記事

フェスはどこに向かうかーー書評『夏フェス革命』

1/2

■フェスをどう語るか

久しぶりにブログ更新。ずいぶん時間があいてしまったけれど、今日はレジーさんの新刊『夏フェス革命 音楽が変わる、社会が変わる』について書こうと思う。

夏フェス革命 ー音楽が変わる、社会が変わるー

昨年12月に刊行されたこの本。前にもツイッターで書いたけれど、読んだ後の最初の印象は「こういうの書こうと思ってた!」だった。

参考文献に『ヒットの崩壊』があり僕の文章が多々引用されているというのもあるけれど、その理由としてはこの本がロック・イン・ジャパン・フェスティバル(以下ロック・イン・ジャパン)を主な題材にしたものだということがすごく大きい。

ロック・イン・ジャパンにまつわる言説って、その動員数や規模や存在感に比べるととても少ないのです。今の日本の「フェス文化」の起点は1997年のフジロックの初開催にあり、そこから00年までの3年間にライジング・サン、サマーソニック、ロック・イン・ジャパンと現在まで続く「4大フェス」が初開催されて広がった、という言説は一般的に広まっている。しかし、本書のように「フェス文化を象徴するロック・イン・ジャパン」という論を書籍ベースで展開するものはほとんどない。

その理由は端的にあって、それはおそらく音楽にまつわる書き手の多くが「行ってない/取材してない」ということもその一因なのではないかと思う。本書で引用されている『フェスティバル・ライフ―僕がみた日本の野外フェス10年のすべて』で著者の「南兵衛@鈴木幸一」さんが書いている一節がとても象徴的。

ロック・イン・ジャパン
2000年8月12日13日茨城県ひたちなか市国営ひたち海浜公園で初開催。その名が二重に示すように、雑誌「ロッキング・オン・ジャパン」を編集発行する株式会社ロッキング・オンの事業として、さらに日本の国内アーティストのみによるラインナップで開催を重ねる。すいません、著者は全く未見です。

( 『フェスティバル・ライフ―僕がみた日本の野外フェス10年のすべて』より引用)

フェスティバル・ライフ―僕がみた日本の野外フェス10年のすべて (マーブルブックス)

フェスティバル・ライフ―僕がみた日本の野外フェス10年のすべて (マーブルブックス)

「すいません、著者は全く未見です」って書いちゃうんだ!という驚きは正直あるけど、それはさておき、この一節はとても象徴的な意味を持っていると僕は思う。そのフレーズは「フェスは体験者の言説として語られる(べき)ものだ」という無意識の前提を含有している。

そして、フジロックに毎年行くようなタイプの書き手は、小規模な野外フェスやキャンプやレイヴに足を運ぶことはあれ、ロック・イン・ジャパンに足を運ぶことは少ない。たとえばさまざまなフェスのオーガナイザーへの取材をまとめた『野外フェスのつくり方』という本には「プライベートな野外パーティから大規模野外フェスまでを網羅!」というキャッチフレーズがあるけれど、そこではロック・イン・ジャパンのことはスルーされている。

(フジロックを主催するスマッシュやサマーソニックを主催するクリエイティブマンと違って、メディア企業であるロッキング・オンとその社長の渋谷陽一氏が「オーガナイザーとしてのスタンスやフェスの設計を語る取材」をほぼ受けていないというのもあると思う)

野外フェスのつくり方

野外フェスのつくり方

  • 作者: 岡本俊浩,山口浩司,庄野祐輔,taxim,MASSAGE編集部
  • 出版社/メーカー: フィルムアート社
  • 発売日: 2010/07/23
  • メディア: 単行本
  • 購入: 3人 クリック: 49回
  • この商品を含むブログを見る

 
また、『夏フェス革命』でもたびたび引用されている『ロックフェスの社会学』という本は書き手の目線で書ききるというよりフェス参加者への聞き取りからもとに論が組み立てられていて、そこからとても興味深いロジックが展開していく名著だと思うのだけれど、そこで取り扱われているフェスもフジロックが中心になっている。

ロックフェスの社会学:個人化社会における祝祭をめぐって (叢書 現代社会のフロンティア)

ロックフェスの社会学:個人化社会における祝祭をめぐって (叢書 現代社会のフロンティア)

 ただ、ロック・イン・ジャパンは、フジロックとも、サマソニとも、ライジングサンとも、その他の数々の邦楽系ロックフェスともちょっと違う独自の力学で動いているフェスだと思うのです。そして、そこに毎年集まるお客さんたちからは、他の場所にはない独自の文化圏が立ち上がっている。僕は「ロッキン文化圏」という言葉を使って前にこのブログに書きました。

shiba710.hateblo.jp

『夏フェス革命』のレジーさんはその「文化圏」の形成とその変容をつぶさに見てきた書き手で、それは彼が2012年からブログに書いてきた「ロックインジャパンについての雑記」にも表れている。

そもそも音楽に大して関心のない人たちが紛れ込んでるんじゃないかと思います。これは00年当初とは決定的に違う。

 (レジーのブログ「ロックインジャパンについての雑記1 -RIJF今昔物語」より引用)

blog.livedoor.jp

その体験をベースに、「メーカーやコンサルティングファームで事業戦略や新規事業・新商品開発、マーケティング全般に関わる仕事に従事している」という著者が、ある種フラットな視線でフェスを語ったのがこの一冊。

ステージの上のアーティストが主役だった時代から参加者が主役になった10数年の(ロッキン文化圏を中心にした)フェス文化の変化を、「協奏」(共創)というビジネス的なキーワードで語る一冊になっている。

あわせて読みたい

「音楽フェス」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    パチンコ広げた在日韓国人の苦難

    宇佐美典也

  2. 2

    新庄氏 20億盗られまだ騙される

    BLOGOS編集部

  3. 3

    野党に応援される石破氏の不思議

    やまもといちろう

  4. 4

    北方領土は2島返還で解決すべき

    古谷経衡

  5. 5

    ゴルフだめ? 安倍首相発言に呆れ

    キャリコネニュース

  6. 6

    山本KIDさん 6月には家族と笑み

    女性自身

  7. 7

    隠れ反安倍が鍵を握る自民総裁選

    文春オンライン

  8. 8

    杉田氏かばう記事に炎上必至の声

    キャリコネニュース

  9. 9

    ZOZO前澤氏の英語スピーチは満点

    広瀬隆雄

  10. 10

    樹木希林さん 人と比べてはダメ

    不登校新聞

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。