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ソニーも自社生産を再開、市場が再拡大する“アナログレコード”



 CDなどのパッケージ市場や配信市場が落ち込む音楽業界の中で、再び売り上げを伸ばしている分野が“アナログレコード”だ。生産金額は2010年の1億7000万円から2017年には19億2000万円に増え、着実に売り上げ・生産数を伸ばしている(日本レコード協会調べ)。



 ここ数年は若者の間でもアナログレコードファンが増えてきているといい、有名アーティストが多数所属する大手レコード会社ソニー・ミュージックエンタテインメントも、レコードの自社生産を再開する。『原宿アベニュー』(AbemaTV)は、そんなレコード業界の動きを調査した。

■「自社生産でレコードの質を上げることができる」



 アナログレコードはCDのようなデータではなく、刻み込まれたミゾに針を走らせることで音が出るもの。ソニーミュージックグループは1989年までレコードを製造していたが、CDの普及をきっかけにレコードの製造を中止していた。しかし今回、29年ぶりに自社でマスター制作からプレス製造まで一貫して行える設備を整えた。

 なぜいまレコードを復活させるのか? ソニーミュージックスタジオ東京を運営するソニー・ミュージックコミュニケーションズの宮田信吾さんは「レコードがフィーチャーされ、売れるようになってきており、アーティストからのリリースの要望も増えてきた。アーティストが表現したい音でレコードを出していくにはなるべく全部自分たちでできる方が全体をコントロールすることができるということで、改めてこのタイミングで生産を始めました」と話す。

レコードのターゲット層は若い世代から上の世代まで。「最近のみなさんの買い方を聞いてみると、大きなジャケットで飾ってもよし、聴いてもよしという感じ。若い人にも聴いてほしいし、昔を懐かしんでではないが『レコードで出たんだ』『また聴いてみようかな』と上の世代にも幅広く聴いてほしい」という。



 若者がレコードを買う理由については「当然CDや配信と違ってアナログなので、アナログレコードの心地よさが今の若い人の方がわかりやすいのかもしれない。オーディオマニアではない若い人にも受けているのでは」と推測した。

 一方、オーディオ評論家の潮晴男氏は「ポスター代わりに飾ることができる魅力もある」と紹介。「ジャケットがちょうど30cmなので、フレームに入れて壁に飾ることもできる。例えば、六本木や銀座のライブハウスでは今でもレコードを飾っている」と話す。世界を見ると、レコードは途切れることなく製造されてきたそうだ。

 ソニーミュージックグループによるアナログレコード自社生産復活第1弾は、3月21日に発売される『EIICHI OHTAKI Song Book III 大瀧詠一作品集 Vol.3 「夢で逢えたら」』と、ビリー・ジョエル『ニューヨーク52番街』の2タイトル。この2タイトルが選ばれた理由について潮氏は「1982年にCDを最初に出した中の2枚がビリー・ジョエルと大滝詠一だった。大ヒットしたのでゲン担ぎなのではないか」と見解を述べる。



 また、若者の間でレコードが再び注目されている理由については「CDや配信は手軽に楽しめるが、レコードはジャケットから出してターンテーブルに乗せて、針を下ろしてと手間がかかる。もう一つは、A面とB面があって、その間にできるちょっとした休憩が良いのではないか」と話した。

■若者「音が温かい」「生音っぽい」「触れられる質感が魅力」

 2014年にオープンした、渋谷宇田川町にあるHMV初のレコード専門店。ここにはJ-POPから洋楽にいたるまで、新譜・中古・復刻版を含めアナログレコードがおよそ5万枚揃っている。中には、その貴重さゆえに数万~数十万円と高額な値がつくレコードも。ここ1年ほどはリリース量も売れ行きも伸びており、2~3年ほど前からは若い女性から20代の客が増えているという。



 売れ行きがいいのは映画やゲームのサウンドトラック。店員の西村学さんは「『AKIRA』のサウンドトラックは海外の方もたくさん買っていく。最近だと、去年映画でヒットした『ベイビー・ドライバー』の音楽がすごくよくて、レコードで買う方が多い。若い人、お店に来たことがない人も自分の知っているアルバムを見ると、興味を持って手に取ってくれる」と話す。また、去年からアイドルのレコードも目立って入ってきているという。

 店舗を訪れていた若者に聞いてみると「デジタルの音は冷たい。アナログの音は温かい。一世代前の音は良い」(18歳・男性/高校生)、「レコードはすれてガヤガヤした感じの音がしてから曲が始まるのが好き」(18歳・男性/高校生)との声があがった。



 また、レコードの音が楽しめるバー「Spincoaster Music Bar」にも若者たちが集まっている。訪れていた若者から聞こえてきたのは「CDで聴くのと違う。レコードはキレイに聞こえる。生音っぽい」(23歳・男性/システムエンジニア)、「レコードは手で触れられる質感が魅力」(23歳・男性/大学生)という声。Spincoaster Music Barはハイレゾ音源とアナログレコードが楽しめる世界初のバーで、レコードを持ち込んでかけてもらえることも魅力の1つだ。

■レコードプレーヤーも進化



 一方、変化はレコードプレーヤーにも起きている。ビックカメラ新宿西口店・オーディオコーナー担当の三原孝幸さんは「5年ほど前と比較すると、当時は棚1つ分くらいで販売していたものが、品数が増えていてその分売り上げも同じように伸びている」と話す。

 高級なイメージのあるレコードプレーヤーだが、中でも若者から人気なのは15000円以内で買うことができる製品。USBの端子が本体についているものもあり、レコードの音源をUSBメモリに直接録音することができる。また、従来のレコードプレーヤーはアンプとスピーカーをつなげる必要があったが、それがプレーヤー1つでまかなえる製品も売れ筋だと三原さんは話した。



 さらに進化したレコードプレーヤーを製造するのは、埼玉県南浦和にあるELP(エルプ)。世界で唯一、レーザーによるレコードプレーヤーを製造・販売している。針をレコードの溝に当てるのではなく、レーザーをレコードの溝にあて反射した光を読み取る。企画・営業部長の竹内孝幸さんによると「針が触れたことがないバージンな面を目掛けてめがけて照射する。擦り切れるほど聴いたような、ひずんだようなレコードでもクリアに聴こえる」という。価格は70万円からと安くはないが、最高の音が待っていると言えそうだ。

 再度盛り上がりを見せるレコード業界。潮氏は「レコードを出せるというのは一流ミュージシャンの証明。ぜひたくさん出して欲しい」と期待を寄せた。

(AbemaTV/『原宿アベニュー』より)

次回『原宿アベニュー』は3月3日(土)12時から!「AbemaNews」チャンネルにて放送

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