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乱世のリーダーの選び方

リーダーのあり方については、昨年末にブログの個性派である山本一郎さんが、『リーダーの値打ち』を出版され、よく売れているようです。センセーショナルなサブタイトル「日本でなぜバカだけが出世するのか?」は強力なキャッチフレーズです。いつもの山本一郎さんの独特の文体ではなく、とくに自身はリーダーになることを目指しているわけではないという方にとっても、なにが現代の焦点となっているかを知るヒントがあると思います。しかし、このエントリーは書評ではありませんのでまずはその点をお断りしておきます。

リーダーの値打ち 日本ではなぜバカだけが出世するのか? (アスキー新書)
リーダーの値打ち 日本ではなぜバカだけが出世するのか? (アスキー新書)


それはさておき、政治の世界で、リーダーになるまえはそれなりに存在感があった方でも、リーダーになったとたんにガッカリするということが続いています。また東電、大王製紙やオリンパス問題でも、大企業といえども、エリートとして育ち、現場のリーダー時代はたとえ活躍された過去があったとしても、企業経営者になると、いかにも駄目な経営者が多いかかをまざまざと見せつけられてきました。そういった不祥事や問題を引き起こした企業だけではなく、とくに家電業界など、これまでの経営の失敗をめぐってまた一波乱ありそうです。そんな流れの中で、リーダーの資質やあり方についての関心が高まってくるものと思います。


さて、時代はまさに乱世です。日本に限らず世界が揺らぎ、また複雑化し、変化の嵐に見舞われています。不確実性が高まり、政治であっても、企業経営でも先が見えないなかで、さまざまな高度な意思決定に迫られます。


なにか新しいことにチャレンジするにしてもリスクは過去とは比べものにならないぐらい高くなっています。逆に、またとくに奇抜なことはしない、ひたすら改善によって、生じてきた不具合を修正していくという選択も、それが堅実で安全なようにみえても、時代の変化への適応力を失って、命取りになるというリスクもあります。とくに後者のほうは、そのリクスに気がつかない、あるいは気がついても、リスクを過小評価して、失敗する怖さがあります。

平時なら、リーダーとしての能力がなくとも、組織の自然な動きに身を任せ、神輿に担がれていれば、存在するだけで、リーダーの役割をはたすことができました。戦略は現場が生み出してくれ、また現場のリーダーが、つぎのリーダーとなることを目指して競いあい、リーダーは、そのなかから後継者を選べば、親分子分の情が働き、異を唱える反逆者もでてくることはありません。会長としても長く君臨し、会社を離れても、さまざまな権威のなかの名誉ある立場を守ることができました。東電やオリンパスがまさにそうでした。

しかも、組織のなかでも、幸運なことに安定した立場を得た人たちは、その立場から得られる利益や、場合によってはその立場そのものを危うくしかねない変化に対しては敏感です。大きな変化が起ることを嫌い、今のしくみを改善していけば、自ずと将来は開ける、製品やサービスもより売れるようになるという成長神話から抜けだせません。そして、組織のなかの抵抗勢力となっていきます。そういう人材がリーダーとして生き残れる企業はこれからが大変です。

組織改革のためのプロジェクトの仕事もいくつか経験がありますが、普段は、とくに目立った能力もなく、仕事にもあまり貢献していない人であっても、人を潰す、変化を潰すことにかけては異常な能力を発揮する人も、大きな組織では、かならずいるものです。そしてそれなりの役職についていらっしゃるので驚かされます。

そういったことを繰り返すうちに、緩やかに、また静かに、組織は全体として沈んでいくという構図は日本の社会のなよく見られる光景です。

乱世になると、リスクに向きあう能力が求められていきます。政治にしても、企業経営にしても、どのように変化によって生じてくるリスクに対処するのかの意思決定の能力や質が問われてきます。


リーダーシップのあり方は、そのリーダーのパーソナリティによっても異なってくるものだ思います。実際、優れた経営者の方にお目にかかった機会、またその下で外部ブレーンとして働いた機会に恵まれたほうだと思いますが、ほんとうに人によって、さまざまなタイプのリーダーシップを取りかたがあることを体感してきました。

しかし、どのようなタイプのリーダーであっても、優れたリーダーは、理念やビジョンを自ら考え、また生み出し、語れる人たちだということは共通しているように思います。たとえ、誰かに知恵は借りたとしても、最後は人に任せず、自ら理念やビジョンを考えだすリーダーの人たちの言葉には力があります。人を惹きつけます。また人が動きます。


重要なことは、組織が、どのような使命を果たすために、どのような課題にチャレンジしていくのかを示せるだけでなく、組織の人々に、なにが正しいかを示し、またそれぞれの人たちが、なににコミットすればいいのかを示せる能力だと思います。

成長率や、売上規模の目標を示してビジョンだといわれても、それは成功した結果そうなるだけであり、これだけ変化が激しく、その影響が大きい時代にあっては、絵に描いた餅でしかないビジョンが達成できる保証などどこにもありません。


さらに、リーダーに求められるのは、組織をどう改善するかだけではなく、イノベーションを引き出す能力だと思います。現在の強みがそのまま通じる時代ではありません。つねに新しい強みを創造しようとするチャレンジ、新しいしくみを生み出すためのチャレンジのエネルギーをつくりだせる人でしょう。自らが生みだせなくとも、優れたリーダーは、イノベーションの芽を育てることが上手です。新しい芽は、改善の惰性で動きがちな組織のなかでは、異端として排除されがちで、それをうまく守り育てることに長けているリーダーがいらっしゃいます。

実際企業名はだせませんが、本業では厳しく、思い切ったリストラを断行し、よく考えれば理にかなっていても、一見は誰もが暴走だと考える事業に、人材と資金を投入し、また企業買収によって、結果として事業構造を大きく変えた経営者の方もいらっしゃいます。日本の企業で中興の祖といわれるタイプの経営者によく見られます。

もうひとつのタイプは、自ら新しい構造やしくみを先頭に立って、生み出し、組織を引っ張っていくリーダーもいます。例えば、古い歴史を見ても、織田信長は鉄砲による戦闘技術と人事評価で新しいしくみを生み出し、豊臣秀吉は、戦に土木技術を持込み、兵糧攻めという作戦を生み出しました。ジョブズは、自らの信念と感性でつぎつぎにイノベーションを持ち込みました。自らが起業し、成功したオーナー型の強い企業のカリスマ経営者は多くがこのタイプだと思います。

タイプは異なっても、いずれのタイプの経営者の方も、組織の惰性に任せていると、組織は現状の延長線上をひた走り、やがて深刻な危機となってくることへの危機感の強さは桁外れに強い人たちです。

自らの強み、自ら持っている資産、技術、人材、販路などが生かせない分野には手をださないことも共通しています。高度成長期なら、なにをやっても成功率は高いのですが、今日は競争のハードルは比較にならないぐらい高くなっているわけですから、選択と集中のメリハリがないと競争には勝ち残れません。国としても同じことだと思います。その点でもリスクに対して敏感なのでしょう。外から見れば、イチかバチかの思い切った選択も、そうしなければもっとリスクが高いと見ているのだと思います。

また、現代の特徴は、これまでにも書いてきたように、経済も社会も多様化し、複雑化してしまったために、なにをやるにしても、あちらを立てばこちらが立たずのトレードオフの関係が増えてきています。山本一郎さんも『リーダーの値打ち』のあとがきで書いていらっしゃいますが、世代間の格差と葛藤、大都市と地方の摩擦、能力のある人、成果をだして人に配分することを優先するのか、あるいはより多くの人の生活の安定を優先するのかなども、どちらのほうがよりよい社会づくりになるのかは、誰にも正解などわからないのです。だからオンかオフかだけの議論には魅力も創造性も感じません。

大切な事は、トレードオフの関係のバランスをどううまく取っていくかにあると思いますし、現実にはそうせざるをえないわけですが、おそらくなぜそのバランスを取るべきか、どうバランスを取ることがよりよい道なのかを語れるリーダーが求められているのだと思います。そのコンセンサスをえるための新しい価値観や切り口を示せなければ、永遠に対立は解消するどころか、広がっていくだけです。納得できる、期待ができる、希望がもてることが人々の活力を引き出し、対立を解消する知恵も生まれてきます。オン・オフのいずれかの立場で議論することはいいことですが、それだけでは解決のための新しい発想はでてきません。

そのバランスを取るためのコンセンサスをつくりだすための強いパワーとなってくるのも、やはりいかに魅力ある理念やビジョンです。ビジョンを語り、実際に古い殻を破って、社会がダイナミックな新陳代謝するしくみをどうつくり出せるのかのかにリーダーの資質がかかっているのだと思います。実現性のない夢や理想だけを語っても虚しいのです。でなければ、あちらを立てはこちらが立たずどころか、親亀こけたら皆こけたとなってしまうことだけは間違いありません。

さて視点を変えて、自分自身のマネジメントとなると、自らがリーダーにならざるをえません。こちらも同じではないかと思います。結局は身の回りでなにが起こっているのかを冷静に分析し、なにがリスクかなのかを察知する能力、さらに自らが最大のハピネスを実現するためには、あれこれの選択のなかで、一貫して追い求めるものはなにかを見つけ出すことに意識を持ち続けていくことだと思います。なにが正解なのかは誰にもわからないし、人によって、また立場によって異なると思います。私たちは永遠の人生の目的を探し求める旅人なのですから。

ただそれを考え、追い求めている人には、さまざまな人生の風景が見えてくるものです。他の人の言葉や考え方にも耳を傾ける能力が高まってきます。それが出来る人は、魅力的です。自ずと考え方にも個性も生まれてきます。
それぞれの人が、自分自身を経営するリーダーとして、理念やビジョンを持つことを意識していれば、おのずとどんな人をリーダーとして選ぶべきかも見えてくるのではないでしょうか。
幸い昨今はボランティア活動などで、自らが自らの意志で動き、また人を動かす経験をした若い世代の人も増えてきてきており、そういった世代から新しいタイプのリーダーが生まれてくることを期待したいものです。

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