記事

「ウーマン村本にはまた朝生に出てもらいたい」田原総一朗インタビュー

BLOGOS編集部
今年元日の「朝まで生テレビ」で、憲法9条2項を「読んだことがない」と発言し、東京大学大学院の井上達夫教授から「無知を恥じなさい」と批判されたウーマンラッシュアワーの村本大輔さん。井上教授の指摘に対して「視聴者の代表だから」と逆に開き直って、炎上する騒ぎになったが、司会の田原総一朗さんはどう見ていたのか。番組のテーマだった「平成という時代」の評価と合わせ、話を聞いた。【田野幸伸・亀松太郎】

村本は「みっともないこと」を堂々と言える

BLOGOS編集部
昔の朝生は、大島渚や野坂昭如や小田実のように「絶対に政府反対!」という単純な主張をどーんと言い続ける論客がいたけど、いまはいなくなった。下手すると、専門家同士の難しい議論をしているだけになってしまう。

村本みたいな人が出てきて、そういう流れをぶち破るのはある意味、面白いかなと思っている。村本の態度に対しては賛否両論で、小林よしのりのように怒っている人もいる。

井上さんは、村本を怒りながらも「村本みたいな出演者がいてもいいんじゃないか」と思っているのではないか。僕も、村本のように「自分は無知だ」とはっきり言うような人間がいたほうがいいかな、と思っている。

最近はみんな保守化していて、「みっともないことを言いたくない」という人ばかりだ。村本は「みっともないこと」を堂々と言える。そこは面白いかな、と思う。

毎回出てもらいたいとまでは思わないけれど、また朝生に出演してもらう可能性は十分にある。

日本の安全保障の転機になった「湾岸戦争」

Getty Images
朝生の元日スペシャルでは「 “平成30年”日本の未来」と題して議論した。今年は「平成」の最後の年だ。平成という時代について、考えてみたい。

平成が始まったのは1989年。その年の12月、地中海のマルタ島でブッシュとゴルバチョフの米ソ首脳会談が開かれて、第二次世界大戦後ずっと続いてきた冷戦が終わった。

同じ年、ドイツで「ベルリンの壁」が崩壊したり、中国で民主化を求める学生たちのデモを軍が強引に制圧する「天安門事件」が起きたりと、時代の節目を象徴する事件が相次いだ。

冷戦の終結を受けて、元首相の中曽根康弘さんは僕に向かって「これは神が人類にくれた休暇の時間だ」と言った。でも、休暇は長く続かなかった。

今度こそ世界が平和のために協力し、努力すべきだと思っていたら、翌年に湾岸戦争が起きた。イラクのフセインが隣国のクウェートに軍隊を侵入させたのに対して、米国を中心とする多国籍軍が攻撃を仕掛けたのだ。

冷戦時代は、米ソの利害が衝突して、国連安保理では何も決められなかったが、初めて国連安保理で米ソの意見が一致した。クウェートからイラク軍を追い出そうと、イラクへの武力行使を容認する決議がなされた。

当時の日本政府は海部内閣で、「日本も国連に参加しているから、自衛隊を派遣すべき」という意見があった。たとえば、自民党幹事長の小沢一郎は「派遣すべきだ」と主張していた。しかし野党はもちろん、加藤紘一、野中広務、梶山静六など自民党内でも反対する声が強く、結局、自衛隊を派遣しないことになった。

その代わり、日本は多国籍軍に対して、130億ドルの資金協力をすることにした。しかし、日本は金を出すだけで人を出していないという批判を浴びた。戦争終結後に、クウェートが米国の新聞に感謝の広告を出したとき、日本の名前が入っていないということもあった。

これを契機に「金だけでなく、人による国際貢献をすべきだ」という論調が高まっていった。必要に応じて、自衛隊も海外へ出ていくべきだ、と。

安倍首相まで誰も言い出さなかった「憲法改正」

Getty Images
そのような流れを受け、海部内閣の後を継いだ宮澤内閣で、PKO(国連平和維持活動)法案が可決された。これによって、自衛隊が海外に派遣される道が開かれたが、PKO5原則により、自衛隊は戦闘に参加しないことになっており、汗は流すが血は流さないということだ。

派遣される場所も、紛争地帯ではなく「紛争が終わった地域」へ行くことになっている。昨年、スーダンでのPKOをめぐって、稲田防衛大臣が「武力衝突はあったが、戦闘行為はなかった」と苦しい答弁をしたのも、PKO5原則による縛りがあるからだ。

平成初期の湾岸戦争をきっかけに、日本政府は初めて、安全保障とは何かを考えざるをえなかった。しかし安倍内閣になるまで、自民党の歴代首相は憲法改正に本気で取り組もうとしなかった。

宮澤喜一さんがあるとき、僕にこんなことを言った。「日本人は自分の身体に合った服を作るのは下手だが、押しつけられた服に身体を合わせるのはうまい」と。

「自分の身体に合わせた服を作ろうとした」というのは戦前のことで、満州事変、日中戦争、太平洋戦争をやって失敗した。一方、「押しつけられた服」とは、日本国憲法のことだ。日本は戦後、アメリカから押しつけられた憲法を逆手に取って、アメリカの戦争に巻き込まれないようにしてきた。ベトナム戦争のときも、イラク戦争のときもそうだった。

だから、誰も憲法改正を本気で言い出さなかった。ところが、安倍首相になって初めて、憲法改正を言い出した。現在の安倍首相の考えは、9条1項と2項はそのままにして、憲法に自衛隊を明記するという案だ。

これに対して、自民党の中には、石破さんをはじめとして「矛盾する」という指摘がある。9条2項で、日本は「戦力を持たない」「交戦権を持たない」と定めていながら、自衛隊を明記するのは矛盾ではないか、と。

実は、矛盾していることは、安倍首相もわかっている。本来は9条2項を削除すべきだが、「9条2項削除」というと、公明党が反対する。仮に、希望の党なんかを強引に巻き込んでやったとしても、国民投票で否決される。そうなるのが怖いから、矛盾を承知でこういう方針を打ち出している。

安倍首相の本音は「1度、憲法改正すれば、その後、2度、3度改正するのは簡単だ」というわけだ。

安全保障をまともに考えている政治家はいない

平成の時代になって、日本は安全保障の問題と真剣に向き合わないといけなくなったが、もう一つ大きいのは、戦争の形が変わったことだ。米ソ冷戦の終結で、超大国同士の戦争の危機は去ったけれど、テロとの戦いが始まった。

象徴的なのは、2001年の9.11。ニューヨークの世界貿易センタービルやワシントンのペンタゴンが、大規模なテロの攻撃を受けた。その後も、世界各地で自爆テロが続発している。

日本でも、テロにどう対応するかが大きな課題になっていて、秘密保護法や共謀罪もテロ対策を名目に成立した。

実のところ、安全保障を真剣に考えようという政治家はまだ出てきていない。多くの政治家は、アメリカが「戦争放棄」の憲法を押しつけたんだから、日本の安全保障に責任を持ってくれよと思っている。なんとなくアメリカが日本を守ってくれるだろうと考えているのだ。

だが、もし米軍が日本から撤退したら、どうするのか。実際、トランプは大統領選挙のとき、「米軍は日本から撤退する可能性がある」と言った。しかし、大統領に就任したあとは、幸か不幸か、むしろ日米同盟の強化が進んでいる。

そんな状況だから、日本の政治家は「当分はアメリカと組んでいけばいいのではないか」と考えている。結局、日本の安全保障をどうするか、まともに考えていないのだ。

はたして、平成が終わっても、その姿勢は続いていくのか。

強烈な個性だった評論家の西部邁氏

共同通信社
そして1月21日、評論家の西部邁氏が亡くなった。とてもショックだ。昨年の10月にラジオ番組でご一緒したのだが、奥さんが亡くなって、自分も体調が悪く歩きにくいと言っていた。とてもラジカルな人で、「民主主義は危険だ、民主主義がヒトラーを生み出した」などとはっきり言える人は他にいなかった。

僕とは考え方は違うが、人間としては信頼していた。強烈な個性が亡くなったのはとても残念である。

あわせて読みたい

「村本大輔」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    日本が世界第4位の移民大国な訳

    ビデオニュース・ドットコム

  2. 2

    翁長氏が後継指名 玉城氏出馬へ?

    田中龍作

  3. 3

    客離れに苦しむ鳥貴族の戦略ミス

    MONEY VOICE

  4. 4

    翁長氏の治療批判する記事に苦言

    中村ゆきつぐ

  5. 5

    容疑者脱走 取材班に住民が迷惑

    NEWSポストセブン

  6. 6

    石破氏に軽減税率の阻止を期待

    おときた駿(東京都議会議員/北区選出)

  7. 7

    すぐそこに迫る脱・現金化の大波

    MONEY VOICE

  8. 8

    麻生氏サマータイム論はデマカセ

    赤木智弘

  9. 9

    愛子さまにボーイフレンドのお噂

    SmartFLASH

  10. 10

    勝利優先で生徒追い込む高校野球

    文春オンライン

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。