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関税戦争

「米国は取引するほとんど全ての国との貿易で数十億ドル単位の損失を被っている」とはCNNにあったトランプ大統領の発言の一部です。今回のアルミ、鉄鋼への関税を通じた貿易戦争の「開戦予告」の真意は何処にあるのでしょうか?

アメリカの貿易赤字が黒字だったのは概ね1970年代初期までです。その後、赤字傾向が加速度的に進み2005年には7500億ドル近い赤字を計上します。現在でも5000億ドル水準の赤字を抱え続けています。この体質にアメリカ労働者の強い反発が何度かありました。特に対日貿易で起きています。繊維、鉄鋼、自動車、更に半導体までその対象となりました。

ではこんな赤字のアメリカがなぜ、今でも「世界一の国家」を標榜し続けることができるのか、といえば基軸通貨ドルを擁することと国の借金である国債をバンバン発行できるチカラがあるからです。その国債もアメリカの格付け会社が太鼓判を押すのですから自画自賛以外の何でもないのですが、諸外国は消費するチカラのあるアメリカとの取引を重視するため喜んでこの国債を購入するのであります。

その微妙なバランスの上に成り立ってきたアメリカという国家の基盤をトランプ大統領は「構造改革」しようとしているのでしょうか。「貿易赤字は許せない、どうにかしてこの状況を刷新するのだ」という意気込みかと思います。

ところでアメリカ人がアジア人のように働くイメージはあるでしょうか?一部の統計ではアメリカ人のエリート層の労働時間は一般的な日本人よりはるかに長いと出ているのですが、それは巨額のお金(報酬)というニンジンがぶら下がっているからであります。

そういう方々は別にして一般的アメリカ人が長時間労働にもへこたれず、低賃金でも耐え忍ぶというスタイルはあまり想像しにくいかと思います。事実、アメリカへの移民層が実質的にそのような職務を支えていると考えてよいかと思います。

そう考えるとアメリカが貿易において輸出とまではいかないまでも地産地消できるほどの製造業の競争力回復をするとは一般的には考えにくいものがあります。となれば、今回ぶち上げた関税は選挙対策とみた方がよいのでしょう。

問題はここからのステージであります。すでに欧州や中国が報復の準備をしているようですが、トランプ大統領は世界を敵にそれでもこの関税競争を実行するために署名をするのでしょうか?今までのケースを見ればパリ協定の離脱、TPPの離脱、NAFTAの再交渉など「本当にやった!」と周りが驚くことをごく当たり前のように行っています。とすればこの関税についても昨日今日に始まったトランプ大統領のつぶやきではないので署名する公算は高いのだろうとみています。

では世界への影響です。仮に欧州などが報復を打ち出せば当然、その品目の貿易は低迷する公算はあります。しかし、現時点で品目数は限定されており、その間にこの関税戦争がいかにばかばかしいものか気がつき、撤回するか、トランプ大統領がすでに大統領の席にいないかのどちらかでしょう。つまり、個人的には直接的な影響は限定的にとどまるとみています。言い換えればこのニュースに対するリアクションは過大だと思います。

トランプ大統領一人が過去世界が積み上げてきた自由貿易への努力を踏みにじれるほど世界の経営は柔ではありません。アメリカのエリート層は冷ややかな目で事の成り行きを見守りながらもその影響が回避できる方策を確実に生み出すとみています。トランプの術中にはそう簡単に嵌りたくないでしょう。

では今日はこのぐらいで。

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