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残念だけど、下町ボブスレーはマーケティング的な失敗だと思う

残念だけど、下町ボブスレーはマーケティング的な失敗だと思う 2018年2月6日 ビジネスモデル, マーケティング

今朝、テレビ見てましたら・・・・

ジャマイカ、下町ボブスレー使わず 製作側は賠償請求も

委員会によると、使用しないのは五輪出場を決めた女子チーム。「スピードが遅い」「規格違反で失格のリスクがある」などを理由として挙げているという。同チームは下町ボブスレーを使い続けていたが、昨年12月からラトビア製を使い「こちらの方が速い」などと主張しているという。委員会は「(遅いという)主張に根拠はなく、規格への対応も万全だ」などと反論している。契約書に記載のある損害賠償請求を検討していることをチームに伝え、使用を求めている。

テレビだと、実際にラトビア製との比較テストを行ったとこ2秒(!!)もの差があり、選手からラトビア製を使いたいという要望が強いのだそうだ。使用するなら無料だが使用しないなら6000万位の賠償金を払う契約だったそう(ラトビアのボブスレーが300万なのに!!)で、今後、違約金の請求も考えていると言っていたが・・・

そういうの、ダサイから止めてください

としかいいようがない。いくらジャマイカチームがお金が無くてタダに惹かれて契約したとしても、それでも購入したラトビア製を使いたいというのはアマチュア選手なら当たり前だ。契約したのは選手じゃない。「負けてもいいから契約通り下町ボブスレー使え」と要求するのはかっこ悪すぎるし、世界中に技術力の無さをアピールするのと同等だ。


これ以上、ゴタゴタするのは文字通り、「恥の上塗り」です。「我々に力がなかった。ジャマイカチームにはぜひメダルを獲って欲しい」くらいのことをいうのが日本人というものです。潔さをなくしたら日本人ではない。

下町ボブスレーのどこに無理があったのか

ここからは逆に大田区の町工場にエールを送るつもりで書きます。ただ「今更言われても」「後出しじゃんけん」という風に感じるかもしれない。しかしそこ書かないと何も言えないので・・・

まずどうしてボブスレーなのか。公式サイトを見てみました。
誰もが一番思うのが、なぜボブスレーのような、マイナーで不人気な(すいません)競技を選んだのかってことです。テレビでは大田区の町工場の人が「これで話題になれば注文がたくさんくるようになると思ってた」とか言ってましたけど

たぶんそんなことはほぼない!

なぜかというと

大田区のどの技術が使われてるのかさっぱり分からない

からです。まさか下町にでかい風洞実験設備があって空力のテストが十分されているとは誰も思えないし(デザインはいまは東レ傘下の童夢だからそこの風洞使ったかも)、ボブスレーって機械部品は使われているのかなとしか思わないから。もしこれで仕事が殺到するなら2秒早いラトビアに仕事の依頼が殺到しているはずだが、たぶんそんなことない。

こうした「大田区の町工場に仕事を持ってこよう」プロジェクトを開始するなら、どこに参入するのがもっとも効果的かをきちんと精査して、競合のレベルを調べて突っ込んでいくのが正当だと思われるが、公式サイトでどんな風にボブスレーが決まったかと思ってストーリーを見たら

秋、大田区産業振興協会の職員二人がA4用紙2枚のボブスレーの寸法図を持って現れた。この下町ボブスレープロジェクトはそこからスタートしたのである。

と書いてあっただけであった。あかん・・・なんか、たまたまボブスレー感がするのです。

大田区は金属加工会社が集積しており、多品種小ロットや試作品が得意な会社が多いです。冬季の競技は道具の重要性が高く、大田区や日本の技術がPRできるのではという想いからボブスレーに挑戦しました。

というのも、「どういう技術なのか」ではなくて小ロットとで作りますみたいなのにアピールポイントが集中してます。

なんで最初に設計図なのか。書いてないだけかもしれないが、戦術の前に「この分野には我々のこういう技術が使える。こうやって参入してこのように展開していけば、このジャンルにアピールできる」みたいな戦略がなくて勝てるわけがない。

では、この下町ボブスレーにはどのように町工場の技術が使われているのかというと、写真が公式サイトにあったのでお借りします。

コレが全体の構造。赤い骨組みのシャーシは大田区のたくさんの会社が協力して作った部分だそうです。空力はソフトウェア上の開発らしいのですが、自動車メーカーは大規模な風洞実験設備を持っていて模型や実物を入れてのテストを繰り返します。私のお友達のレーシングカーデザイナーの由良拓也氏のムーンクラフトも大型の風洞を持っており、いろいろなメーカーのテストを受け付けています。サイトは私が手伝いました。ww

由良さんは空力の専門家ですが、実際のデザインはソフトだけではなくて細かい煮つめは風洞実験が絶対必要なので、大田区に風洞がないのがけっこうなハンデではないかなと個人的に・・・・・作るのは億単位かかりますしね。

大田区の町工場はどの分野に攻め込むべきなのか

いまさらですが、ボブスレーは話題作りには良かったですが、実際に仕事を取ってくるにはイマイチだったと考えます。理由は

1 そもそも日本では人気が・・・・
2 B to C案件ではない・・・・・・ほとんどの消費者が欲しい商材ではない
3 どこに技術が使われていてどこが優れているのかよく分からない
4 はっきり数値で勝ち負けの出るスポーツに参入するリスク

の4点ですが、特に3番目は重要です。たとえば昔言われた「iPhoneの鏡面仕上げに下町の技術が使われた」「極細の注射針に下町の技術が使われた」というものなら、その下町の技術はどういうものか、ブランディングできます。だから似たような仕事が持ち込まれる可能性が高い。

4でいうと、スポーツははっきりと数値化された結果が出る。ここには職人技とか、味みたいなものは関係無い。「iPhoneの鏡面仕上げに下町の技術が使われた」みたいなのはストーリーを読むとなるほどと思うが、これがどのくらい凄いのかは数値化できない。しかしこれが「ブランド」っていうものなんです。
FAQに、こんな記載がありました。

ランナー(金属)の低摩擦化技術は、風力発電などの次世代エネルギー開発には必須の要素技術であり、またボブスレーの土台は金属と炭素系素材で構成され、この技術は航空機などに採用されており、環境・航空機分野へ進出の第一歩となります。「ボブスレー」製造に参入することにより、大田区・日本のネットワークの世界的な技術信用度および開発プロデュース力をPRし、欧米市場のスポーツ案件や環境エネルギー開発、航空機産業などへ提案、受注獲得を目指します。

理想はわかるが、逆にこれで2秒も遅かったら、「技術ないじゃん」になってしまうでしょう。ここで狙うなら「いちからやろう」ではなくて「とりあえず作ってみたら凄かった」くらいからスタートしないとリスクの方が大きいわけです。更に航空機メーカーから部品発注とかはちょっと高すぎる壁を狙いすぎな気がするんですよ。

ではどういうジャンルを狙うべきなのか

「陸王」にも書いてありますよ。



まず、レースでいい成績を収めてもらい、それを見た一般ランナーがそれを買おうとする。一流ランナーはすでに履く靴は決めているので、その下を狙うみたいな感じだったかな。

これ、サーフボードだろうがスキーだろうが釣り具だろうが、スポーツ用品に共通していて、トップアマやプロは使う道具は決まっているのだ。サポート契約しているところがあったり、行きつけのショップやメーカー以外では買えなかったりする。だからトップ下、初心者より上の中級くらいをターゲットにするわけ。こういう層は

道具変えれば巧くなるかも!!

というはかない夢を漠然と持っているので(自分もだ)、新しいものや話題のものに飛びつく。高いものは高いなりに良いことを知ってるので値段にはあまりこだわらないのも「趣味命」の中級層です。こうした層は新製品の情報には非常に敏感で、ショーに行ったり情報サイトを隅々まで見たりするの。普通のメーカーが狙うのはココです。

だから自分なら、大田区といっても本当に優れた技術のある工場から、別にどってことないとこまで一杯あると思うから、そこをまず並列じゃなくて精査して、本当に優れた技術、それもコンスーマー向けの部品を作れるところに絞ってしまう。数が多ければ仕切りも大変だからです。

高くても職人手作りということで売れそうな精密機器、機械的な趣味用品なら

◎自転車
大阪府堺市周辺が昔は日本の自転車の工場が多かったが今はもう台湾一人勝ちですな
◎オートバイ
インディアンが復活したなら陸王だって復活できるだろ・・・・コピーだからダメだけど
◎EV(電気自動車)
下町発のEVってとにかくデザインが・・・なのでここだけなんとかしたら

みたいなのが一般的ではあるまいか。もちろんできるかどうかは工場精査してないのでわからない。が、レースにでも出て名前が売れたらボブスレーの比じゃないくらいの波及効果あるでしょ。

そんなわけで。ボブスレーはボブスレーでいいと思うんですが、他に「将来仕事に結びつく」を漠然とじゃなくて具体的に見据えたプロジェクトを並行して走らせないと、いよいよ本当にヤバくなってくると思うんですよねぇ・・・・。ただこのチャレンジでは普段交流のない工場同士が団結したというのが最大の戦果だと思います。それができたから次にいけるはずです。

とりあえずKindleアンリミテッドだったのでこれは読みました。

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