価値は1010億ドルに相当する。

米貿易赤字に対するアイフォーンの貢献度は、小売価格が上昇し出荷が増加するにつれ、高まっていったことはほぼ確実だ。

だが、製造業付加価値には、販売業者のマージンやアップルが米カリフォルニア州クパチーノの本社で行う設計やデザインによってもたらされる知的財産の価値は含まれない。

専門家によると、卸売価格800ドル、小売価格が1200ドルのアイフォーンXは、製造コストが約400ドルだという。

アップルの音声アシスタント機能「Siri(シリ)」は、アイフォーンが中国で組み立てられてはいるものの、その価値がまさにどこにあるのかという課題を示している。シリに出身はどこかと尋ねると、「箱に書かれているように、私はカリフォルニア州のアップルで設計された」と答える。

密接に結びついている製造業のエコシステムは、貿易戦争があらゆる側にとって痛手となるという警鐘を鳴らしている。

いくつかの最大手企業を代表する45の米業界団体は18日、米国経済と消費者にとって「とりわけ有害」だとして、中国に対し関税を課さないようトランプ大統領に求めた。

ウォルマート<WMT.N>やナイキ<NKE.N>といった小売り業者や靴メーカーも19日、消費者価格の上昇を招きかねないとして警鐘を鳴らしている。

ITIFによると、中国のハイテク製品に10%の関税が課されれば、向こう10年間で米国生産の伸びは減速し、1630億ドル減少するとみられる。また、25%の関税なら、3320億ドルの生産減少が見込まれるという。

米中の双方が抑制されると前出のクイジス氏は指摘。全面的な貿易戦争は「世界的に大きな経済的ダメージをもたらす」と付け加えた。

(翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)

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