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学びはいつやめても いつ始めてもいい 羽生善治棋士



 2017年12月5日、棋士・羽生善治さんが「竜王」を奪回し、「永世七冠」の権利を手にしました。

 『不登校新聞』でも、2009年に羽生善治さんへインタビューしたことがあります。私たちは「不登校の子へのメッセージ」のほか、「七冠を保持していた当時と現在の自分はどちらが強いでしょうか」など、失礼な質問もしました。

 羽生さんからの回答は、不登校の人だけでなく多くの人に読んでもらいたい示唆に富むものだと思っています。

 そこで今回は「永世7冠記念」、そして藤井聡太四段との公式初対戦(2018/2/16)をより楽しめるように当時のインタビューの一部を再編集して公開いたします。

将棋も人生も答えはいらない

――永世七冠を保持していた20代のときと、現在の羽生さん、戦ったらどっちが勝ちますか?

 現在のほうが将棋への理解は深まったと思いますが、25歳の私と戦って勝ち越せるかということは、また別な話なんです。勝負の世界はまた別なんです。

――では20代の羽生さんと現在の羽生さんは、なにが大きな変化だったと思いますか?

 すこし抽象的な話になってしまいますが、私が20代のころは、とにかく明確でわかりやすい「答え」を求めていました。30代以降からは、いいかげんになったというか「答えなんてなくてもいいんだ」と思えるようになったんですね。自分なりにできることをやればいい。わからないことや未確定なことがあるからこそ、将棋はおもしろいんだし、そこに進歩の余地があるんだと思っています。

――対局中、勝負の分かれ目となるような重要な一手を指すときは、どんな心境なのでしょうか?

 プロになって今年で22年目になり、対局数も1000局を越えました。ある程度の経験があるので、それに基づいて判断することが多いです。ただそうすると、アクセルを踏むべきか、ブレーキをかけるべきかで迷った場合は、ブレーキを踏むことが多くなってしまうんです。「経験がある」ということは、「こうやって負けた」とか「これで失敗した」とかなどの経験もたくさん積んでいるということです。それを逃れるためにブレーキを踏みがちになってしまうんです。

 いま心がけているのは、意図的に少し強くアクセルを踏むことです。いままでやったことのない方法やリスクの高いことをしようとすることを心がけています。

――最後に不登校の子どもへのメッセージをお願いいたします。

 「学校へ行かないことに罪悪感を持たない」ということが大切だと思います。

 私は中学生でプロ棋士となり、高校に入学したものの月に10日間くらいは休んでいました。だから、なんとなく学校へ行かない人が感じている違和感とか罪悪感がわかるような気もするんです。

 また1年間だけですが、私も通信制高校に通っていたことがあります。通信制高校では、若者だけではなく、おじいちゃんや働いている人などいろんな人がいました。そういうなかで感じていたのは「学びに年齢は関係ない」ということです。

 それこそ本人の気持ちしだいで、いつ始めても、いつやめてもいい、学びとはそういうものなのではないかと思います。加えて言えば「いい学校を出て、いい会社へ」というレールも、いまの社会に本当にあるのかどうかはわかりません。

 「このかたちが絶対だ」「こうしなければ大人になれない」という答えは、やはりないんだと思うんです。

――なるほど、最初の「答えなんてなくてもいいんだ」という発言に通じますね。ありがとうございました。(聞き手・石井志昂)

2009年1月1日『不登校新聞』より抜粋/編集

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