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自衛隊が邦人退避させられない!?朝鮮半島有事の際に起きる、これだけの問題点

 朝鮮半島有事の際に問題になるであろう、在韓邦人の退避。実行を担う自衛隊はタイなどで訓練を進めているが、実は日本政府の計画には様々な問題があることが分かってきた。

 今から24年前、アメリカのクリントン政権が北朝鮮の核施設攻撃を計画、朝鮮半島有事が目前まで迫ったことがあった。カーター元大統領の電撃訪朝により話し合いが持たれ、最終的に危機は回避されたが、日本政府内では邦人退避についての十分な議論がなされないままだったという。

 当時、細川内閣で官房副長官を務めていた石原信雄氏は「朝鮮半島で事が起これば当然在留邦人を気にしなきゃなりませんし、それから韓国の人たちも相当避難してくるだろうし。しかし、それをどう受け入れるかという具体的な手順を議論するところまで至らなかった。シミュレーションできてないわけですよ。今もまだ」と話す。

 元航空自衛隊空将の永岩俊道氏も、他省庁や韓国政府との連携が不十分だと指摘する。「自衛隊の中では訓練しているんですけども、空港に邦人を集める役割は別の官庁なんです。そこと連携した訓練はなかなかできていない。残念ながら今の状況では、安全保障にかかわる具体的な枠組みを議論することすら出来ていませんので」と懸念を示す。

 現在、韓国にいる邦人は約3万8000人で、滞在中の観光客を合わせると約6万人に上ると言われている。朝鮮半島有事の際、日本政府は「不要不急の渡航中止要請」「渡航中止勧告」「退避勧告」「退避所での待機」などを呼びかけ、航空機や船舶による退避を計画しているが、空港や港までの退避は基本的に「自助努力」に頼らざるを得ないのだ。

 この日本政府の退避計画について、静岡県立大学特任教授で軍事アナリストの小川和久氏は「延坪島砲撃事件のときに、ソウルにある日本の大企業の役員から『大使館がアテになりません』と電話がバンバンかかってきた。だから前から言ってるじゃないか、と(笑)。アメリカ人は途中で荷物を盗られても、なんとか自力で空港や港まで行こうとする」と話す。

 また、航空輸送や海上輸送にも困難が伴う。自衛隊が保有する航空機をフル稼働させたとしても、一回の輸送で7300人、6万人の輸送には9往復が必要だという計算になる。

 テレビ朝日政治部で防衛省を担当する安間由太記者は「大前提は、自衛隊の航空機が行く前に民間機で極力逃げてくださいということ。どうしても残らなければならなかった人を助ける時には自衛隊が出てくるが、攻撃にも備えなければいけないので、航空自衛隊の全ての航空機を振り向けることはありえない。韓国から逃げなければいけないのは日本人だけではないし、そもそも有事に韓国の空港が安全に利用できるかわからない。滑走路の順番待ちや、空港に日本人は集まっているのかという問題もある」と指摘した。

 「海上自衛隊の護衛艦による退避がシュミレーションされていて、邦人が港に自力で集まれる段階には乗せることも可能だが、北朝鮮が急に暴発した場合、戦闘地域には行けない自衛隊による救出は難しくなる。さらに、海上自衛隊の船が韓国の港に入港すること自体ハードルが高い。韓国の港にアメリカの艦艇を接岸させ、その船に自衛隊の艦艇を横付けすれば、港に接岸したことにはならないという、"ウルトラC"の方法まで、まことしやかに囁かれている。そんな状況で、自衛隊が韓国内で中で武器を持ち、邦人を保護・誘導するのは現実的ではない」(安間記者)

 小川氏も「海上封鎖が行われていることが前提だから、避難する人を乗せた船舶と海上封鎖部隊との調整が難しい。戦闘が始まるかもしれず、海は使えないと思う。アメリカはNEOが発動されれば、軍事用を除き、韓国国内の3000メートル級の滑走路は全部アメリカが押さえ、海兵隊がチャーターした民間旅客機を使って1日あたり9000人をグアムに出す。居住エリアの集合場所から空港までは、韓国のバスやトラックを押さえていて、それをアメリカの特殊部隊が守ることになっている。日本の場合、JALやANAは乗員組合の意向もあって、危ないところには出せないだろう。アメリカと話をして助けてもらうしかない」と警鐘を鳴らした。

 そして、日本政府の退避計画について「机上のプランだと思う。米国の非戦闘員退避活動(NEO)についても、ほとんど知らない官僚が扱っている。僕が2003年にワシントンで説明を受け、官邸のトップ官僚にもブリーフィングしたことがあるけれど、やはり米国側の考えを何も分からずに変なことをやっている。たとえば米国が"船は使えない"と言っているのに"船で"とか、ソウルにいる人を釜山まで米軍に輸送してもらうとか。そんな余裕は米軍にはないので、怒っている。日本の軍隊はだめだという国民感情もあり、自衛隊が韓国国内で展開することは考えられない」と指摘。「そもそも、湾岸戦争で攻撃開始が自衛隊に伝えられたのは30分前。それも正式のルートではなく、たまたまアメリカ陸軍幹部と仲の良い自衛隊の一佐が演習の話をしているときに教えてもらい、その情報が官邸まで上がったときには攻撃が始まっていた。情報収集能力や、判断力、そして計画を可能にするような努力を政府はしなければならない」と訴えた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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