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ホルムズ海峡で懸念される米国とイランの偶発的衝突

明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

2012年のエントリは、ホルムズ海峡という場所の説明から始めてみたいと思います。


■ ホルムズ海峡の重要性

より大きな地図で ホルムズ海峡 を表示

ホルムズ海峡はペルシャ湾とオマーン湾を扼する狭い水域です。いわゆる「チョーク・ポイント」と呼ばれる要衝ですね。ホルムズ海峡経由で運ばれる原油は日量約1,700万バレルで、世界消費量の6分の1に相当します。昨年末から、イランがこのホルムズ海峡を封鎖するという脅しを国際社会に仕掛けていますが、もし同海峡が封鎖されるなどということになれば、世界経済に与える影響がどれほど深刻なものかは容易に想像できると思います。

まず、イランが原油の禁輸措置を実施するということになれば、それだけで世界経済が被る影響は甚大です。例えば、イランは日量約220万バレルの原油を輸出するOPEC第2位(世界第4位)の産出国で、日本をはじめ、中国、インド、韓国などアジア経済の中心となる国々もイラン原油の主要輸入国として名を連ねます。イタリア、スペイン、ギリシャなども同様ですが、深刻な債務問題を抱えたこれら欧州諸国への原油輸出が激減するとなると、さらなる経済停滞を招くことは必至となります。

そこで、代替調達先を確保するという要求が生じますが、選択肢は限られます。イランの産出量をまかなうほどの大量の余剰生産能力を有する湾岸産油国を挙げれば、サウジアラビア、クウェート、UAE、イラク、カタールということになるでしょう。しかし、これらのOPEC諸国もその多くがホルムズ海峡を輸送ルートとしていることから、やはりこの海峡を封鎖されることによる影響を回避することはできません。イランが本当にホルムズ海峡を抑えるとなると、そのインパクトは計り知れないのです。

ただ、イランもまたホルムズ海峡に強く依存しています。サウジアラビアなどは紅海経由でも石油を輸出できますが、イランの全輸出品及び日用品など輸入品の多くが同海峡経由で運搬されています。ホルムズ海峡封鎖は、イラン経済を自壊させる両刃の剣なのです



■ 「ホルムズ海峡、封鎖できません!」
現在進行中のホルムズ海峡緊張の直接的なきっかけは、核開発を巡って欧米から経済制裁を受けているイランが、原油輸出に対する制裁が発動された場合はホルムズ海峡を封鎖すると宣言したことです。宣言しただけでなく、イランは昨年12月24日にインド洋で軍事演習を実施し、新型中距離ミサイルの試射をも行いました。

米国の反応は早く、自由通航を侵害することは許容しないというコメントを発し、バーレーンに司令部を置く第5艦隊のジョン・C・ステニスを中核とする空母打撃群(CSG)をホルムズ海峡へ向かわせました。

こうした一連のやり取りを経て現在も緊張状態が続いているわけですが、イランは本気でホルムズ海峡を封鎖し、米軍と戦火を交えるつもりでいるのでしょうか?確かなことは、イランがそれを望んではいない、ということです。まず、上述したとおり、ホルムズ海峡封鎖はイラン経済にとって破滅的影響を免れません。短期ならまだしも、長期的に同海峡を封鎖すれば、イランはそこを封鎖するリソースにすら苦慮することになりかねませんからね。石油市場もイランのこうした事情を見透かしていて、現在のところ相場は落ち着いています。イランが本気で同海峡を封鎖する意思はないと見られているということですね。このため、イランの「ホルムズ海峡封鎖」宣言は、世界経済への脅し文句としても実はあまり効果が期待できなくなっています。

次に軍事面でもイランは海峡を封鎖する能力を十分に持っているわけではありません。イランが保有している船は大半が小型艦で、何日にもわたって海峡を封鎖することはできません。封鎖に用いられる手段としては、地上発射のミサイル攻撃や海上での機雷敷設、キロ級潜水艦による対艦攻撃、小型船を用いた待ち伏せ/自爆攻撃などが含まれます。戦力の非対称性を踏まえた、いわゆる接近阻止戦術が取られることと思われます。民間の石油タンカーへの攻撃なども実施すること自体は可能ですが、頑丈な大型の石油タンカーを撃沈するのは簡単なことではありませんし、まさかそんな無制限潜水艦作戦を行うとはさすがに考えられません。いずれにしても、この程度の海軍力では米国に太刀打ちできないことはイランも重々承知のことでしょう。ですから、イランがホルムズ海峡の封鎖も米軍との衝突も望んでいない、と考えるのが妥当です


■ 懸念される偶発的衝突
合理的に判断すれば、イランのホルムズ海峡封鎖宣言は口だけの「脅し」以上のものではありません。少なくともイランの核兵器開発プログラムが、抑止力となる核兵器を製造できる段階に達するまでは、戦争はイランにとってあまりに代価が大きいものです。しかし、イラン指導部が常に合理的判断を下すとは限りませんし、現場での小競り合いからどんなエスカレーションが発生するかを完璧に予想することはできません。当然、水面下では様々な交渉が行われているでしょうが、誤算や誤解を少しでも排除するための外交を両国ともに閉ざさないことが大切です。

ホルムズ海峡の温度がこれ以上騰がらないことを願うばかりですね。


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