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アップルはなぜアフリカのコバルトを買い占めるのか? EVやスマホに必要なレアメタルのゆくえ - 中村繁夫 (アドバンスト マテリアル ジャパン社長)

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 「Apple、コバルトを採掘会社から直接購入か?」とのネット記事が2018年2月18日にアップされてから筆者(レアメタル専門商社AMJ)に「何のことか教えて頂だい!」と電話で聞いてくる不特定多数のお客さんが増えている。原典は「Apple could be buying cobalt from mining companies directly」で「Feb 21, 2018」 の「Romain Dillet氏」の記事である。

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 この記事を要約すると以下になる。

  1. コバルトは次なる石油だ。自動車メーカーもバッテリー製造会社も、リチウムイオン電池のために採掘会社と複数年契約を競って結んでいる。Bloombergの記事によると、Appleも長期的供給源を確保すべく、このゲームに参入しようとしているのは、バッテリーに使うコバルトが過去18カ月で価格が暴騰し3倍になったために安定確保が必要になったからだ。
  2. 問題は、自動車メーカーがコバルトのサプライヤーに多大な圧力をかけていることだ。BMWとVolkswagenもサプライチェーンを確保すべく複数年契約を結ぼうとしている。おそらく他の自動車メーカーもコバルトの価格に目を光らせている。
  3. 一方、人権保護団体であるAmnesty Internationalが、2016年1月に発行したコバルト鉱石に関する報告書によると、IT企業も自動車メーカーも、コンゴ民主共和国(DRC)の児童労働を防止する努力が十分ではないと指摘している。DRCは世界のコバルト生産量の50~60%を産出しているから問題は深刻である。
  4. そして数カ月前、Amnesty Internationalはレポートを更新し、Appleは他のメーカーより透明性が高いと報告した。現在同社はコバルトの供給源リストを公開している。しかし、採掘会社が基本的人権を守っていることを確かめる道はまだ長い。ただし今回のケースでは、Appleの主な目的は今後の製品で使う十分な量のコバルトを潤沢な資金力を背景に適正価格で買うことだろう。

 という内容であるが、私のようなレアメタル屋としては、何となく違和感のある記事である。

  • アップルが貴重な資源であるコバルトを押さえにかかっている。
  • メジャー自動車メーカーはすでに鉱山からの購入を支配しており、コンゴ民主共和国(DRC)との間で、長期供給契約をしようとしている。
  • 人権保護団体のAmnesty Internationalは、DRCの児童労働を防止するべきだと言っている。

 リチウムイオン電池に使うコバルトの安定供給問題と、自動車メーカーとアップルとコバルト採掘鉱山の競合と、人権問題をごちゃ混ぜにしているからだ。

リチウムイオン電池材料として不可欠なコバルト資源

 さて、コバルトというレアメタルは年間約9万トンの生産があるが、2025年頃までには、世界で約1800万台の電気自動車が生産され、ここで使われるコバルト資源は50万トンになる、という予測が一人歩きしている。

 この需要予測については、次回に回すとして久しぶりに騒ぎ出したレアメタル(今回はコバルト)に焦点を当てて資源問題を深堀りしてみたい。

 これまでもコバルトを巡る資源不足は、何度か問題視されてきたが、ここしばらく需給バランスはとれていた。ところが電気自動車(EV)に使用するリチウムイオン電池の需要が急増してきたため、欧米の投機筋が暗躍し始めた感がある。

 例えばカナダの投資会社であるコバルト27社は、コバルト鉱山の権益を持ちコバルト市況が上昇すれば同社の時価総額が上昇する仕組みを作った。2017年12月にコバルト地金を700トン買い増し2860トン保有している。実需家でもないのに世界需要の数%の在庫を金融資本が支配するのは明らかに投機狙いだが健全な市場形成のためには(日本人的発想では)あまり良くないと考えてしまう。

 スペキュレーション(投機)が悪いとは思わないが、行き過ぎると市場価格の乱高下が生産者の安定供給に支障を起こしやすくなり、結果としてEV市場やスマホ市場に悪影響を与えかねない。

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