記事
  • 連合

3月は「自殺対策強化月間」-若者や働く人の“いのち”を守るために!

1/2

厚生労働省の「自殺対策強化月間」(毎年3月)がスタートした。1990年代末から日本の自殺者は年間3万人を超える状況が続き、2006年には自殺対策基本法が制定された。基本法に基づいて、さまざまな対策がとられ、自殺者は減少してきているが、それでもその数は年間2万人にのぼる。特に若い世代では減少率が低く、20歳代、30歳代の死因の第1位は「自殺」となっている。

若者のいのちを守るために何ができるのか。「自殺対策強化月間」の取り組みとして、SNSを活用した相談窓口を開設する(一社)全国心理業連合会(全心連)の浮世満理子代表理事と、働く人の立場から過労死ゼロ等に取り組む連合の神津里季生会長が対策強化のポイントを語り合った。

浮世 満理子 一般社団法人全国心理業連合会(全心連) 代表理事

神津 里季生 日本労働組合総連合会(連合)会長

●若い人がアクセスしやすいLINEの活用

—3月は「自殺対策強化月間」ですが、どのような取り組みを?
浮世 全心連では、3月1日から31日までの1カ月間、毎日18:00〜22:00まで、「自殺対策強化月間」専用のLINEアカウントを使用したSNSによる相談窓口を開設します。セキュリティが確保されたシステムを採用し、相談員には公認のプロフェッショナル心理カウンセラーを配置しますので、安心してご相談いただけます。

神津 連合も毎年「自殺対策強化月間」に協賛し、周知・啓発活動を行なっています。労働組合として、特に力を入れているのは「過労死・過労自殺」対策です。過労死・過労自殺はあってはならないことであり、過労死等をいかにしてなくしていくか、「過労死ゼロ」をめざして、その背景にある長時間労働の是正やパワーハラスメント防止対策などにも取り組んでいます。

また、毎年11月の「過労死等防止啓発月間」に合わせたチラシの作成・配布、ホームページでの掲載などの周知・啓発活動などの運動面、厚生労働省の過労死等防止に向けた協議会にも連合から委員が参加し、働く人の立場から意見反映に努めるなどの政策的な側面と、両面から取り組みを進めています。

「自殺対策」という観点から言えば、やはり一人で悩み、思い詰めてしまう前に相談することを「常識」として定着させるのが大事だと痛感します。実は、労働組合の職場役員は、組合員からいろいろな相談を受けるのですが、時に一緒に悩んで抱え込んでしまうことがあるんですね。ですから、労働組合と心理カウンセラーなどの専門家との連携が広がれば、組合役員が自分だけで抱え込まず、専門家に相談して早期に解決をはかることができる。そういう意味で、「相談しやすい環境づくり」は、労働組合にとっても重要な課題だと思っています。

浮世 労働組合の役員さんたちも、職場で頑張っていらっしゃるんですね。
実は、心の不調に対応するのは、簡単なことではないんです。家族や職場の同僚・上司だと、相談を受けた側も気持ちが重くなって、「溺れた人を助けようとして自分も溺れてしまう」ことになりかねません。だから、もっと専門家に気軽に相談ができる仕組みを広げていければいいですね。

●働いた経験のある人が働く人をサポート

—心理カウンセラーのお仕事とは?
浮世 全心連は、2010年12月に発足した心理カウンセラーの業界団体です。例えば、仕事の悩みで不眠になっている方は、睡眠薬を処方するより、その悩みをじっくり聴き、対話を通して問題を整理し、自己発見・自己成長によって問題を解決していく心理カウンセリングのアプローチが有効な場合も多いんです。

カウンセラーになるには、大学・大学院で心理学を学び、臨床心理士や、国家資格である精神保健福祉士、公認心理師の資格を取るというルートが思い浮かびますが、全心連では「プロフェッショナル心理カウンセラー(上級/一般)」の資格認定を行っています。取得には国家資格と同等程度の時間数を要しますが、大きな特徴は、「社会経験」を重視した資格であることです。実際に働いた経験のある人が働く人たちのカウンセリングを行う。そのことでより深く悩みを理解し、適切な心のサポートができると考えるからです。

現在、「プロフェッショナル心理カウンセラー」の有資格者は全国で約2000名。医師や看護師、介護福祉士、企業の安全衛生担当などの仕事をされている方が資格を取得し、経験値の高いカウンセラーとして活躍しています。

神津 それは大事なことですね。人間誰しも、心理的なあつれきや悩みを抱えながら生きていますが、職種や仕事によって、それぞれ生じやすい悩みやストレスがある。実際に企業や組織で働いた経験のある人が、カウンセリングをしてくれるというのは、相談する側にとって、たいへん心強いことです。

浮世 産業や職種によって特徴的な悩みやストレスがあります。製造業で働く人の悩みには製造業での、サービス業で働く人の悩みにはサービス業での、職業経験があるカウンセラーが対応したほうが、より深く受けとめることができる。言葉では表現しにくい職場風土を知る人が、相談を受け止めることの意義は大きいと思います。

最近は、職場でメンタル不調を経験し復職した人が、かつての自分と同じような悩みを抱えている人をサポートしたいと、資格を取得し、社内カウンセラーとして活躍されているケースも出ています。実は私自身も、学卒後メーカーで勤務していたのですが、そこでメンタル不調になりました。その回復の過程で、働く人をサポートしたいと考えるようになり、アメリカでカウンセリングの勉強をして心理カウンセラーになったんです。

今回のSNSによる相談でも、職業経験のあるカウンセラーの強みを活かしていきたいと思っています。

●孤立化する労働者

—今、働く人たちの状況は?
神津 職場は大きく変化しています。私は製造業の出身で、かつての製造業は、きつい、汚い、危険という「3K」職場でしたが、メンタルの不調はそれほど問題にはならなかった。その後、自動化・機械化など作業工程の合理化が進む中で、「3K」は改善されましたが、工程ごとの要員が減って、「ひとり職場」が増えてきた。集団で作業していた頃よりも、一人ひとりの責任や影響の度合が飛躍的に高まり、プレッシャーも強まっているのに、身近に相談できる人がいなくなっている。

浮世 どこの職場でも一人ひとりに成果が求められ、職場のチームワークや絆が薄れ、精神的な孤立感を抱える人が増えています。だから、メンタル不調を感じても、早い段階で相談できず深刻化してしまう。あるいは、ストレス耐性が低下し、ちょっとしたことで心が折れてしまう。これは、企業にとっても大きな悩みとなっています。

神津 最近の若い人は群れをつくりたがらない、スマホがあれば時間をつぶせるから、一人でいたほうがいいと考えていると言われます。だから、何か悩みを抱えても、誰にも相談できなくて思い詰めてしまう。でも、「一人でいたほうがいい」というのは、私は本心ではないと思うんですね。人間にとって、孤立し、誰にも頼れないことほど苦しいことはない。集団の中での孤立を恐れるからこそ、人とのつながりを避けてしまうんだと思います。そういう人たちにとっても、今回のSNSによる相談は、大きな希望になるのではないでしょうか。

浮世 スマホでの一人ゲームがストレス解消法という人でも、SNSでの相談ならゲームの手を止めて気軽にアクセスできますよね。

今、SNSの普及でコミュニケーションツールが大きく変化しています。特に若い世代は、対面や電話などのリアルなコミュニケーションには抵抗を感じてしまうことが多い。仕事の悩みやストレスを抱えやすい若い人たち、働く人たちに、もっと気軽にアクセスしてもらうには、やはりSNSを活用したほうがいいのではないかと考えたんです。実際にある行政機関では、自殺対策の窓口を電話からSNSに切り替えたら、アクセス数が1日平均1.8人から112.7人へと約60倍も増えたそうです。

神津 それはすごいですね。SNSでの相談とは、具体的にどういう体制で対応されるのですか。

浮世 期間中は、毎日50名以上のカウンセラーがカウンセリングルームに待機し、相談が入ったら割り振ります。そして、LINE上で、相談者とカウンセラーがチャットのようなイメージで、だいたい1人当たり1時間弱をかけて丁寧にやりとりを重ねます。相談内容によっては途中でスーパーバイザーも関与しながら、どんなご相談にも対応できる体制をとっています。

SNSによる相談のもう1つのメリットは、履歴が残ること。それをもとに最初に気持ちを安定させることが必要な方、具体的アドバイスを求めている方などの振り分けを行なうことができる。だから、相談のクオリティが飛躍的に上がり、逆に相談へのハードルは飛躍的に下がる。そういう意味では、SNS相談は、非常に有効な自殺対策のツールになると期待しているんです。

神津 「クオリティを上げ、ハードルを下げる」。確かにそこは重要ですね。

浮世 もちろん企業でも、メンタルヘルス対策には力を入れていて、ストレスチェックや相談体制も整備をされていますが、社内の人には相談しにくいという人もいる。だから、私たち全心連や連合が、社会的な枠組みとして、相談しやすい環境づくりに取り組んでいくことの意義は大きいと思います。

神津 そうですね。しかも、職場の現状を理解している人にカウンセリングをしてもらえるというのは、働く側にとって本当にありがたいことだと思います。

あわせて読みたい

「自殺」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    W杯も「安倍が悪い」無能な野党

    かさこ

  2. 2

    「水ダウ」企画にみる笑いの限界

    AbemaTIMES

  3. 3

    「万引き家族」ストーリーに疑問

    (チェコ好き)

  4. 4

    日本の孤立化認めた櫻井よしこ氏

    天木直人

  5. 5

    日大攻撃続けるバイキングに批判

    SmartFLASH

  6. 6

    米国が北に仕掛けた無慈悲な取引

    MAG2 NEWS

  7. 7

    竹中平蔵氏の残業論に批判相次ぐ

    キャリコネニュース

  8. 8

    「大迫半端ないって」の胡散臭さ

    新井克弥

  9. 9

    インサイダー取引は100%バレる

    PRESIDENT Online

  10. 10

    竹中平蔵氏が労働者無視の残業論

    国家公務員一般労働組合

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。