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なぜ北朝鮮代表は"番狂わせ"ができるのか

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■「祖国のために」でやる気は段違い

また「祖国のために」というメンタルも、結果に影響しているだろう。北朝鮮では「先軍政治」などの言葉に標榜される通り、軍事を国の最重要課題としており、女性が軍隊に行くことも珍しくない。常に生活の中に生きるか死ぬかという状況が横たわっており、かつ“スポーツ英雄”になれば多大なインセンティブもついてくるとなれば、やる気の度合いは段違いになる。実際、メディアからはノーマークだった北朝鮮の女性アスリートが、世界的な大舞台で好成績を収めることは多々ある。彼女らが口々に言うのは「祖国のために、首領様のために」だ。

しかも、朝鮮半島の人々はもともと大の“負けず嫌い”である。冷戦期には、そうした愛国心や精神性に、東ヨーロッパなど共産圏のスポーツ先進国との人材交流が活発化したことにより、アジアのスポーツ大国として名をはせてきたという“伝統”もある。

北朝鮮におけるスポーツ選手の発掘・育成体制としては、「体育サークル」「青少年課外体育学校」「体育大学」「体育学院」「高等体育学校」「体育選手団(以下、体育団)」などがある。体育サークルは、運動に興味がある学生を中心に各学校で形成される、部活のようなものだ。青少年課外体育学校は、各地域にある体育館や学生会館を中心に運営されており、プロ指導者によって体系的な訓練を受けることができるスポーツクラブのような組織となっている。

一方、体育学院と各道(日本における都道府県)にある3年制の体育専門学校、そして平壌体育大学は、種目別のエリート専門訓練を受けられる英才教育機関になる。中央機関に設立された中央体育団、道内直轄市の体育団などは、エリートスポーツ機関として代表選手の育成を目的としている。平たく言えば一種の実業チームである。リョム・デオク-キム・チュシク組も、テソンサン体育団に所属している。

北朝鮮では、個人が学校の体育サークル活動などに参加しながら活動するのが一般的だが、有望と認められた際には専門的な学校に進学することができたり、各種大会に参加する機会が与えられたりする。そして最終的に、大学や実業チームの監督から抜擢され代表選手になるというプロセスを経る。

■スポーツ振興に注力する金正恩

金正恩は就任以来、スポーツ振興に力を入れてきた。例えば、13年5月には平壌国際サッカー学校を開校し、カリキュラムや名称決定に直接関与したとされている。同学校ではここ数年、全国から素質がある小~中学生を募集したり、海外サッカー監督を招聘したりしている。またイタリアやスペインへ、学生30人ほどをサッカー留学に送りだしてもいる。

種目は違えど、リョム・デオク-キム・チュシク組も、そうした環境や育成プロセスによって育てられた選手だろう。有名海外コーチのトレーニングを受けられる事実を考えても、北朝鮮の期待の星であることは間違いない。

北朝鮮代表は、冬季五輪においてはまだ実績は少ないが、今回は“地元開催”というアドバンテージもある。北朝鮮選手団がどこまで活躍するか。政治や外交問題をいったん脇におけば、とても興味深い話題である。

(在日韓国人ジャーナリスト コナー・カン 写真=時事通信フォト)

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