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いまある仮想通貨は「オワコン」なのか?

NYダウ、日経平均、そして仮想通貨……。1~2月は「相場」が下落し市場は大混乱した。だが、経営コンサルタントの小宮一慶氏は「同じ下落でも、株価と仮想通貨は“本質”が違う」といいます。小宮氏が「仮想通貨の価値が見直される時期が来ている」と断言する理由とは――。

■NYダウは「過去最大」の下げ幅を記録

2月5日、ニューヨーク市場でダウ平均株価(30種)が一時1600ドル近くも下落しました。日中の下げ幅としては過去最大です。これを受け、翌日の日経平均株価の下げ幅も一時1600円を超える全面安の大混乱となり、その余波はいまなお続いています。

また、仮想通貨市場の価値は、1月上旬に過去最高の8300億ドルに達したものの、その後、その半分近くを失ったといわれています。

株価や仮想通貨の相場を動かすものとは何でしょうか。


写真=iStock.com/Paperkites

さまざまな要因がありますが、その要因を知るためには、まず経済の動きや仕組みをきちんと理解していることが重要です。ビジネスや投資をするのであれば、なおさらのこと最新の経済情報や数字を随時チェックしておく必要があることは言うまでもありません。

今回は、株価や仮想通貨の波乱含みの状況をケーススタディーとしながら、その背景や経済の基本的な知識、そして経済の数字について説明をしていきましょう。

▼米国株が大幅上昇した背景

今回、米国の株価が大幅な調整局面に入った背景には、それまでの急ピッチな株価の上昇があります。相場は過熱し過ぎると、それに対して反動的な動きが出るのがセオリーです。ただ、この反動の中身をさらに分析する必要があります。「経済全体の悪化」が原因となっているかどうかを確かめなければなりません。

株価の上昇と下落。この直接の要因は「需給」です。極めてシンプルな法則で成立しています。買う人が多ければ上がり、売る人が多ければ下がります。そして、その背景には経済の状況、特に企業業績が良いかどうかということがあります。

米国の企業業績はこれまで堅調に拡大していました。

2016年4-6月には年換算で2兆ドルを切っていた税引き前の企業収益が、2017年7-9月では2.2兆ドルにまで拡大。その後の各種報道をつぶさにウオッチすると、個別企業の収益に関して「落ち込み」は認められません。さらに、企業業績に大きな影響を与え、米国のGDPの7割を支える個人消費も比較的順調に拡大しています。

全体の経済の状況を表す実質GDP(インフレを調整した後のGDP)も直近の2017年10-12月で年率2.6%(速報値)、その前の4-6月期、7-9月期は3%台の成長を続けていました。リーマンショック(2008年9月)で大幅に落ち込んだ米国経済ですが、その後、9年間ほど成長を続けています。それが、株価の急上昇に反映されていたと言えるでしょう。リーマンショック後の中央銀行(FRB)の大幅な金融緩和も経済や株価を支えてきた大きな要因です。

日本経済はそんな好調な米経済の影響を受け、株価が上場していました。

■仮想通貨の値動きのメカニズムは株価と違う

それでは、なぜ米国の株価はここにきて大幅な反落したのでしょうか。最大の原因は「長期金利の上昇」です。

[画像を元記事で見る]

リーマンショックの傷も癒えた米国では、中央銀行であるFRB(米連邦準備制度理事会)が政策金利(短期金利)を順次上昇させています。2014年にはほぼゼロでしたが、直近では1.25~1.50%の間に誘導しています。

さらには、市場に大量の資金を供給していた「量的緩和」政策をやめ、昨年から供給量を削減し、市場から資金を吸い上げ始めています。

政策金利の上昇、市場への資金供給量の削減。これらのことが徐々に市場に影響を与え始め、今年の1月後半あたりから長期金利が上昇をはじめたのです。長年「2.6%の壁」と呼ばれる見えない壁があったのですが、一気にそれを超え3%に迫るところまできています。

この長期金利上昇の背景には、景気の比較的順調な拡大だけでなく、トランプ大統領が打ち出した大幅減税が企業業績をさらに拡大するとの投資家関係者の思惑が重なったこと、また、財政赤字が拡大することなどが金利上昇トレンドを形成していると考えられています。

ところがその半面、急ピッチな長期金利上昇は企業収益に今後マイナスの影響を与えるのではないかという懸念が生じるとともに、最近までの株価の急ピッチな上昇への反動もあり、2月に入って大幅な株価調整の局面となったのです。

とはいえ、米国経済は堅調です。長期金利の上昇も、その景気の堅調さを背景としたものですから、少し長い目で見た場合には、株価の値動きは安定化してくるのではないかと私は考えています。リーマンショック後9年近くも景気が拡大しているので、景気後退の時期が来てもおかしくありませんが、しばらくは堅調な経済が続くと思います。もちろん、株価下落が個人消費などの実体経済に与える影響もありますから、今後の個人消費や企業業績の動向チェックを怠ってはなりません。

▼仮想通貨は国家の「裏付け」がない

仮想通貨も昨年末にかけては大幅に価格が上昇しましたが、前述したように年初以降、急激に調整色が強まりました。また、仮想通貨交換会社のコインチェックから580億円相当の仮想通貨「NEM(ネム)」が不正流出するという事件もあり、さらなる下落に拍車をかけました。

しかし、この価格下落は、株価の下落とは本質的な原因が違うと私は考えています。そのことを理解するには、仮想通貨と「法定通貨」の違いを理解しておく必要があります。

米ドルや日本円、人民元などの法定通貨の「相場」が上下する理由は何でしょうか。直接の理由は「需給」です。買う人が多ければ値段が上がり、売る人が多くなれば下落するということです。上下する理由に関しては、株式も為替相場も仮想通貨も同じなのです。

ただし、法定通貨の場合には背景があります。投資家など市場関係者による思惑ももちろんありますが、その国の「政治・経済」という大きな背景があります。これが「ファンダメンタルズ」と呼ばれるものです。

たとえば、資源価格が上がれば豪州ドルやブラジルレアルは上昇傾向となります。資源国特有のファンダメンタルズがあるがゆえにその“恩恵”を受けるのです。また、経済力のない国では自国通貨よりも米ドルやユーロの保有が好まれますが、それもそれらの国々のファンダメンタルズが弱いことに起因しています。

もうひとつ、法定通貨が仮想通貨と違うのは、法定通貨では中央銀行のバランスシートにおける「負債」として計上されていることです。これは簡単に言えば、国家の裏付けがあり、その国の信用でその通貨が成り立っているということを意味します。だから、各国のファンダメンタルズが問題になるとも言えます。

■仮想通貨が法定通貨と根本的に違うところはココ

ここで仮想通貨を考えてみましょう。仮想通貨には、政府の裏付けはありません。だれの負債でもありません。したがってファンダメンタルズも関係ありません。こうして考えると、仮想通貨の価格を決定するのは「需給」だけということが分かります。

私は、仮想通貨に価値はないとは言いませんが、それを裏付けるベースはなく、買う人が多ければ上昇し、売る人が多ければ下落するということ以外には、価格決定要因はないということなのです。

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繰り返しますが、仮想通貨に価値がないとは言っていません。しかし、法定通貨とは根本的に違うものだという認識が必要なのです。

▼各国中央銀行が法定通貨としてのデジタル通貨を検討中

仮想通貨は、当初、自国通貨を保有するよりも国外への持ち出しなどが便利(通貨の交換が不要)だというような理由で、もっと言えばキャピタルフライト(資本の逃避)にも使いやすいという理由で中国人が大量に購入していました。

しかし、中国当局による仮想通貨取引所の閉鎖命令などがあり、中国での需要が急減。それに代わるようなかたちで日本人が大量保有をはじめたという経緯があります。ただ先ほども述べたように昨年末までは急上昇しましたが、他国政府でも取引所の閉鎖命令が出るなどして、今年に入り価格が大幅な調整局面に突入しています。

一方、株価の下落で、仮想通貨に一時的に資金が流入しましたが、株価下落幅があまりに大きかったため、仮想通貨の価格も軟調になりました。

仮想通貨の利便性には「決済のしやすさ」もあります。しかし、これだけ相場が乱高下しては決済手段として使いやすいと言いづらい状況にあります。

三菱東京UFJ銀行は、相場が円に対して変動しない仮想通貨の開発を進め、各国中央銀行も法定通貨としてのデジタル通貨を検討しています。よって、そう遠くない未来に、決済はこちらが主流になる可能性があります。

これらのことを考えると、現状の仮想通貨の価値が見直される時期もそう遠くないのではないかと私は考えています。

(小宮コンサルタンツ代表、経営コンサルタント 小宮 一慶 写真=iStock.com)

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