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望月衣塑子の「新聞記者」を読んだ

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 東京新聞・望月衣塑子(いそこ)記者の新刊「新聞記者」(角川新書)を読んでみた。新進気鋭の若い人のようなイメージがあったのだが、1975年生れの、今年の誕生日で43歳になるベテランだった。すでに2児の母で、同業の夫君と安定した家庭を築いている。まさに働き盛りの「書ける人」だと思った。

 キャリアを積む中で、大手マスコミに引き抜かれるチャンスもあったようだが、小回りのきく東京新聞にいたことで、かえってのびのびした活躍が出来ているのかもしれない。菅義偉(よしひで)官房長官が取り仕切る「行儀のよい」定例記者会見に乗り込んで、何度でも手を上げて「東京新聞の望月です」と食い下がったことで有名になった。

 だが本人の感覚では、納得できる回答がないから何度でも聞かなければならなくなるのだ。それをしなかったら新聞記者じゃないという自負がある。記者クラブが仕切って質問を事前に届けるような馴れ合いの記者会見のほうが異常ではないか。これを裏返せば、今の新聞で本来の新聞らしい役割を果たしているのは、東京新聞だけということになる。政府にとって「話のわかる」新聞ばかりになったら、ますます政府の広報機関に近づいてしまうだろう。

 私の父も昔は徳富蘇峰の下で「国民新聞」の腕利きの記者だったと聞いている。記者としてなら、どんな偉い人にも平気で会いに行くが、個人的な縁故を結んで利用することは決してなかったと誇りにしていた。その教えは、私がNHKに在職していた間に役に立った。

 また、この本では事件記者として警察から情報を貰う駆け引きも述べられていて面白かった。プロ同士が、時には協力し合い、時には騙し合いもしながら、それでも真実を求めて理解を深めて行くのだった。新聞記者は、新しい情報から事件の解決を助けることもあるのだ。

 この本を読みながら、この著者は「書ける人」だと思った。記者だから書けるのは当り前なのだが、もっと大きな問題、たとえば日本の進路はどうあるべきかといった問題についても、書いて貰いたい気がしてきた。つまり、記者としての筆の確かさはわかったから、もう一段上、つまり論説委員的な言説も聞いてみたいということだ。

 新聞記者が「よい記事」を書きたいと思うのは、この国を「よくしたい」と思うからだと私は考えている。望月記者には、これからも「よい記事」をたくさん書いてほしいのだが、その先で「この国は、どうしたら良くなるか」という提言も書いて貰いたいと思った。

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