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なぜクジラやイルカを食べてはいけないのか?『ザ・コーヴ』の反証映画が映画賞受賞!



 今月17日にロンドンで開かれた国際映画祭の長編ドキュメンタリー部門で、『ビハインド・ザ・コーヴ〜捕鯨問題の謎に迫る〜Behind "THE COVE"』(現在、189カ国でネット配信中)の八木景子監督が最優秀監督賞を受賞した。



 八木監督が同作を製作する発端となったのが、タイトルの通り、映画『ザ・コーヴ(THE COVE)』(2009年、ルイ・シホヨス監督、米)をめぐる問題だ。立ち入り禁止区域に侵入し、イルカの捕殺場面を隠し撮りするなどして残酷性を強調、和歌山県太地町伝統のイルカの追い込み漁を批判的に描いた作品だったが、アカデミー賞・長編ドキュメンタリー賞を受賞した。その後、日本の捕鯨やイルカ漁に対する国際世論の厳しい見方が広がり、太地町の人々に世界中から"野蛮・虐殺者・変態民族"などの心無い言葉を浴びせられた。



 しわ寄せは近隣の町にまで及んだ。去年10月、同じ和歌山県の白浜町にあるテーマパークで、反捕鯨活動をする外国人2人がイルカショーを開催中のプールに飛び込んでショーを妨害し、威力業務妨害容疑で逮捕された。

 八木監督は、『ザ・コーヴ』の反証作品として、太地町に押し寄せるこうした反捕鯨活動家と町民の主張の双方を取材、作品を通して捕鯨を日本文化の一部として肯定的に描いてみせた。



 映画の中では、環境破壊や食の健康被害などを危惧する反捕鯨派が「西洋では黒人をサーカスに入れたり動物園に入れたりした。それは間違いだよね。いつかイルカも同じようになる」「学校給食からイルカ肉がなくなったのも自分の子供に毒を食べさせたくないからだ」など声を荒げる。『ザ・コーヴ』のルイ・シホヨス監督も、隠し撮りについての質問に「関係ない。太地町の間違った行いを世界は目撃したんだ」と回答、両者の議論はどこまでも平行線を辿る。『ビハインド・ザ・コーヴ』の公式サイトがサイバー攻撃されたこともあったという。



 そんな中、今回『ビハインド・ザ・コーヴ』を評価したのは、反捕鯨国であるイギリスだった。八木監督は「観た方のほとんどは日本側の意見を聞いたことがなく、今まで自分たちが聞いてきたこととは違う新しい知識を得られたということが高く評価された。バランスがいいということと、情熱が伝わってくるということと、映画として素晴らしいと言われた。欧米の人たちが素晴らしいなと思うのは、ちゃんとディベートしようとか、評価するところは評価するというところがある」と驚きを隠さない。

■日本の情報発信に問題?

 太地町は、紀伊半島南部に位置する人口およそ3200人の小さな町だ。日本の古式捕鯨発祥の地として知られ、かつては町民の多くが捕鯨や捕鯨関係の仕事に従事してきた。1982年以降、大型の鯨を対象とする「商業捕鯨」が全面禁止となり、町の水産業は著しく衰退した。



 それでも町はクジラを中心とした観光に力を入れており、捕鯨の歴史と技術を後世に伝えることを目的に「くじらの博物館」を開館させた。現在も和歌山県知事の許可の下、決められた数のイルカを追いこみ漁で捕獲。入場客たちは、そうした鯨やイルカに触れ合うことができる。桐畑哲雄副館長は、「太地町にとっては捕鯨、鯨というのは絶対切っても切り離せない存在。本当に太地町にとって重要なもの」と訴える。



 町民からも「太地から鯨をとったら何もないと思うし、命を頂くことに関してはイルカにしても魚にしても牛とかにしても一緒だと思う」「よその国の食文化をキャーキャー言う方がおかしい」と話す。



 水産庁によると、イルカとは体長4メートル以下の鯨を指し、基本的には同種の生物だ。捕鯨反対派はクジラやイルカが「かわいい」「知能が高い」「野生の生物」「残酷すぎる」「絶滅危惧」などを挙げる。

 日本の捕鯨文化に反対する一人、元読売新聞で調査報道記者のジェイク・エーデルスタイン氏は、水銀による健康被害の可能性や、調査捕鯨に税金が投入されていることを指摘する。



 捕鯨には、一般に食用肉に加工するなどを目的とする「商業捕鯨」、生活に必要な捕鯨としてIWC(国際捕鯨委員会)に捕獲枠を認められている「先住民生存捕鯨」などがある。日本が行なっている「調査捕鯨」は、頭数、年齢分布、食性などの調査が建前だ。



 八木監督は「国際会議で"いじめ"に遭ってしまっていて、日本の政治家はイエスかノーかハッキリ言えない理不尽な状況。資源は豊富にあり、商業捕鯨を再開しても全然おかしくないのに、感情論で決められてしまうので、仕方なく抜け道として調査捕鯨を行っている。リック・オバリー(『ザ・コーヴ』主人公)は、『反対理由は作る』と言っていた。結局、水銀の問題などが全てクリアになったとしても、かわいいからという理由で反対するのだろう」と話す。



 マグロ漁師の経験もあるリディラバ代表の安部敏樹も「日本の文化は、油、骨、皮までちゃんと使って、しっかりサスティナブルに消費していこうという考え方。クジラの頭数が増えてきたのであれば、商業捕鯨にして良いはず。"それなら捕っていいよね"と国際社会に言ってもらえるまで、水産庁も含め日本はしっかりコミュニケーションしなきゃいけない」と指摘する。



 これを受けた八木監督は、「農産物にも税金が投入されているのに、なぜ捕鯨だけ突くのかという、アンバランスさもある。捕鯨推進の人たちがちゃんと言い返さないから、『違法なんだ』『水銀で不健康なんだ』『税金が捕鯨だけにいっぱい費やされているんだ』という誤った情報がどんどん出て行ってしまう」と警鐘を鳴らしていた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

▶『AbemaPrime』は月~金、21時から放送中!

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