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「地方企業にとってAI活用はメリットしかない」――冨山和彦の正解

 AIやIoTが社会を変動させることが分かっても、古い体質の企業では守旧派が権益を握っている。とはいえ、そのままでは会社が潰れる運命は避けられない。企業再生の第一人者であり、産業界全体から見た人工知能に精通する冨山和彦さんに、これからを生き抜く心構えを一問一答式で訊く、全5回シリーズの最終回(#4「AI時代に既得権益層を打ち破るには」より続く)。

既得権益をがっつり握る守旧派とどう闘うのか、冨山和彦さんが教える

◆◆◆


『AI経営で会社は甦る』(冨山和彦 著

Q 個人事業主、地域の商店やサービス業にAI活用のメリットはありますか。

A お金もそんなにかからないし、メリットしかありません。

 個人事業主や地域におけるAI活用というのは、もしかしたら一番面白いテーマかもしれません。地方の商店主や、私が経営しているような東北のバス会社(みちのりホールディングス)とかは、地域にべったり貼り付いてやっているので、もともと基盤はある。そのうえで、既に世の中に存在するテクノロジーにフリーライドできるわけですから、無駄な資本を必要としないわけです。お金もそんなにかからない。メリットしかありませんね。これをどう使うかは、その個人商店主や商店街の才覚次第だと思います。個人事業主の立場で、これぞというイノベーションを起こしてくれることを期待しています。

冨山和彦氏 ©平松市聖/文藝春秋

冨山和彦氏 ©平松市聖/文藝春秋

 いままでの20世紀型のモデルは、企業体として巨大になることを自己目的化していました。一方で、みちのりホールディングスのような地方のバス会社には、帝国主義的な成長意欲は、まったくありません。なぜなら、ローカル型の産業の意義は、そこにはないからです。みちのりホールディングスは東北エリアでのシェアが非常に高いのですが、だからといって東北のバス会社が、東京やアメリカに進出しても、意味はないんです。なぜなら、もともと地域への密着度ですべて決まってしまうビジネスモデルゆえ、東北地方のオペレーションの競争力にはつながらないからです。

©iStock.com

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 医療・介護含め多くの産業領域において、AI革命が起きてくるとすると、同じようなことが起きます。20世紀的な膨張モデルから、21世紀的な質的に成長するモデルへと変わるのです。地域に根づいて、地域のために本当に役に立っていて、地域のお客さまから愛されて、場合によっては地域の外からのお客さまにも愛されて。そのなかで高賃金かつ安定的な雇用が生み出せるようなビジネスモデルを商店街の世界で広げていく。これはかなりおしゃれでかっこいいことだと思うんですよね。われわれはグローバル・プラットフォームを目指します、とかいうよりも、遥かにおしゃれですよね。

グローバル製造業の時代は終わった 

 日本全体を眺めても、すべての雇用のうちの8割はじつはローカル産業なんです。グローバルな会社は雇用をつくらないし、今後ますますつくらないでしょう。トランプ大統領がアメリカに工場をつくると言ってますよね。自動車の工場を持ってくる、あるいは白物家電をつくります、と。けれども実際には、ほとんど雇用をつくれないでしょう。工場はいまやほとんど人間がいないし、今後ますます人間はいなくなります。製品はロボットが造ってくれますから。要するに、グローバル製造業が潤沢な雇用を生み出した時代は、とっくの昔に終わっているのです。

冨山和彦氏 ©平松市聖/文藝春秋

冨山和彦氏 ©平松市聖/文藝春秋

 先進国はどこも似たりよったりの状態です。たとえばドイツ。法人税が安く、為替やユーロの恩恵も受けている。労働市場も流動性がとても高い。けれども製造業は、雇用が萎縮しています。BMW、ボッシュ、フォルクスワーゲン、どこもすごく調子いいじゃん、と見えますが、実際にはドイツ国内ではあんまり雇用を生んでいないのです。

 ですから需要が世界にあるという問題と、雇用がどこで生まれるかという問題は、グローバル化の時代においては一致しません。企業としてどこに成長を求めるかという議論は、グローバル企業にとっては、日本の外、となります。ですから日本という単位で雇用を議論するときには、今の産業構造を前提にして議論しないとダメなわけです。そうすると今後ますますローカルな雇用は、ローカルなサービス型産業になっていきます。となると、やはりこのローカルなタイプの産業の世界で生産性を上げ、賃金を上げ雇用を安定化させる。そこでみな人々がそれぞれに充実した人生を送れるようなビジネスモデルをつくっていくというのは、とっても21世紀的で真にイノベーティブでクリエイティブだと思っています。ぜひぜひそういうモデルをつくっていただけると素晴らしいですね。

・冨山和彦が教える「AI時代の生き方 5つの法則」

#1 起業
http://bunshun.jp/articles/-/6382

#2 金融業
http://bunshun.jp/articles/-/6392

#3 中間管理職
http://bunshun.jp/articles/-/6393

#4 既得権益層
http://bunshun.jp/articles/-/6395

#5 地方と商店街
http://bunshun.jp/articles/-/6399

●講演会のお知らせ
2018年ビジネス書グランプリ グロービス経営大学院特別賞受賞!
『AI経営で会社は甦る』著者 冨山和彦さん講演会「AI経営『勝利のシナリオ』」
4月9日(月)19:00〜(18:30開場) 於文藝春秋西館地下ホール
AI時代、日本の取るべき戦略は? あなたとあなたの会社が生き残るには? Q&Aタイムあり。
お申し込み先 https://bunshunlive23.peatix.com/?lang=ja

*本シリーズは第8回「~hontoで学ぶ~」「経営共創基盤代表取締役CEO冨山和彦 特別講義『AI経営で会社は甦る』」(2017年4月17日)より収録・構成しました。  

(冨山 和彦)

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