記事

消費税引上げの言い訳に全くならない「子育て支援」

2013年の消費税引き上げは時期尚早


いよいよ「社会保障と税の一体改革」の本丸である消費税引上げ決定が、秒読み段階に入ってきた。民主党は28日午前に、税制調査会、一体改革調査会の合同総会を開き、消費税率を2013年10月に8%、2015年4月に10%に2段階で引き上げる案を提示した。

これまでこのブログ(下記参照)でも再三にわたって述べてきたように、私はそもそも消費税引き上げ自体に反対しているが、残念ながら消費税引き上げやむ無しという政策決定を民主党がするにしても、このスケジュールは明らかに「時期尚早」と言うべきであろう。

・「社会保障と税の一体改革」素案骨子は「毒まんじゅう」
http://blogs.yahoo.co.jp/kqsmr859/35818560.html

・なぜ、消費税引上げでなければならないのか(上)? 社会保障と税の一体改革の評価
http://blogs.yahoo.co.jp/kqsmr859/35467095.html

・なぜ、消費税引上げでなければならないのか?(下)
http://blogs.yahoo.co.jp/kqsmr859/35467101.html

まず、2013年10月というスケジュールは、同年8月に衆議院が任期満了になるという政治的スケジュールから決められたものであり、景気回復の動向や震災復興の状況から、「この時期ならば大丈夫」と判断されたものではない。

しかも、景気状態が悪化した場合に消費税引き上げを取り止めるための「景気弾力条項」も、「・・・総合的に判断する・・・」というあいまいな表現だから、全く意味をなさない。2013年と2015年に2段階を踏むと言う点も、人々は2013年の時点(あるいはもっと前の時点)で1年半後の消費税引き上げを織り込んで行動するだろうから、ショックを和らげる効果も、実はあまり期待できない。

業界団体の利権保持・利益誘導で歪む「幼保一体化」


さて、一体改革素案の社会保障部分は、既に述べたように(下記ブログ)、バラマキ・オンリーとでも言うべき無節操な大盤振る舞いの案で決着したが、マスコミなどが唯一好意的に評価しているのが「子育て支援」の拡大である。

・年金もらいすぎ(特例水準)解消は、実はバラマキである
http://blogs.yahoo.co.jp/kqsmr859/35841170.html

子育て支援とは、具体的には、「幼保一体化」による待機児童解消策のことを指す。子育て支援の充実は、例え消費税が引き上げられても、消費税を負担する現役層が「受益感を持てる」(消費税を払った分のサービスを受けていると実感できる)ことから、増税への納得感があり望ましいとされる。

しかしながら、あまり知られていないが、実はこの「幼保一体化」の中身も、官僚主導で進む既得権益業界との利害調整の結果、実際には受益感・納得感とは程遠い、既得権益業界への「補助金バラマキ合戦」に陥っている。

すなわち、消費税引き上げで作る財源が、認可保育園や幼稚園等の「施設への補助金」としてばらまかれ、「中抜き」されるばかりで、実際に待機児童が保育園に入れるようになったり、入っている認可外保育園の質が向上するなどして、子育て世代が受益を実感することは、あまり期待できない状況なのである。

幼保一体化とは何か


そもそも幼保一体化とは、簡単にいえば、幼稚園と保育園の垣根をなくして、同じ施設にすることである。現在、東京や横浜・川崎、大阪、名古屋などの大都市部では、保育園不足で待機児童問題が深刻化する一方、逆に幼稚園は子ども不足から定員割れや廃園が相次いでいる。

それならばいっそうのこと、保育園と幼稚園を合体させて、両者を一つの施設にしてしまえば、幼稚園の経営改善と待機児童対策が同時に図れるではないか。まさに「一石二鳥の策」であるとして、民主党政権は、この素朴なアイディアを、政府の「子ども・子育て新システム検討会議」の場で検討・議論してきた。

しかし、民主党政権設立後の2年間で、「政治主導」→「官僚主導」→「政治不在で官僚のやりたい放題」と事態が推移してゆく中、もはや当初の政策意図は完全に忘れ去られ、官僚と幼稚園と認可保育園業界の既得権保持と利権拡大のみが追及される「歪んだ会議」なり下がってしまった。具体的に行われている骨抜きは次の通りである。

一体化ではなく、複雑化


第一に、当初、全ての幼稚園と保育園を一体化し、保育と教育を行う総合施設である「こども園」に移行させる案であったが、幼稚園と認可保育園業界の強硬な反対により、現在は、幼稚園や保育園を続けたい場合には、そのまま、幼稚園、保育園として存続できることとなってしまった。

このため、当初の「こども園」の概念は大幅に縮小され、単なる「総合施設」として全体のごく一部を構成するにすぎないことになってしまった。「一体化」どころか、幼稚園、保育園、総合施設が分立する「複雑化」である。

保育園はともかく、3歳以上の児童が対象の幼稚園のままでは、待機児童が深刻な0歳から2歳の児童を引き受けないから、待機児童対策には全くならない。しかしながら、なぜか、消費税増税を原資として新設される運営補助金の「こども園給付」を、幼稚園は受け取ることができる。

その上、最近、幼稚園については「私学助成」という従来の運営補助金も引き続き受け取れることが決まったから、補助金の2重取り状態となる。まさに、焼け太り、税金の無駄遣いである。

認可保育園業界も補助金の「おかわり!」


第二に、「総合施設」についても、幼稚園業界に大幅に配慮して、現行の幼稚園と同じ、3歳から5歳の児童を預かる施設でも良いことになった。0歳から2歳を引き受けない「待機児童対策にならない総合施設」を作り、こども園給付の他、建設費に対する莫大な施設補助金を投じる意味は何なのだろうか。理解不能だ。

ちなみに、幼稚園が「こども園給付」と私学助成の「補助金2重取り」という恩恵が与えられることを妬んだ認可保育所の業界団体が、政府の会議をボイコットするという強硬手段で抗議をしたため、先日、保育園が設立する「総合施設」(もちろん、幼稚園設立のものも)も、なぜか「私学助成」を受け取れることが決まり、こちらも補助金の2重取りの恩恵が受けられることになった。まさに、税金のたかり合いである。

第三に、保育園の供給量拡大の重要な担い手である株式会社の参入を拒む措置も検討されている。具体的に、学校法人にしか認められない幼稚園への私学助成を存続し、総合施設にまで私学助成を入れようとしている意味は、実質的に株式会社の参入を拒否しようとする幼稚園・認可保育園の業界団体の思惑が働いていると思われる。

また、これとは他に、会議では、総合施設への株式会社参入を「例外扱いにすべき」との主張がなされている。株式会社参入は原則として認めないということであるから、これが認められれば、現行制度よりも改革は後退することとなる。さらに、株式会社の重要な資金調達手段である株式についても、配当の一律禁止や厳しい制限が検討されている。

進む「認証外し」


第四に、現在の保育園供給量拡大の主な担い手である東京都認証保育園、横浜保育室等の質の高い「認可外保育園」を排除しようとする動きも目立つ。具体的には、子ども園を国が「指定」する基準を、現行の認可保育園並みに引き上げ、認可外保育園への公費・補助金を断つ「兵糧攻め案」が検討されているのである。

しかし、これは「待機児童対策」や「保育の質向上」といった趣旨から全く本末転倒の案である。本来はこうした認可外保育園にこそ補助金を手厚くし、供給拡大とともに保育の質を高める努力を促すべきである。待機児童対策にならない幼稚園や、既に多額の公費投入によって質が高い認可保育所に、さらに補助金を手厚くする意味など全くない。

7000億円の財源では全く足りない


小宮山厚生労働大臣は様々なテレビ番組で「子育て支援のために消費税引き上げを!」と言っているが、実を言えば、このようにお粗末な極まりない内容なのである。

これに対して、消費税引き上げで必要とされる幼保一体化のための財源は、年間7000億円であるとされる。しかし、この中には、認可保育所の人件費や、低所得者への保育料軽減のために地方が独自に行っている補助金が全く含まれていないから、実際に保育拡大にかかる費用は1兆4千億円程度とみられる(詳細は下記のブログからリンクされている論文を参照。地方単独の補助金の大きさについては下記記事も参照)。

・財源不足下でも待機児童解消と弱者支援が両立可能な保育制度改革~制度設計とマイクロ・シミュレーション
http://blogs.yahoo.co.jp/kqsmr859/29959181.html

・姑息な情報操作で公費補助率アップを狙う「子ども・子育て会議」 
http://synodos.livedoor.biz/archives/1644510.html

さらに、この7000億円という金額には、新設される施設に対する建設費の補助金(施設整備交付金)も全く含まれていない。これらを含むと、実際には、幼保一体化には、年間2兆円~2兆5千億程度は必要なはずであり、現在予定されている消費税引き上げ幅では全く足りなくなってしまう。

つまり、民主党が進める「幼保一体化」とは、1)既得権益業界に補助金が中抜きされ、焼け太りし、2)待機児童対策としての実効性、効率性が低いばかりか、3)消費税引き上げ5%では財源が全く足りず、次の「おかわり!」の消費税引き上げが準備されているというとんでもないシロモノなのである。

このようなもののために、消費税引き上げなど絶対に認めるべきではない!

トピックス

ランキング

  1. 1

    大雪で帰宅命令より朝出社禁止に

    かさこ

  2. 2

    堀江氏「新幹線高すぎ」に反響

    THE PAGE

  3. 3

    性行為なしの援助交際続ける少女

    渋井哲也

  4. 4

    尾木ママ iPS不正で国の責任指摘

    キャリコネニュース

  5. 5

    白米を食べられない子供が増加中

    NEWSポストセブン

  6. 6

    橋下氏 会見開いた岩上氏を批判

    橋下徹

  7. 7

    青山繁晴氏 首相の平昌行き反対

    AbemaTIMES

  8. 8

    賃金払えない店が潰れるのは正常

    非国民通信

  9. 9

    幸福の科学 総裁長男が衝撃退職

    女性自身

  10. 10

    橋下氏 スパコン不正ひどすぎる

    橋下徹

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。