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森友文書問題は心理学上の問題に過ぎない理由

2015年、16年に財務省近畿財務局が作成した決裁文書と17年2月の土地払い下げ問題発覚後に財務省が国会議員らに提出した決裁文書に齟齬があったにもかかわらず、この書き換えられた文書をもとに国会審議が行われてきたのは、議院内閣制の根幹を揺るがす大事件だ!、という展開で、大騒ぎな昨今ではありますが。

これって、単に財務職員の心理学上の問題じゃないの?

まずもって、これは現状の法制上、刑罰の対象の類になるような案件ではない。朝日が認めるように、現行の公文書管理法では「意思決定の過程・事務を合理的に跡づけ、検証することができるよう公文書の作成を行政機関に義務付ける」という規定はあるものの、これはいわば努力義務であって、罰則規定はない。

また、「特例的な内容」や「本件の特殊性」などの文言の削除や複数の政治家の行動についての記述がなくなっていたりするが、こういった変更が本件の払い下げに関して重大な影響を及ぼしたという証明はできない。

最後に、政権側からの(明示的ではない)圧力が官僚の行動を捻じ曲げた、けしからん、という論点で、現状、これが最も広く取り上げられているように見える。

しかし、この論点には終わりはない。心理学が証明も反証もできないように。
書き換えた官僚(あるいはそれを命じた官僚)が、政権側から圧力を受けましたと証言した場合、その圧力の中身を明示する必要があるうえに、その明示された証拠が圧力として十分機能したと納得させられるものでなければならない。

通常のパワーハラスメントの場合、まず上長や同僚に対してパワハラの中止を求める交渉をする必要がある。(なぜなら彼らには自覚がない場合があるから)
それでもやめない場合は、音声録音や書き取りの記録を作って証拠を積み上げる。パワハラを受けていることを証言できる第三者に陳述書を書いてもらう。
等の手続きを経て(あるいは手続きの最中に)、弁護士に相談するのが筋ではある。

本件の官僚がこういった手続きをできるとは思われない以上、通常のパワハラとして圧力を証明できる可能性は低い。

なので、結局、残るのは暴走するまで官僚を心理的に追い詰めた政権、という筋書きだが、これはいかにも無理筋だ。
例えば、政治主導による人事の掌握が官僚を心理的に追い詰めた、などともっともらしいストーリーをこしらえたとしても、じゃあ、人事の主導権をどの程度どちらかに差配すればどの程度官僚の心理は追い詰められないのか、といった、なんとも得体のしれない泥沼にはまってしまう。

今、攻勢側にたっている野党やマスコミはどういう出口戦略をもっているのかわからないが、簡単にはいかないだろう。大騒ぎした以上、その成果も見合うのもでなければ、結局から騒ぎだったという落胆・失望・虚脱をまき散らすことになり、微妙に敵意の充満した無関心は自分のところに跳ね返ってくることになる。

議院内閣制の根幹を揺るがす大事件の始末が結局のところ、官僚の心理学だったとすれば、これほどむなしいものはない。こんなことのために国会を空転させたのは何だったのか、ということになる。

官僚の心理学以上のものに結果を結ぶためには、この問題が(一時的、突発的ではなく)構造的で、なおかつ改善可能な糸口の見える状態である必要があるが、今のところそういう風には見えない。

筆者は安倍政権の「存在の耐えられない軽さ」に批判的な立場であるが、今回の件は野党やマスコミが軽すぎるように感じる。

とはいえ、安倍総理の軽さも相変わらずで、即座に「行政全体の信頼を揺るがせかねない事態であり、行政の長として責任を痛感している。国民の皆様に深くお詫びしたい」などと反応してしまっては、ABCに「This is a situation in which the whole Government could lose trust. Mr.Abe said.」などと書かれてしまうわけで。

今回の問題が構造的なもの、組織ぐるみであることが証明できない限りは、安易に政府全体あるいは日本の議院内閣制をdisるのは控えたほうが良い、というか妥当、というか、正しいと思う。

いろいろと政治家のコメントが出ているが、最も適切なのが意外に小沢一郎のそれ(の一部)で、最後に引用しとく。
「政界だけでなく、官界も劣化している。こんなことを言われて従うような官僚では困る。」(愛知県連のパーティで。)

「こんなこと」を言われたかどうかわからないが、筋を曲げてつじつまを合わせようとするような官僚はいらない。

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