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すべて「海賊版」のせいなのか?

先週、日経紙に、「出版、砦のマンガ沈む」という見出しの衝撃的な記事が掲載された。

「出版科学研究所は25日、2017年の出版市場が前年比7%減の1兆3701億円だったと発表した。前年割れは13年連続で市場はピークの半分に縮んだが、関係者を驚かせたのはその内訳だ。最後の砦(とりで)の漫画単行本(コミックス)販売が13%減と初めて2ケタの減少に沈んだのだ。」(日本経済新聞2018年1月26日付朝刊・第13面)

長らく“出版不況”と言われながらも、これだけは大丈夫だろう、とばかりにコンスタントに売り上げを稼いでいた「マンガ」。

書店から法律書が消えても、コミックコーナーだけは良い場所をキープし、時には面積を拡大してまで残っている、という光景もよく見かけた。

それがどこの取次ぎも通年で、1〜2割近い減少幅にあえいでいる状況とは・・・。

自分は、「マンガ本を買ってもらえない子供」だったし、自分で買えるような年頃になっても、違う方向にお金を費やしていたから、音楽や一般の書籍と比べるとこの分野への思い入れは希薄なのだけど*1、それでも、激しい右肩下がりのグラフを見てしまうと、いろいろと思うところはある。

気になったのは、この記事の中で、落ち込みの原因として「苦境の背後には急速にはびこり始めた海賊版サイトの拡大がある。」という理由が取り上げられていること。

確かに、最近は、リンクを張りまくったいわゆるリーチサイトとセットで、派手なコミックの海賊版サイトがあちこちに出現しているようだし、一部摘発されたと言っても氷山の一角に過ぎないことは十分承知している。

ただ、「音楽」もそうだったのだが、売り上げ減少の原因が専ら「海賊版」、という考え方に陥ってしまうと、どうしても本質的な変化が見えなくなり、結果的に、権利保護が強化されたとしても、“蟷螂の斧”状態に陥ってしまうような気がしてならない。

漫画単行本の売上が落ち込み始めた3年くらい前、という時期は、スマホ向けの電子版コミック閲覧アプリが広く普及し始めた時期ともかさなっている。

そして、それまで、書店に足を運んで買う、「別格」のコンテンツだったマンガはスマホの一コンテンツになり、プラットフォームの上でゲームや音楽、その他の娯楽系アプリと競合する立場に置かれることになった。

紙が電子に入れ替わっても、それまで「コミック本」を買ってくれていた人が、全員アプリユーザーに移行すればここまでハレーションが大きくなることもなかっただろう。

それが、娯楽アプリ間の競り合いの中でいつしか競争力を失い、一種の「マンガ離れ」に近いような状況まで創り出してしまったことで、純粋に「売り上げ減」という現象が顕在化してしまった。

マンガに関心がある人が減り、売上も減ったことで、これまでにぎわっていた町の本屋さんが次々とお店をたたんでいく。

そうなると、街を歩いていて「マンガ」に触れる機会も自ずから減り、ますますマンガが売れなくなる・・・。

そんな悪循環の中で、コミックが簡単に費消され、忘れ去られるコンテンツになってしまっているとしたら・・・?

「海賊版による被害」なんて、まるで本質的な話ではないように思えてしまう。

落ち込んだ、といっても依然1700億円の市場。そして今でも、紙で、電子版で、マンガを買い読みふけることに快感を抱く人々は多数存在する。

そんな時だからこそ、コミック業界にとって最大のショールームである「街の本屋」を守り、コミック少年・少女、そしてその記憶を胸に「大人買い」する人々の系譜をつないでいかないといけない時期に来ているのではなかろうか。

そして、コミックの売上に会社の浮沈がかかっている出版社が、矢面に立って、自ら「売る」ための仕掛けの場を作り、守っていくことにより、初めて守られるものも多数あるような気がしてならないのである。

こんな時代だからこそ、一見時代錯誤的な、でも思い切った“蛮勇”に期待したい。

*1:「マンガ」の記憶としては、自宅の近所の書店で立ち読みにふけった記憶や、ネットカフェで夜な夜な“まとめ読み”した記憶ばかりで、コンテンツとして「購入」した記憶は思いのほか少ない。

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