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子供が30年前のキョンシーにハマる理由

 なぜ小学4年生のお気に入りのドラマが1988年放映の「来来!キョンシーズ」なのか――。博報堂生活総研が子ども(小4~中2)を対象に調査した結果、自分の生まれるずっと前の作品を楽しむ子どもが増えていることがわかった。そうしたコンテンツとどこで出会うのか。博報堂生活総研の十河瑠璃研究員が考察する――。(第6回)

■意外なコンテンツを楽しむ子どもたち

博報堂生活総合研究所は昨年、子ども(小4~中2)を対象とした大規模調査「子ども調査2017」を実施しました。この調査は20年前の1997年から同じ調査設計、項目で実施されている長期時系列データ(ロングデータ)です。3回目となる今回の調査では、物心のつく頃から自由にインターネットを使える環境にある子どもたちは、「基本的にはタダ=無料で十分」という価値観をもちつつあることが見えてきました。連載第6回は、そんな“タダ・ネイティブ”世代の特徴を、「コンテンツ選び」の面から考えます。

私が子ども時代を過ごした1990年~00年代初頭、子どもにとってのコンテンツの情報源は主にテレビや雑誌などのマスメディアでした。テレビを通じて、安室奈美恵やモーニング娘。といった旬のアーティストやアイドルの情報を誰もが追いかけていました。

しかし、「現代っ子」は事情が違うようです。98年の調査開始以来「流行に関心がある」「流行を人より早く知りたい」「流行を人より詳しく知りたい」という子は一貫して減少しています。代わって目立つようになったのは、「そんなものまで、よく知っているなあ」と思うような幅広いコンテンツを楽しむ子どもたちの姿です。

家庭訪問調査で話をうかがった小学4年生の男の子は、西野カナなどの今どきのアーティストを好む一方、「来来!キョンシーズ」(1988年放映のテレビドラマ)や沖縄県出身のアコースティックバンドBEGINのファンで、YouTube(ユーチューブ)で動画を繰り返し見ていると話していました。


(上)よく見る動画はレコメンドされるので、そこから探す(下)友達と互いの好きなことを教え合う

また、こうした傾向はこの子に限ったことではなく、00年代初頭から成人のファンに根強い人気があるゲームシリーズ「東方Project」は、ファンの若返りが進んでいて、今年の人気投票では10代の参加者が4割を超えました。同人誌即売会の「例大祭」でも、10代と思しき若い参加者が増えているそうです。いずれも10代の子どもたちが生まれる前に流行したコンテンツですが、こうした変化の背景には、何があるのでしょうか。

■コンテンツの入り口は「あなたへのおすすめ」

タダ・ネイティブたちはインターネットでどのようにコンテンツを選んでいるのでしょうか。家庭訪問した子どもたちに特徴的だったのは、レコメンド機能を大いに活用していることです。

たとえば、小学5年生の女の子に「よく見る動画を教えてほしい」とお願いしたところ、タイトルなどを検索するのではなく、「あなたへのおすすめ」から該当の動画を探していました。小学6年生の男の子も、「今見ている動画の関連動画に飛んで、そのまた関連動画に飛んで……」と渡り歩いているうちに、何時間もユーチューブを見続けてしまうといいます。


(上)東方ファンの作った二次創作アニメをユーチューブで見る(下)銀河鉄道999のグッズを部屋に飾る

また、友達からのレコメンドも大きな役割を果たしています。ネット上に多くの無料コンテンツが存在することで、友達との「教え合い」は、マンガや雑誌の「貸し借り」に比べて非常にやりやすくなりました。

ある中学2年生の女の子は、部活の友達と「趣味を分かち合う」という名前のLINEグループを作り、お気に入りの動画や画像、ウェブサイトなどを教え合っているそうです。このグループには色々な趣味をもつ子がおり、それぞれが「(アニメなどの)二次元担当」「(アイドルなどの)三次元担当」として写真や動画をシェアしています。かつては排斥の対象になりがちだった「オタク」も今や市民権を得ており、むしろその分野に詳しい人として一目置かれているのです。

インターネットでは大量の情報に無料で接することができます。子どもたちは大人にくらべて前提となる情報が少ないため、「あなたへのおすすめ」などのレコメンド機能を使ったり、友達に「こんな面白いものがあるよ」と教えてもらったりするほうが、お気に入りのコンテンツを簡単に見つけることができるのでしょう。

■「古いものはダサい」はもう古い

インターネットが広く普及するまでは、コンテンツの発信源はマスメディアしかありませんでした。それゆえ、誰もがマスメディアの発信する最新のトレンドを追いかけ、それが友達とつながるための共通言語になっていました。

しかし、いつでも気軽にネットを使えるようになった今、そうした前提は崩壊しています。前述の「来来!キョンシーズ」が好きな小学4年生の男の子は、「古くてダサい」「古臭い」というネガティブなイメージは一切持っておらず、「昔からある動画で、面白いから何度も見ている」といいます。

[ブログで画像を見る]

古いコンテンツであっても、それに初めて触れる子どもたちにとっては新鮮に感じるものです。またそれ以上に、タダ・ネイティブたちは最新の作品からとてつもなく古い作品までそろうネット上のデータベースに慣れ親しんでいるために、面白さに新旧は関係ないことを実感しているのでしょう。「古いものはダサい」という感覚が古いのです。

また、新しいか古いかだけでなく、公式か非公式かもあまり気にしません。東方Projectは、ユーチューブにあがっている二次創作作品をきっかけにファンになる子が多く、原作を知らずに二次創作作品だけを楽しんでいる子も多いそうです。

またある子は、アニメのテーマソングの替え歌動画ばかり見ているそうですが、原作のアニメが好きなわけではないといいます。タダ・ネイティブは、コンテンツを「自分にとって面白いか、面白くないか」という非常にフラットな視点で捉えているのです。

■「昔からある商品」にも勝機あり

タダ・ネイティブたちは、余計な先入観をもたず、自らの感性で古いコンテンツに新しい価値を見つけ出すことが得意です。中学2年生の男の子は、昨年公開された映画『ゴーストバスターズ』のリブート作品で1959年型キャデラックを知り、あまりにカッコいいので試乗会で走っているところを撮影したと、自慢げに写真を見せてくれました。

このように、大人が「これは古いから、若い子には受け入れられないだろう」と思うものでも、現代を生きる子どもたちにとっては新鮮で魅力的に映るものがあるはずです。昔からあるコンテンツや商品も、子どもたちが自由な発想で楽しめる形で接点をつくることができれば、大人の想像もしなかった価値を生み出す可能性があるのではないでしょうか。

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十河瑠璃(そごう・るり)
博報堂 生活総合研究所 研究員。2013年博報堂入社。博報堂DYホールディングス及び博報堂DYメディアパートナーズにて経理業務に従事し、2016年より現職。生活者の消費動向や子どもの意識・行動変化の分析に携わる。 
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(博報堂 生活総合研究所 研究員 十河 瑠璃)

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