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金与正氏の"微笑み外交"で高まる南北融和ムード…米韓合同軍事演習が延期される可能性も高い?

 最後まで満面の笑みを浮かべたまま、平壌への帰途についた金正恩委員長の妹・与正氏。韓国訪問最後の夜、文在寅大統領と並んで三池淵管弦楽団の公演を鑑賞。南北統一を描いた『また会いましょう』では、客席にいた序列ナンバー2の金永南氏が涙をぬぐうシーンも見られた。与正氏は楽団の歌と演奏に大きな拍手を送り、最後に文大統領と熱い握手を交わした。

 今回の北朝鮮代表団の訪韓で際立ったのは、与正氏の「ほほえみ外交」だった。到着直後は少し緊張していたようにも見えたものの、開会式では、文大統領と笑顔で握手を交わした。翌10日からは本格的な外交を展開、北朝鮮高官団と臨んだ韓国大統領府での会談では南北首脳会談を提案、文大統領も「環境を作って実現させよう」と応じ、南北融和のムードが一気に高まっている。

 12日放送のAbemaTV『AbemaPrime』に出演した伊豆見元・東京国際大学国際戦略研究所教授は「文大統領のみならず、今の政権としても首脳会談をやりたいということは明確に言ってきたし、できれば早い時期にやりたいのだろう。ただ、文在寅という人は極めて現実的な人なので、核問題に関する北朝鮮の姿勢が変わらない限り、南北首脳会談なんてあり得ないということも充分わかっている。だからこそ、条件や環境を整えると返答した。すごく妥当な言い方だ」と解説する。

 その上で「日本も米国も核問題をないがしろにして南北がどんどん進むということについては賛成できないし、強行すれば米韓同盟、日韓友好もガタガタになってしまう。また、国内でも意見は二分されるだろうし、政権基盤も危うくなるが、それでもやりますか、という話だ」と指摘した。

 その文大統領は去年9月、ユニセフ(国際児童基金)やWFP(世界食糧計画)を通じ、北朝鮮に約9億円の人道支援を行うことも表明している。ここで引き合いに出されるのが、2000年に行われた初の南北首脳会談だ。この会談を実現させた金大中大統領は後にノーベル平和賞を受賞する。しかし、会談直前に韓国の財閥から北朝鮮に5億ドルが不正送金されていたことが発覚、"カネで買ったノーベル平和賞"と揶揄されることとなった。さらに、90年代後半の大飢饉で経済的に破たん状態だった北朝鮮だが、この支援で核開発を後押しすることになったとも言われており、今回もまた同じ結果をもたらすだけではないかとの意見もある。

 伊豆見氏は「また、2000年に北朝鮮が望んでいたのはインフラに対する援助で、事前にその話もしていたと思う。ところがいざとなると世論の見方も厳しく、そこまでは至らなかった。しかもあのときは5億ドルだったがが、今回は800万ドル。このくらいの"はした金"で動くかといったら、動かないだろう」との見方を示す。その一方、「北朝鮮は経済発展に重点を置いていて、その実現ためには国際社会の支援と協力が不可欠。しかし、経済制裁が解除されたとしても、投資してくれる国はいない。だからまず韓国に支援・投資してもらいたい。北朝鮮としては韓国と関係改善するぞというのは、経済やるぞという国民向けメッセージでもある」と指摘した。

 北朝鮮の労働新聞は12日付の一面に三池淵管弦楽団の公演を鑑賞する金与正氏と文在寅大統領の写真を掲載。今回の訪問を、「北南関係を改善し、朝鮮半島の平和的な環境を作る上で意義ある契機になった」と称賛している。一方、公演会場の外では、南北接近に反対する人々による抗議活動も行われていた。

 両国が度々口にする「関係改善」、そして「南北統一」という言葉について、伊豆見氏は「統一というのは、国家の理念、民族の理念。その看板を下ろすわけにはいかないので、建前として言わなきゃいけないが、本音の部分ではかなり気持ちは遠のいているだろう。例えば年頭に文大統領は"現時点において統一は望んでいない"と明確に言った。ここまではっきり言った大統領はいないが、問題にならないどころか、皆それでいいと思っている。北朝鮮にとっても、いつ韓国に攻められるかが心配だし、まずは潰されないというのが大事。お互いが平和に共存できる構造を固めたい。そのためにも韓国は北朝鮮経済の立て直しをやらないと、どんな悪さをするのか分からんという感覚だ」と説明した。

 直近の大きなイベントとして、3月に米韓合同軍事演習が予定されているが、これまで北朝鮮は実施の中止を求めてきた。「首脳会談の提案まで出て、関係改善ができるかもしれないということになってきた。しかし今ここで米韓合同軍事演習をやれば、その希望はすぐにポシャる。韓国としては今年の分はすっ飛ばしたいと思っているはずだ。もともとアメリカとの間でパラリンピックが終わった後に再開するという合意があるわけではない。先延ばししているその間に、核問題について北朝鮮の姿勢が変わるようにしていきたいというのが文大統領の考え方。アメリカとしては実施したいが、韓国がやりたくないと言えば、アメリカとしても受け入れざるをえない。延期される可能性は高いだろう」。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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