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トヨタ最高益更新がなぜ「X(バツ)」なのか

6日、都内で開かれたトヨタの決算説明会は、会見内容も雰囲気も新鮮でした。
説明にあたったのは、1月1日に副社長・最高財務責任者(CFO)に就任した小林耕士氏です。

※トヨタの決算説明会の様子

トヨタ自動車は6日、2018年3月期の連結純利益の見通しを、従来の1兆9500億円から2兆4000億円に引き上げました。

見通し通りであれば、16年3月期の2兆3126億円を上回るとともに、日本企業としての過去最高を更新することになります。

同時に発表された17年4月から12月までの9か月間の決算は、売上げが前年度比8.1%増の21兆7969億円、営業利益が13.8%増の1兆7701億円、純利益が40.5%増の2兆131億円でした。売上げ、純利益は過去最高です。

ところが、記者会見の席上、副社長の小林耕士氏からは、以下のような意外な言葉が語られました。「2017年4~12月期の営業増益は為替の影響が大きかったことから、評価としては△(三角)、通期見通しの評価は、×(バツ)です」。厳しい評価ですよ。

最高益の見通しでも、まったく満足していないと公言したわけです。では、なぜ、手放しで喜べる状況ではないのか。

今期の営業利益は、円安効果がなければ、前期に比べて550億円の減益だからなんですね。

加えて、18年3月期の純利益の見通しは、過去最高の2兆4000億円と、従来予想より4500億円上積みされたといっても、そのうちの2919億円は、米国のトランプ政権が行う税制改革による法人減税の効果を見込んだものです。

当然のことながら、減税効果は今回限りで、一過性のものです。したがって、数字がよいからといって、まったく安心できないというわけです。つまり、この先、トヨタは自らの力で競争力を強化していかなければならないということですね。

「生産性向上の取り組みを継続、強化することで、為替やスワップに左右されない収益体制をつくらなければいけない」と、小林氏は記者会見の席上、コメントしました。

折しも、100年に一度の変革期を迎えた自動車産業は、電動化や自動運転、コネクテッドなど、次世代技術への先行投資が課題になっています。米国のIT業界の巨人たちもライバルに浮上しています。

トヨタは、自動車産業を襲う100年に一度の変革期をいかに乗り切るのか。その答えとして、会見の場では、現在、進められている二つの取り組みが紹介されました。

一つは、トヨタ“お得意”の原価低減です。

部署ごとではなく、車両目線での原価見積もり、設計面でのVA活動、各カンパニーでの技術と生産が一体になった原価低減活動、仕入先と一体になっての原価低減など、これまで以上に原価低減に力を入れていく――。

もう一つは、副社長の河合満氏が取り組む、モノづくりと技能伝承です。

※副社長の河合満氏

河合氏といえば、17年4月、初の技能畑出身の副社長就任が話題になりましたよね。中学卒業後にトヨタの企業内訓練校であるトヨタ工業学園で学んだ河合氏は、1966年にトヨタに入社し、以来、半世紀以上にわたって、トヨタの工場でモノづくりに携わってきました。

会見の席上、河合氏の口からは「心配でならん」という言葉が飛び出しました。モノづくりについて、人一倍、強い思いを持つ河合氏ならではの厳しい言葉といえるのではないでしょうか。

河合氏はなぜ、「心配でならん」と口にしたのか。

現場のIT化、ロボット化のなかで、匠の技の軽視はあってはならないと考えているからにほかなりません。

「現場を歩くと、装置がどんどんITに変わっている。機械がやってくれるという気持ちになっていることが心配でならない」
と、河合氏は語りました。

また、次のように指摘しました。
「機械を入れるにしても、なぜ、入れるのか。入れないとどういう問題が起きるのかということを理解し、しっかり“ハラ落ち”しないと問題が起きる」

今後、起こりうる変化に挑戦し、課題をやりきるには、何を置いても、まず、「強いものづくり集団」が必要であり、そして、トヨタの持続的成長のためには、モノづくりの原理原則を知る「モノづくり集団」を育てていかなければならないというのです。

最高益更新が見込まれるなかで、あえて基本に立ち返り、原価低減とモノづくり力の強化を打ち出したのは、いかにもトヨタらしい危機感といわなければならない。

小林氏は、事務作業のあり方についても触れました。
「大きな会議でも、資料はほとんどなしにしています。やり方を大きく変えています」

他力本願的な史上最高益に浮かれることなく、100年に一度の大変革の中で生き残るため、トヨタは大きく変わろうとしているんですね。

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