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週刊文春に「NO」が突き付けられた日 - 網尾歩 (ライター)

 マスコミと視聴者、両方にツッコめるのは芸人だけなのかもしれない。


*画像はイメージです(iStock/zoom-zoom)

予測検索欄では「やりすぎ」

 不倫疑惑を報じられたことをきっかけに引退を表明した小室哲哉の記者会見を受け、疑惑を報じた週刊文春が「炎上」した。これまでタレントや政治家など数々の有名人の不倫を暴いてきた文春。2016年には「センテンススプリング」や「文春砲」が新語・流行語大賞がノミネートされ、この年の「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」の大賞にはベッキーの不倫スクープが選ばれた。

 有名人の不倫を次々とスクープする文春砲を肯定的に捉える世論が強かった中、これまでも少なからず批判はあった。ジャーナリズム大賞の受賞については、少なくともネット上の一部では批判が噴出していた。「日本のジャーナリズムはずいぶんと高尚なんだね!」と皮肉る人や、「日本のジャーナリズムは死んだ」と直球で批判する人もいた。

 また、ホリエモンこと堀江貴文は2016年末に自身の熱愛疑惑が報じられたことなどから、一貫して文春を批判。記者を名指ししたり、「人間の屑の集合体」など厳しい批判を繰り返していた。

 とはいえ、今回ほど文春が批判に晒されるのは、「センテンススプリング」以降では初めてのことだろう。先日、検索欄に「週刊文春」を打ち込むと、サジェストされたのは「やりすぎ」という言葉だった。

「お前たちのことだー!」はどう受け取られたのか

 多くの人が指摘している通り、これまでの文春砲がほぼ好意的に迎えられ、今回がそうでなかった理由は、小室の「介護問題」や引退表明への同情があるのだろう。

 昨年末、ウーマンラッシュアワーが「THE MANZAI」で見せたネタが話題になった。日本ではタブー感のある政治問題に切り込み、最後は社会問題よりも不倫報道ばかりに興味を持つ「国民」を強烈に皮肉った。「本当に危機を感じなければいけないのは」「国民の意識の低さ」の掛け合いの後、村本大輔は「お前たちのことだー!」と観客席に向かって言い放った。テレビを見ている私たち一人ひとりが批判されたわけである。

 不倫なんてくだらないネタを、いつまで面白がって騒いでいるのか。「お前たち」のレベルが上がらなければ、報道(ネットスラングで“マスゴミ”)のレベルも低いままだ。村本のネタにそんな意図があったとすれば、今回の文春砲に「国民」が「No」を突きつけた動きは、一歩前進とも言えるのかもしれない。

「私刑」をけしかけてきた文春が「私刑」された

 こうなってくると気になるのは、今後、この騒動の余波が収まらぬ中で文春もしくは他の週刊誌が不倫を報道したとき、世の中はどのような反応をするのかである。「小室さんの不倫報道はダメだけど、○○ならいい」、そのような線引きが始まるのだろうか。

 “ベッキーの不倫は、これまで「いい子」を演じてきたタレントの醜聞だから面白がれた”“小室の場合、妻を介護する日常の中で起こったことであり、天才と言われたアーティストが「こんなこと」で引退するのは忍びなく、面白がれない”

 大衆の、そのときの感覚によって、「私刑」しても良いかどうかが決まる。この流れのきっかけをつくってしまったのは文春だ。そして今回のように、風向きが突然変わり、文春自身が「私刑」に遭うことがある。

 騒動後、文春の新谷学編集長は、カンニング竹山との対談の中で、ベッキーへのバッシングについて「予想できなかった」「かわいそうだと思った」と語った。この対談をAERAで振り返ったベッキーと同じ事務所である竹山は、「事前に用意してしゃべった言葉だろうなとは思いました。でも、報じた立場ならそう言うしかないよなとも思いましたね」と冷静に分析している。参考:カンニング竹山が週刊文春編集長との対談で感じた違和感(AERA)https://dot.asahi.com/dot/2018013100014.html

今後の不倫報道は変わるのか

 また、竹山は週刊誌のスクープを引用して報じるだけのテレビについて「ニュースをパクって火を付けて、油を注いで大騒ぎにしちゃった」と批判。さらに、「記事を読んでもいないし、その雑誌を買ってもいないのに、テレビで引用されるものを見て『ああでもない、こうでもない』って騒ぎ立てたのは我々視聴者であって、世間じゃないか」と続けた。

 人のプライベートに土足で足を突っ込む週刊誌、そしてその騒ぎを大きくするマスコミやネットメディアは批判されてしかるべきだが、その批判からはそれを面白がってきた視聴者も免れない。これはウーマンラッシュアワーのネタと同じ示唆である。

 ネットで誰もが発信できる時代、大手メディアは以前ほど絶対的な存在ではない。今回の文春バッシングのように、受け取り手である「大衆」は、「No」をメディアに突き付けることができる。ただしそのバッシングが権力ではなく、ただ不倫をしただけの有名人に向けられてきた過去について、どのように考えている人が多いのだろう。今後の不倫報道はあるのか、またそれについての反応を注視したい。

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