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SNSの企業アカウントはもうオワコンかも知れない。

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こんにちは、コンサルタントの重枝です。

SNS活用の相談で一番件数が多いのは「公式アカウント運用」。ここ5年間くらい変わっていないと思います。

本当はバイラルコンテンツやUGC、広告、インフルエンサーなどいろいろあるわけですが、SNSマーケティングと言えばやっぱり公式アカウントからだよね、と考えるマーケターがいまだに多いってことですね。

    ■目次
  1. 企業は公式アカウントをつい運用しがち
  2. 消費者が公式アカウントを敬遠する理由
  3. 分かっちゃいるけど、止められない公式アカウント
  4. 変わりゆく消費者
  5. 人を動かすのは人
  6. なぜ人は人で動かされるのか
  7. どのように「公式情報」っぽさを回避するか
  8. なぜ露骨にやるとまずいのか
  9. 主体性のある情報発信のパターン
  10. マーケターの役割は?
  11. 結局公式アカウントはオワコンなのか?
  12. まとめ

1. 企業は公式アカウントをつい運用しがち

マーケ担当者の立場を想像すると、公式アカウントって発想になりがちなのもよくわかるんです。

先行事例も豊富、バズコンテンツと違ってコントロールも効きやすい。インフルエンサーはなんか怪しいし、広告は広告じゃんということですね。担当者本人は違うよなぁと思っていても、こういうこと言いがちな役員なり上司なりがいるとついつい忖度してしまう。

でも、公式アカウント運用で実際に狙う効果をヒアリングしてみると、話題作りだったり、ブランド想起向上だったり、売上向上だったりするので、やっぱり他の手法に予算かけた方が効くんじゃないかということも結構多い、というのも変わりません。しかしSNSを使おうという話だけは社内で進んでいくので、何かしらみなの納得する「無難」な答えを出さざるを得ないというジレンマですね。

2. 消費者が公式アカウントを敬遠する理由

こういう時は初心に立ち返り、企業の都合ではなく消費者の立場から改めて考えてみるのが賢明なマーケターです。

まず、消費者は、公式アカウントを購買意思決定の参考にしないわけではないでしょう。ですが、企業の都合でコントロールされた情報発信であることがあからさまなわけですから、そこは一歩引いて見るというのが普通です。

いわば公式ホームページや広告のようなもの。公式ホームページや広告には、コンプラや広報宣伝、経営企画など担当部署の審査を通り、消毒され、粗のないよう加工され、丁寧にパッケージングされた「安全」な情報が並びます。

例えば就職希望者がとある企業に転職をしようとなった時、まずはその企業のことを調べます。その際、「安全」で表層的な情報ばかりの公式ホームページを閲覧はしますが、それだけを頼りに転職活動するような勇者は、今の時代なかなかいないでしょう。

では働いたことのある人からなるべく正確な情報を集めようと言っても、従業員300人にアンケートをとって統計とるわけにもいきません。実際には少数の「中の人」の情報を参照するわけです。具体的には知り合いをたどって働いている人に会ってみたり、従業員のクチコミ情報を探してみたりということになります。

3. 分かっちゃいるけど、止められない公式アカウント

マーケティングやブランド担当者の考えなくてはいけないことは、「安全」な情報をいかに作るかという話ではなく、「本音」かつポジティブな影響力を持つ情報をいかに作るかということです。

ここが歪められて、ついつい安全を志向してしまいがち。日本経済が輝いていた80~90年代(記号消費の時代)にかけてはたしかにマスメディアの一方通行のよくコントロールされた「安全」な情報でもよくモノを売ってくれました。表層的なイメージさえ整っていれば、ちゃんと憧れてくれたのです。でも、すべて過去の話です。

その時代のままのやり方で、現代でもうまく行くと思っている人も本当は多くありません。パラダイムシフトしなくてはいけないという意識も広く共有されています。でも、その抜本的な変革の旗振りを買って出る人はあまりいない、というところでしょう。

そして足踏みしている間に、コンプラだったり、(過分な妄想も含む)炎上への恐れだったり、前例主義への過剰適応だったりがその上から絡まり、がんじがらめになってしまっていているのが現状です。

そんな中でSNSマーケと言われても、社内で完璧にコントロールできる公式アカウントで発信しましょうとなってしまうのは、いたしかないのかなとも思います(実際にその制約の中でどこまで頑張れるかというマーケのコンサルもうちは結構多いです)。変わっていく状況に適応するための、妥協案です。

4. 変わりゆく消費者

しかし企業が変われなくても、消費者はどんどん変わっていく。人々は「安全」な情報よりも「本音」へ、表層的な「イメージ」よりも「リアル」な感触へとどんどん流れていきます。

もちろん「本音」や「リアル」といっても、常に裏情報が手に入るとは限りませんし、そもそもひとつひとつ、そういう情報を求めていくコストはとても高くつきます。例えば、冷蔵庫が買い替え時期なのでいい冷蔵庫はないかと「リアル」な情報を探していくと、ネットを通じ、現代では大量の情報が手に入ります。でも、大量の情報の収集、読み込み、整理だけで一日なんてあっという間に終わってしまうでしょう。

5. 人を動かすのは人

ではどうしているかというと、ここで再度「人」が登場するわけです。

さて、冷蔵庫の話に戻ると、あなたにはラッキーなことに家電マニアの知り合いがいました(とします)。相談を持ち掛けると、そんな間取りで、そんな買い物頻度で、家族はその人数ならこれがいいよ、とある冷蔵庫を奨めてくれるわけです。予算内だったら即決だし、多少予算をはみ出ていても、家電マニアくんがその冷蔵庫のチルド室のすごさを熱っぽく語ってくれたら、納得して買ってしまうわけです。

冷蔵庫は大きな買い物ですが、例えば日用品の卵にしたって、いろいろうんちくだったり、栄養価、トレーサビリティだったりで情報満載のパッケージよりも、なんか信頼できそうな農家の人の顔のラベルがペタっと貼ってある商品の方が売れていく。

ここで重要なのはその情報が本当の「本音」「リアル」なのかという真実性の証明よりも、「納得」という感情が重視されることです。究極的には自分自身に冷蔵庫リテラシーを身に着けなれば、いくら家電マニアの言っていることとは言え、その情報が真実かどうかなんて分からない。卵だって、作り手が本当に信頼に足るか、もっと言ってしまえば、そうは表示してあるけど本当に養鶏家の○○さんが作っているのかさえ分からない。

でも、現代社会は自分に必要な情報すべてに自分だけで通じることができるほど単純ではない。だとしたら、なんとなく人を信頼しよう!ということなのです。

6. なぜ人は人で動かされるのか

現代はというより、人間は昔からずっとそうだったのでしょう。よく知らない人の論理的な説得より、たとえ筋が通っていなくても、昔からの知り合いで気心が知れている人の感情的な説得の方に心動かされます。

またよく知らない人でも容姿、声、振る舞い、言葉遣い、ユーモアのセンス、表情などの曖昧な信号からその人の信頼性を(ほぼ)自動的に「感じ」とり、その印象から情報の真偽まで判断してしまう。

ロジカルに情報を解析するのではなく、ヒューリスティックに人を評価し、その評価が解析を重要度で上回る。つまり人間にとって情報は「何を言っているか」ではなく「誰が言っているのか」の方がずっと大事だということなのです。

人類の長い歴史の中では、直接見聞きできない情報よりも、人に対する印象で物事を判断した方がずっと生き残りの可能性を高めたのでしょう。現代もその方がサバイバルしやすいのかは不明ですが、少なくとも「あなたの言っていることの真偽は分からないが、言っているあなたを信じることはできる」というのは、情報入手のコストの高い過去においても、情報過多の現代においても通用する考え方ではないでしょうか。

古いマーケティング理論にも、「情報の二段階の流れ仮説」というものがあります。マスメディア研究の中で出てきた仮説ですが、ソーシャルメディアの影響の広がり方にも、ほぼそのまま適用できる理論じゃないかなと考えています。

仮説の内容は、「普通の人々(≒浮動層)」はマスメディアから直接影響を受けないが、少数のオピニオンリーダーを通じて間接的にその影響を受ける…ざっくりいうとそんなものです。

「普通の人々」は情報を積極的には取捨選択しないのですが、少数の情報通がマスメディアから大量に情報を受け取り、フィルタリングしたり解釈したりして意見を形成し、その意見が周囲の「普通の人々」に影響を与えるというわけです。

だからテレビには(一見)編集に中立的なポジションをとっている(風の)コメンテーターが、よく出ているわけで、情報そのものの解釈はうまくできないけれども、人がよさそうで自分よりもちょっとだけ頭のよさそうな誰それさんが言っているからそうなんだろうとなるわけです。冷蔵庫や卵の時と変わりません。

オピニオンリーダーはちょうどキュレーターインフルエンサーオピニオンリーダーなどの用語にも置き換えられそうなポジションの人です。中国マーケットだとKOL(キーオピニオンリーダー https://gaiax-socialmedialab.jp/post-52606/)という言葉も最近はメジャーですね。

7. どのように「公式情報」っぽさを回避するか

ではどうすればいいか。超当たり前の話ですが、ブランドのファンやその商品ジャンルに詳しい人に、「これはいいよ!」と情報を発信してもらえるようになるように、商品やサービスを徹底的に磨けばいいのです。そして発信してもらうのを待っているのもいいですが、できればそれだけでなく、情報を広めてもらいたい人に、スマートに嫌味なくアプローチしましょう。

アプローチした結果でも、勝手に商品を発見してくれた結果でもいいですが、うまい具合に磨き抜かれた商品・サービスに感動してくれた人は、主体的なインフルエンサー(アンバサダー)となって、積極的に商品を売り込んでくれやすいでしょう(NPS調査が役に立つのもこういう理屈でしょう)。なんなら「#NotSponsored」「#ステマじゃない」なんてハッシュタグまでつけて熱狂的な投稿をしてくれるかも知れません。

そもそも、これはアパレルやコスメ業界なんかでは昔からある手法ですね。芸能人などに商品を送って、気にいってもらえたら、その人からのクチコミだったり、あの人も使っているというブランド向上を狙うというやり方です。さらにその昔は貴族だったり、大名だったりに絵だったり茶器だったりを贈呈して市販品の値を吊り上げるというようなマーケティングも行われていたというので、手法としては古典中の古典とも言えます。

ネット時代になってからは「商品あげるから、気に行ったら投稿してね」と、商品をもらってもらう人を募集する手法も増えています。

ただし、これらはあまりに露骨にやるとちょっとまずいのです。

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