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「目が見えなくても一目ぼれはありますか?」濱田祐太郎のR-1優勝で再注目したいバリバラの破壊力

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BLOGOS編集部

堂々の「障害ネタ」にただただ唸るばかり

「R-1ぐらんぷり2018」は、お笑い史を振り返った時に太字で刻印されるべき大会となった。言わずもがな、視覚障害を持ち、視覚障害をネタにしたが、全エントリー3795人の頂点に立ったからだ。

濱田祐太郎は、昨年末「NHK新人お笑い大賞」の決勝に登場したことで、その名が少しずつ聴こえ始めてはいたが、テレビ地上波のゴールデンタイムで障害ネタを堂々と繰り出し、お笑いのメジャーコンテストを勝ち切ってしまった結果に、ただただ唸るばかりだ。

<2018年3月6日「R-1ぐらんぷり2018」より 濱田祐太郎>
濱田祐太郎「実は僕ですね、生まれつき目がわるくて、ほとんど目見えてないんですよね。

(略)

目が見えてないとけっこう、周りの人から『ウソやろ』と思うようなこといっぱい言われるわけですよ。それ見えてへんおれに言う?みたいなね。

(略)

これ知りあいの女の子だったんですけど、最近ドライブとか行けへんからドライブ行きたいなあ、そういえば濱ちゃんって車運転したことある?ってあるわけないやろ!あったら大問題や思うてね。これ、ボケで言うたにしてもパンチ効いてるな思うて。あのね、そのとき一瞬自分の耳疑いましたからね。えっ、運転!ってね。視覚障害者が自分の耳疑うことなんて中々ないわ!」

キレのいいぼやき、自虐、ブラックジョークの連打だった。このように、障害をネタにした笑い(もしくはエンターテインメント)は芸能史において脈々と存在し、ある時期まではテレビの中にもその位置を得ていた。だが、人権に対する社会意識の変遷と共に次第に表舞台から自粛されるようになっていく。主に1970年代~1980年代がその時期か。

障害者による笑いに一石を投じたNHK「バリバラ」

そして近年、この「触らぬものに」的な潮流に一石を投じているのがNHK‐Eテレの「バリバラ」(2012年~)だ。公式HPにある番組紹介を引く。

<「バリバラ」(NHK‐Eテレ)公式HPより>
2012年にスタートした、障害者のための情報バラエティー「バリバラ」。
笑いの要素を織り交ぜ、これまでタブー視されてきたテーマにも挑んできました。
2016年4月からは、障害のある人に限らず、「生きづらさを抱えるすべてのマイノリティー」の人たちにとっての“バリア“をなくすために、みんなで考えていきます。
みんなちがって、みんないい多様性のある社会を目指して、バリバラは進化します!

「バリバラ」は、障害者の為のバリアフリーな情報バラエティを宣言し、旧来の福祉番組からの脱皮を図り、障害者自身が障害にまつわる諸問題――、例えば性の悩み、トイレ事情など、タブー視されてきたテーマもバラエティのノリでオープンに語る番組として存在感を放っている。

そのバリアフリーな視線は、マラソンと黄色いシャツと武道館で障害者を支援する老舗番組「24時間テレビ 愛は地球を救う」(日本テレビ)にも矛先を向け、障害者や難病を持つ人が何かしらのハードル(登山、水泳など)に挑む姿を「感動」のパッケージのみで提示し続ける姿勢に対し、それは「感動ポルノ」(※障がい者が頑張る姿を見ることによって健常者が良い気分になる利用行為)であると疑義を唱えるなど、旧来の型枠に嵌め込まれた障害者のイメージを問い直している。

そんなバリバラの名物企画に、マイノリティーのお笑い日本一を決める「SHOW-1グランプリ」がある。これはこれでアグレッシブな大会だが、個々のネタは笑いのメジャーコンテストと肩を並べるレベルではない。

が、これは「障害者による笑いを笑っていいのか?・・・いいんです!」というプレゼンテーションであり、この企画を放送すること自体が笑いだったりする。そして見続けていると見慣れてくる、障害者による笑いに対して引いていた一線がじわじわ薄れてくる、という気づきに向かっていく。

これと同じことが、「R-1ぐらんぷり2018」で濱田祐太郎が一回目に登場したときのスタジオ(または視聴者)の空気にもあった。

<2018年3月6日「R-1ぐらんぷり2018」より 濱田祐太郎>
(介助者に連れられ、白杖を持った濱田祐太郎がセンターマイクへ)

濱田祐太郎「はいどーも、濱田祐太郎です、宜しくお願いしまーす」

(スタジオ観客に小さな戸惑いが漂う)

濱田「えー、あ、拍手なしですか?」

(促されて拍手が起こる)

濱田「拍手してくださいよ、お願いしますよ、びっくりしておれ客席見えへんから今お客さんゼロ人かなと思いました。びっくりしましたよ」

(笑い)

感じ方に個人差はあるだろうが、そこにあった戸惑いが、見慣れているかいないかの差だったことに気づいた人も多いのではないだろうか。

そして、濱田祐太郎はR-1を制した。これは濱田個人による突出した存在の成果であり、「バリバラ」な(素人の)笑いとは別の話だ、と、線を引くのはちょっと待ってほしい。「バリバラ」の笑いは安易に侮ることができなかったりする。

「目が見えなくても一目ぼれはありますか?」

笑いとかネタとか、そういう型枠を取り払い、トークがバリアフリーゾーンに入った時の「バリバラ」は侮れないのだ。その例をひとつを挙げるが、昨年夏に放送された「バリバラ」派生の特番「ココがズレてる健常者2~障害者100人がモノ申す~」(NHK)では、おそらく2017年のテレビで最も針が振り切れたと言っていい笑いが炸裂した。

番組は健常者と障害者の理解をより深めあおうという意図で、触れづらい意見を交わしあう討論の場が設けられた。その中に、「障害者から障害者への究極の質問」という、障害者同士が互いに障りあうことを解放したコーナーで、聴覚障害者から視覚障害者に対し「目が見えなくても一目ぼれはありますか?」という、一瞬、時が止まりそうな質問が繰り出された。

この質問を健常者が発すれば、おそらく「不謹慎」だと叩かれるだろう。だが、障害者だからこそ聞ける、言える・・・ひねりながら撃ち込むコークスクリューパンチのようなこの質問は、素朴でバカバカしく、この番組だからこその笑いを喚起した。

(ちなみにこの「目が見えなくても〇〇〇〇〇」というひねりのフレーズは、濱田祐太郎も「(目が)見えへんけど二度見しました」「見えないけど目まいになりました」などを用いている。言うなれば障害をネタにする際のキラーフォーマットでもある)

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