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トヨタの電動車シフトは“異次元の構え”

世界の自動車メーカーが一斉に電動化シフトを加速させています。各国の環境規制に対応するためですね。トヨタは30年をメドにEVなど電動車の販売台数を全体の半数とする目標を掲げています。電動車両の加速にともなうリスクはないのでしょうか。

※庄司哲也氏さん

トヨタは2025年ごろまでにグローバルで販売する全車種について電動専用車か電動グレードを設定し、エンジン車のみの車種をゼロにする方針を明らかにしています。

また、30年までの目標として掲げている電動車550万台のうち、EVと燃料電池車(FCV)あわせて100万台以上をめざしています。

「従来をはるかに超える“異次元の構え”が必要だと考えています」

昨年12月18日、都内で開かれた会見の席上、トヨタ副社長の寺師茂樹氏は、電動化を加速するにあたって、そのように述べました。

実際、寺師氏が“異次元の構え”と表現したことからもわかるように、電動化の加速には多数の課題があります。とりわけ、基幹部品である内燃機関のガソリンに匹敵するバッテリーと、エンジンに相当するモーターには、異次元の進化が求められます。

バッテリーについては、2017年12月13日、車載用電池の最大手であるパナソニックと車載用角型電池事業で協業することを発表しています。

「今回の協業によって、電池を制するものが電動化を制するという体制が整ったといっても過言ではない」と、寺師氏は会見の席上、語りました。

では、もう一つの基幹部品であるモーターについてはどうか。

指摘するまでもなく、電動車の台数を増加させるには、大量のモーターが必要になります。モーターは、磁力の吸引、反発の力で回転力を発生させているのですが、車の発進時などモーターをゆっくり回すときに、大きなトルクを効率よく出すためには、強力な磁石が必要です。

高温でも磁力を高く保つために欠かせないのが、レアアース(希土類元素)です。ところが、レアアースの埋蔵量が多い中国は一度、輸出を制限したことがあります。それ以来、レアアースは、安定調達、材料コストの面で問題を抱えるようになりました。

これまでも、レアアースであるテルビウム、ディスプロシウムを使わない磁石は開発されてきましたが、磁力の高温劣化には課題が残されたままでした。

また、レアアースの中で比較的産出量の多いネオジムは、その供給量不足が懸念されながらも、積極的な取り組みが進められているとはいえませんでした。ちなみに、EV(電気自動車)などの電動車の普及を想定すると、もっとも楽観的な予測でも、ネオジムは2025年時点で供給量不足に陥るともいわれています。

トヨタは20日、ネオジムの使用量を最大50%減らしたうえで、高温環境でも使用可能な「省ネオジム耐熱磁石」を開発したと発表しました。

「電動化の障害を全力で取り除くことが求められていました」
と、トヨタ自動車先端材料技術部技範の加藤晃氏は、20日、都内で開かれた説明会の席上、語りました。

開発における最も大きな課題は、ネオジムをレアアースの中でも安価で豊富なランタンとセリウムに置き換えても、高温下で性能を損なわないようにすることでした。


※加藤晃さん

トヨタは、「磁石を構成する粒の微細化」「粒の表面を高特性にした二層構造化」「ランタンとセリウムの特定の配合比」の3つの技術を組み合わせることで、ネオジウムを最大50%削減しても、従来のネオジム磁石と同等レベルの耐熱性能を持つ磁石を実現しました。

「1から10まで、すべてトヨタ内での開発です」
というのは、先端材料技術部グループ長の庄司哲也氏のコメントです。

レアアースの使用量を抑えることは、電動車両の普及のハードルを下げることにつながります。つまり、「省ネオジム耐熱磁石」を開発したことで、トヨタは電動車の普及におけるハードルを一つ、乗りこえたことになります。

トヨタは、新型「省ネオジム耐熱磁石」を、2020年代前半には電動パワーステアリング向けのモーターで実用化する計画です。また、さらに要求性能が高い電動車の駆動用モーターでは、今後10年内での実用化を目ざしています。

トヨタが2030年に向けて電動化を加速させるには、さまざまな環境整備を急がなければなりません。それこそ、寺師氏がいうように、“異次元の構え”が必要です。

逆にいえば、どこまで全方位の環境整備を進めることができるか。それが、30年に電動車550万台を現実のものにできるかどうか――。その試金石といえるでしょう。

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