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トランプとマーケットのレッドゾーン

「米国では政治が金融をリードしているのでFOMCは退屈でしかない」、というような主旨をここ何度かの記事で述べていたが、トランプの「解任ドミノ」は行きつくところ、レッドゾーンまで近づいている。レッドゾーンとはマティスとロシア疑惑を担当する、モラー特別検査官の更迭になる。

周知のとおりトランプは22日、マクマスター(補佐官)を解任した。それ以前にはNECのコーン、国務長官のティラーソンが解任されたが、彼らの退任は以前から対北に対する外交的意見の相違あり、解任は唐突であったものの想定内であった。

これらの解任ドミノがマーケットに波及し、長期金利が抑制されるのは自分の中では想定内であった。さらに状況を悪化させているのは、(何度かお伝えしてきたが)「反トランプ」がFOMCメンバーの中に複数存在している事であり、それによって一層マーケットの事態が悪化している事になる。

歴史的な話まで遡及すれば話は長くなるが、グリーンスパンの04年からの連続利上げは米国のインフレ率が2%どころか3%を超えたときであって、現況とは全く状況が異なる。繰り返しになるが、現在の米インフレ率は1.7%にも届かないマイルドなもので、ここで連続利上げに対し強い姿勢を見せるFOMCメンバーは地区連銀を牛耳る民間銀行からの突き上げを受けている者、そしてトランプに対し政治的私怨を抱いている者で占められている。

政治・金融どちらもマーケットの足を引っ張る状況が継続中

不安定な相場だが、簡素にいえば ①政治が悪い意味でリードし経済好転を抑制、更に悪い事に ②金融当局が足を引っ張っている、といった状況になっている。

(利上げ)年3度か4度、という議論は政治含めた大局からマーケットを分析できないごく近視眼的な狭い見識だといっても過言ではない。現状、FOMCを軸にマーケットを語るのは野暮だといえる。少なくとも、自分の目にはそう映るし、実際にそうだったんじゃないですか?直近の記事は3月会合を「退屈なもの」と実施前から語っており(3月FOMC前夜)、繰り返しになるがポジティブサプライズは見いだせない。

配当狙いの買いにもリスク伴い、これに期待する事は陳腐でもある。さらには米国の鉄鋼・アルミニウム輸入制限の除外対象に日本は含まれず、新たな関税が適用されるが、米国のエルサレム首都認定の是非が議論された国連決議で、日本が撤回決議に賛成票を投じた時から、この事態は想定内であった。トランプは「見方を変える」と言明していたからだ。

利害や私怨に包まれたFOMCによる「前掛かりの連続利上げ」に、トランプのドミノ解任によって依然としてバリュエーションの高いドルは反発力を見出せないばかりか株価にも影響が及んでいる。 

ここまでは現状だが、もっと懸念されているのは(冒頭で述べたように)マティスとモラー特別検査官(セッションズ含)の解任が差し迫っている事になる。つまるところリスクを抱えたまま、という状況がマーケットのボラを大きくし、先行き不安を大きくしている事になる。

トランプとマーケットのレッドゾーン

当ブログでは、昨年3月20日より「解任騒動とドル不安」に対し、強く懸念を抱いてきた。あののち、ずっとドルは下落している。以下、しつこいようだがリンクから抜粋。

FBI本格介入でドル下落の兆し 3/21/2017

セッションズが辞任に追い込まれた時のマイナスインパクトは、ちょっとしたマクロ統計のプラスインパクトより大きい。横転はしないが、ちょっとしたつまづきが膝をつく事になるかもしれない。少なくとも自分にはそのように映るし、現在はその入り口に立たされている。仮にそうなった場合、債券相場は長期だけでなく中短期のゾーンでも利回りが下落し、ドル円相場も現レンジのボックスが一段下に移動する。(部分抜粋)

結局その後、トランプは世間の批判を承知の上で、昨年3月に証言した前FBI長官コミーを解任するに至った。以下、昨年記事から部分抜粋。

FBI長官罷免について ‐テールリスクを比較したトランプ‐ 5/12/2017

トランプは①コミー長官を解任する事によるテールリスクと、②在任させる事のそれ(テールリスク)を比較し、後者の方がより危険だと判断した事になる。(中略)

たとえばこのままコミー長官の下、捜査が進捗していればセッションズはほぼ間違いなく辞任に追い込まれていただろう。 トランプ(並びにその取り巻き)は批判される事を承知の上で、リスクの大きさを天秤にかけ、小さい方を拾った可能性がある(当然ながら、クリントンがFBIを批判したタイミングに合わせたもの)。

そして時系列的にいえば、昨年6月2日記事。

6月利上げ高まる中、週明けFBI記事について 6/2/2017

特別検察官がまるで万能の権限を有しているように報じられているが、当然ながら罷免権はセッションズにありそこまで大胆な発言ができるか否か、注目されている。 周知のように、権限的にはセッションズがモラーを上回るものの連邦議会に対するモラーのプレゼンスはセッションズを上回っており、そういう意味で注目されている。 ロシアに関するメモの存在は公にされる可能性があるが、しかしそれは、既に織り込み済みかもしれない。(中略)  セッションズがロシアとの関与について関知しないと公言している事から、モラーの報告は司法副長官にいく事になっているが、ちょっと歪な構造だといえる。

以前にもお伝えしたが、セッションズ(司法長官)はロシア疑惑の捜査に関与しないとし、ローゼンスタイン(司法副長官)が担当、彼がモラーをロシア疑惑の指揮に当たる特別検察官に指名した。

結果、ロシア疑惑を追及するモラーを解任できるのは司法副長官のローゼンスタイン、という事になっているがローゼンスタインがモラー解任を拒否した場合、トランプは彼(ローゼンスタイン)を解任し、その後任にモラー解任を要求する事になる。若しくはセッションズを解任し、その後任(新司法長官)にモラー解任を要求する事になる。 セッションズは昨年11月、下院司法委員会での証言で、それまでの答弁を覆し、「トランプ陣営の外交顧問とロシアにつながりがある、という事を、外交顧問から聞いていた」、とそれまでの発言を若干ながら修正したことで、モラー特別検察官の捜査チームから聴取されるハメになった。

現状の体制のままロシア疑惑捜査を打ち切りにしたいトランプだが、状況的には難しく、ローゼンスタイン、若しくはセッションズを更迭する道しか残されていないが上記抜粋部にあるように、連邦議会でのモラーのプレゼンスは大きく、ここまで行き着くとトランプの解任ドミノも自滅的なものとなってしまう。そうなればFRBの利上げ長期予想もシナリオ倒れの総崩れ、となってしまう事だろう。直近の記事からの繰り返しになるが、政治が金融をリードしている現況、FOMCの政策議論は小さなイベントでしかない。

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