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インタビュー:ブロックチェーン技術、企業に大変革=柳川教授

[東京 19日 ロイター] - 仮想通貨で注目を集めているブロックチェーン技術。東京大学大学院の柳川範之教授はロイターのインタビューで、同技術を利用したスマートコントラクト(契約の自動化)が進展すれば、企業組織の姿が変わる可能性があるとの見方を示した。

ただ、それには紙ベースの契約を前提とした法律の立て付けに課題があるとも指摘。一方、仮想通貨については、価格変動が大きくなりやすい点など決済手段としては問題点が多く、本物の「通貨」にはなり得ないとの見方を示した。

詳細は以下の通り。

──ブロックチェーンの特徴は。

「改ざんされにくい記録を低コストで残せるのが一番の特徴だ。一方、処理スピードが遅いという欠点もある。ある程度時間がかかってもいいが、記録をしっかりと、しかも低コストで残しておきたいというモデルにフィットする」

──具体的な活用例は。

「英企業でダイヤモンドの取引履歴に活用しているケースがある。ダイヤモンドがどこで発掘されて、誰の手を経て来たかということが、ブロックチェーン上で記録されていれば、取引の安全性が高まる」

── 将来期待できる分野は。

「ブロックチェーンは3段階あって、1つは低コストで記録を残せる機能。ダイヤモンドははまった例だが、他にも行政的な記録、例えば不動産登記に使えると言われている」

「2つ目はIoT(モノのインターネット)で得られた情報を使って、スマートコントラクトで執行し、その記録をブロックチェーンで残す手法だ。ブロックチェーンはIoTと相性が良く、ここにはビジネスチャンスがあると思っている」

「3つ目は組織をなくす、組織の代替としてブロックチェーン、スマートコントラクトを使うケース。だが、これはなかなか難しい。仮想通貨イーサリアムが盗まれたDao事件があるが、これはまさにその実験をやろうとしてスタートでつまずいた」

──スマートコントラクトが普及すれば、組織がなくても契約を実行できる。将来的に組織は必要なくなるのでは。

「世の中で起きること全てを契約書に書くことができない。その対処に組織の存在理由があるというのが(経済学で言う)不完備契約の理論だ」

「スマートコントラクトは完備契約の世界であって、完備契約で全てをやれるのであれば確かに組織はいらないが、現実には不完備契約の世界だから、やはり組織は必要となる」

「ただし、完璧に組織をなくすのは無理でも、かなりの部分を自動化することはできる。その意味で、トラブル処理や将来の予測可能性の低いところだけ人間がいて、組織として関与していくことはあるかもしれない。組織の姿がかなり変わっていく可能性があり、このあたりは学者としては、かなりエキサイティングだ」

──課題は。

「ブロックチェーン技術はわかりにくいので、過度に期待したり、過小評価したりする面がある。こうした振れがあると、実用化の際に障害になりかねないので、そこは適切な理解が進むことが必要だ」

「もう1つは、ブロックチェーン技術の発展にはスマートコントラクトの実装が大きなポイントとなるが、自動執行したときの法的な取り扱い、紙ベース前提の契約が前提となっている法律との整合性などについて考えないといけない」

──仮想通貨・NEMの流出事件をどうみるか。

「基本的には、取引所と呼んでいるものの問題だ。(仮想通貨・ビットコインの生みの親である)サトシ・ナカモトはブロックチェーンの概念を用い、ビットコインですべての取引が完結する世界を描いたが、そこに大きな問題があったというわけではない」

「ただ、普及に当たってはそれだけで完結する世界は難しく、どうしても現実世界との接点が必要となる。今回はその接点となる取引所のシステムに脆弱性があった」

──セキュリティーや規制を強化すれば解決する話しか。

「やり過ぎると低コストというブロックチェーンのメリットが薄れるので、コストとベネフィットのバランスを考えなければいけない。リスクも純粋に技術的なものから、ヒューマンエラー的なものまでさまざまある。どのリスクにいくらかけるかは、まさに価値判断だ」

──仮想通貨は「通貨」になり得るのか。

「中央銀行が何かしらの技術を使ったデジタル通貨を発行した場合は、通貨として流通し得る。だが、いまのビットコインやアルトコインと言われているような仮想通貨は、通貨にはなり得ない。仮想通貨という呼び方は、ややミスリーディング。将来的に通貨として幅広く使われるようになる可能性は、ほとんどないと思っている」

「仮想通貨は供給量を自由に調整するというメカニズムがない。供給量を調整できないと、需要側の変動によって価格が動くので、どうしても価格がボラタイルになる宿命を持っている。価格の変動が大きければ、決済手段として使えない」

「さらに総供給量が全体のトランザクション(取引)からすると小さ過ぎるという問題もある。特殊な環境、例えばその国の通貨の信用が低い国で多少使われるとか、海外送金など限定的な用途で使われる可能性はあるが、その程度にとどまるだろう」

「将来的に中銀がデジタル通貨を発行するべきかどうかは、よく考えないといけない。民間銀行のデジタル通貨があって、その裏付けとして中銀のリザーブがあれば、それで構わないのではないか。中銀がデジタル通貨を発行すると、ある意味で、中銀に国民が口座を持つのと同じことになるという問題もある」

*インタビューは15日に行いました。

(志田義寧 杉山健太郎 編集:田巻一彦)

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