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「若者」には無い「大人」アドバンテージ、ご存じですか

みなさんは、「若者」と「大人」の違いといって、どういったものを連想しますか。

自由で何者にでもなれるのが「若者」で、しがらみや責任を背負って不自由になったのが「大人」でしょうか?

肉体的にも精神的にも若々しいのが「若者」で、だんだん衰えていく存在が「大人」でしょうか?

こうした連想が間違っているわけではありません。「大人」と呼ばれるような年齢・立場になれば、あれこれのしがらみや責任が伴いがちですし、これまでの積み重ねによって人生の方向性もおおよそ決まってしまっています。

また、最近は高齢でも健康な人が増えましたが、それはあくまで日々の節制や健康増進の賜物であって、不摂生でも健康でいられるのは「若者」のうちだけです。精神面でも、時代の空気や流行を捉えるアンテナの感度は「大人」よりも「若者」のほうが高いでしょう。

こういった「大人」のディスアドバンテージを思い起こして、なるべく「大人」になりたくない・いつまでも「若者」のままでいたい、と思っている20代~30代の方は、けして少なくないように見受けられます。

だからといって、「若者」のアドバンテージにしがみつこうとして「若者」を延長し続け、「大人」をできるだけ遅らせるのがベストかと言ったら、そうとも限りません。

「大人」には、「大人」なりのアドバンテージもあります。

たとえば子育てや後進の育成、コミュニティの維持といった活動は「若者」よりも「大人」のほうが向いています。「若者」は、自己成長や欲求に対してはひたむきですが、逆に言えば、自分自身の成長や欲求に貢献すること以外にひたむきになるには向いていません。自己成長や欲求に集中できるのは「若者」の特権ですし、若いうちはそうやって伸びていけば良いのですが、いざ成長が一段落して、自分以外のために何かをしようと思う段になると、「若者」的な"自分至上主義"はむしろ邪魔になります。

自由で何者にもなれるという「若者」の長所も、良いことばかりではありません。

自由で何者にもなれるということは、"まだ何者でもない"ということと背中合わせでもあります。まだ何者でもない、アイデンティティの確立していない「若者」は、それゆえ、自分が何者かであることを他人に示したり、自分自身にも言い聞かせたりするために、膨大なコストを費やさずにはいられません。

流行の商品やアプリ。
凝った趣味や思想。
見栄えの良い恋人。
たくさんの「いいね」や「シェア」。

「若者」のうちは、こういったものが必要不可欠と感じられるかもしれません。ところが、趣味も人間関係もだいたい出来上がって、アイデンティティも固まった「大人」になってくると、これらに煩わされる度合いは大幅に少なくなります。流行に疎くなってしまう一面はありますが、中年になっても流行や見栄えに一喜一憂し、「いいね」や「シェア」を求めるというのも、それはそれでキツい人生ではないでしょうか。

詳しくは拙著『「若者」をやめて、「大人」を始める。』をご参照いただくとして割愛しますが、これらに限らず、「若者」からみて短所のようにうつる「大人」の特徴が、いざ「大人」になってみると、正反対に長所として感じられるものは少なくありません。

そのうえ、若かった頃には気付かなかった人間的魅力に目が向くようになったり、コミュニケーションの機敏が磨かれたり、趣味を一層深く理解できるようになったりもするわけですから、「大人」はけっして「若者」の劣化コピーのような存在ではありません。

「若者」をやめて「大人」になるのは、そんなに悪いものではないのです。

「若者」は「大人」のアドバンテージをほとんど知らない


ところが、過去の私自身もそうだったのですが、「若者」側からは「大人」のメリットやアドバンテージがほとんど見えませんし、そういった話を聞く機会も無いのです。

同じ年頃の「若者」が集まって「大人」について語ると、どうしても「大人」について悲観的にならざるを得ません。なぜなら、「若者」はみんな、「若者」としてのメリットが失われていくことは知っていますが、「大人」としてのメリットを若いうちから知っている人はほとんどいないからです。

ならば、「若者」が「大人」のメリットやアドバンテージの話を聞く機会があるかというと……これもほとんどありません。

昭和時代には、地域社会の付き合いや職場の"飲みニケーション"といったかたちで異なる世代が接点を持つチャンスがありました。むしろ当時は、「若者」と「大人」の接点が過剰で、世代間の摩擦やストレスこそが問題だったわけですが、「大人」の生きざまを「若者」が見聞きし、「大人」になった後のメリットやアドバンテージを垣間見る機会は多かったように思われます。

ところが地域社会の付き合いや職場の"飲みニケーション"は20世紀に激減しました。第一三共ヘルスケアが2013年に行った意識調査によると、いまどきは"飲みニケーション"を敬遠しているのは若者世代ばかりでなく、40代も嫌っているのだそうです。このような世情ですから、今日、「若者」と「大人」を結びつける接点は過少で、異なる世代のライフスタイルについて見聞きして、メリットやアドバンテージを知るチャンスは減っているように思われます。

インターネットが社会の隅々にまで浸透した現代社会には、少し手を伸ばせば「若者」の彼岸に辿り着き、積極的に生きている「大人」を垣間見る機会があるようにも考えられます。しかしSNSをはじめとするネットサービス全般は、世代やライフスタイルや価値観の似た者同士を結び付けがちで、異なる時間、異なるメリットのうちに生きている「若者」と「大人」を結び付ける接点として、十分な機能をは果たしているとは言えません。

そんな状況だからこそ、「大人」のライフスタイルのメリットやアドバンテージを、「若者」が「若者」でいるうちに見知っておけるような社会装置や、いつか「若者」の季節が終わって「大人」の季節が始まることを悲観せず、積極的にシフトチェンジしていけるような知識が、どこかにあって然るべきではないでしょうか。不惑を迎えて三年目の一精神科医である熊代亨というブロガーは、今、そんなことを考えています。

「若者」をやめて、「大人」を始める 「成熟困難時代」をどう生きるか?
熊代亨
イースト・プレス (2018-02-11)
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