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目的を達成するための手段の多様性や複雑性などの指摘は鋭いが、憲法解釈への応用には無理がありそう

篠田という国際政治学者の方は、日本の憲法論議に新しい平野を拡げることに日々努力されているようで、私のように専門の憲法学者の方々の議論に左右されやすい法律実務家にとっては実にありがたい存在である。

ほう、そういう見方も成り立つのか、と思わせるような的確な指摘をよくされている。
着眼点が違うというか、とにかく憲法学者と言われる方々の視点とは違った新しい視点から日本の憲法解釈の在り方を提示されようとしているから、実に刺激的で、新鮮だ。

もっとも、篠田さんの憲法論議は法律家、法律実務家としては簡単には受け容れられないところがあり、ちょっと異論を唱えたくなるから面白い。

今回の議論は、日本の憲法学者は目的と手段を取り違えている、手段を目的のように倒錯して理解しているのではないか、ということである。

篠田さんは、平昌オリンピックによって齎された北朝鮮と韓国との融和ムードの醸成を肯定的に捉えておられるようで、北朝鮮に対する経済制裁を逸脱するものでない限り、北朝鮮と韓国の間での対話で朝鮮半島の緊張が緩和すること自体は、国際平和の維持という国際社会の目的に適う、と考えられているようである。

「対話」も「圧力」も国際平和を維持するという大きな目的を実現するための手段でしかなく、「対話」と「圧力」を二項対立させるような日本国内の議論はおかしい、「対話」と「圧力」は手段でしかないのだから、国際平和を実現するためには適当に使い分ければいい、というご議論である。

なるほど、今の状況はそういう風に読み解けばいいのかな、と思わせるような論考だが、しかし、その次がいけない。

何でここで日本の憲法学者が登場しなければならないのだろうかと思うが、篠田さんはどうやら日本の憲法学や憲法学者がお嫌いのようで、すぐ日本の憲法学者批判になってしまう。
それにしても目的を見失ったまま、「圧力か対話か」という手段の二者択一にとらわれる姿勢は、やはり憲法学通説的な憲法9条解釈に起因しているように思われる。
絶対非武装中立といった憲法9条解釈は、まさに目的を見失って、特定の手段の絶対性だけを唱える立場だからだ。

日本国憲法が「希求」している目的は、「正義と秩序を基調とする国際平和」である。その目的を達成するために、第二次世界大戦時の行動を反省し、国際法規範にそって武力行使の一般的禁止を国内法規範に取り入れた(9条1項)。そして国際法規範に挑戦した大日本帝国軍を解体して戦争を目的にした「戦力」の不保持を誓い、「交戦権」なる時代錯誤的な古い国際法概念を振り回すこともしないとも誓った(9条2項)。

現代国際秩序の維持という目的のために、世界の各国は一致団結して、武力行使の一般的禁止に合意している(国連憲章2条4項)。しかし違法行為に対抗する手段まで禁止してしまっては、かえって国際秩序の維持という目的が脅かされる。そこで国際秩序の維持に必要な制度として、集団安全保障と自衛権の二つが、合法化されている(国連憲章7章・51条)。日本国憲法は、本来はこうした国際法規範の考え方にそって理解されるべきものだ。
国際法秩序を維持するための手段である「戦力不保持」や「交戦権否認」を理由にして、国際法秩序の維持に必要な制度である「自衛権」を否定しようとするのは、あまりに倒錯している。
目的は何なのか。目的は「正義と秩序を基調とする国際平和」だ。その目的に役立つ手段を日本国憲法は提唱しており、役立たない手段は提唱していない。
日本国憲法が希求している目的が「正義と秩序を基調とする国際平和」だ、などという議論はこれまで一度も聞いたことがない。

国際政治学者の方は何でそういう極め付けが出来るのだろうか、と首を傾げたくなる。

ちょっと国連憲章を意識し過ぎじゃありませんか、と言いたくなる。

篠田さんの論考は、アゴラで読んでいただきたい。
何でも日本の憲法学者のせいにするのは、どうしてもおかしい。

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