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ルポ・生きづらさを感じる人々12 性行為なしの援助交際を続ける理由はどこにあるのか~沙英の場合

「公正公平であるべき行政のあり方が歪められた」。そう話したのは前文部科学省事務次官の前川喜平氏だ。加計学園をめぐる一連の疑惑を野党側が追求するきっかけともなった発言だ。その前川氏が新宿・歌舞伎町にある「出会い系バー」に通っていることを読売新聞が記事にした。

この報道に伴い、前川氏の買春疑惑も出たが、話に出てくるのは、性行為なしでお小遣いをあげる「パパ活」的な援助交際だけだった。前川氏の目的は“貧困調査”であったとも語られている。パパ活、援助交際は、よく貧困問題とセットで語られたりする。しかし、貧困な家庭に育った女性だけがするわけではない。

ネットで最初の出会いは「虐待」がキーワード

日経新聞電子版(1月10日)によると、「交流サイト(SNS)などで知りあった相手と食事や買い物をして小遣いをもらう『デート援助交際(援交)』が女子中高生の間で広がっている」という。しかし、こうした形の援助交際は今に始まったわけではない。

西日本在住の長戸沙英(22歳、仮名)は中学生の頃から、出会い系サイトなどを通じて、援助交際をしている。とはいえ、性行為は伴わない。今で言えば、JKビジネスとか、パパ活というのかもしれない。パパ活というと、経済的に困っている女性がしている印象もあるが、沙英の場合は事情が違う。

「中3のちょっと病んでいたときに、虐待をテーマにした電子掲示板にアクセスしたんです。なぜか覚えていませんが、虐待のキーワードで検索したんです」

沙英の「病み」は言語化できるものではなかった。中学生の思春期なら誰もが考えるような悩みだったのかもしれない。6年前、初めて筆者にメールをくれた時にはすでに高校2年生だったが、その数年前から筆者が運営する虐待掲示板に書き込みをしていた。

そんなときに、掲示板で出会った20代後半の男性がいた。その男性もやはり、虐待の当事者として悩んでいた。同じ悩みを持つものとして、共感し、メールのやりとりを楽しんでいた。

性行為なしの援助交際を中学生の頃からしていた
沙英(仮名)

「フリーのアドレスでやりとりしていました。お兄さんのような存在で最初は信頼していました。そのため、『遊ぼう』と言われたときも、特におかしいとは思いませんでした。楽しくしゃべりたいと思ったんです。私的には話を聞いてくれた、よき相談相手だったんです。お兄ちゃんのようでした」

男性は横浜在住だった。沙英が住む西日本とは遠い。しかし、男性はわざわざ沙英が住む県にやってきた。男性は黒髪で、インテリ風に見えたという。その日は、事前に約束していた水族館に行くことになった。

「水族館までは楽しかったです。問題はその帰り。もっと話したかったのか、男は車の中で『ホテルに行こう?』と言い出したんです。そのため、私は『そんなことせんと言ったやん』と返しました。でも、押し倒されてしまったんです。私は恐怖心のためか、動かずにいたら、男はなぜか途中でやめたんです」

経済的には裕福で、両親の仲もいい。援助交際に興味があった....

沙英は「最悪!」と怒った。男性は「ごめん。でも、妹以上の感情が生まれてしまって....」と言い訳をした。そして、なぜか、五千円を沙英に手渡した。口止め料なのか、あるいは謝罪の気持ちなのかはっきりしない。その後、沙英はこの男性と二度と会ってない。初めてネットで出会った男性から性暴力の被害を受け、嫌な思いをした。そのため、もうネットでの出会いが嫌になってもおかしくはない。しかし、沙英は高校生になっても出会いを求め続ける。

「家は経済的には裕福だった気がします。それに両親とも仲が良かったです。いじめや虐待などを受けていたわけでもありません。同級生が援助交際をしていたので興味がありました。高校生のときは禁止されていたのでバイトはしていません。でも、服やアクセサリーが好きだし、お金は欲しかった」

一番最初に、性行為なしの援助交際として出会ったのは、30代の男性だった。アニメが好きだったのか、車内でかかる曲はすべてアニソンだった。しゃべって、おさわりだけの行為で、五千円をもらっていた。

「時間を決めているから我慢できました。触られている間、心の中は無。何も考えないようにしました。終わると、『最悪!』って思っていました。この男性とは月2〜3回会っていました。現金以外には、欲しいものはねだっていたかな」

その後、添い寝をすることで数万円をもらうこともできた。

信用できる人には個人情報を教え、会ったことのない男からもお金が振り込まれる

高校時代もネットでの出会いは続いた。その中でも思い出深い相手がいる。50代の男性だ。高校3年生のころから今でも月1回はあっている。会って食事と話をするだけだ。それで五千円をもらう。

「この人は、先にお金を渡されるので信用できました。私の本名も今の職場も教えています。話は、出会った時期が時期だったので、進路の話が多かったですね。今も仕事の話をしています。スキルアップの話とかですね。それに、その時の要望も言います。現金以外にも、『きょうは〜したい』って。なんでも話せますが、友達とも違います。真面目な感じの男性で。そういえば、相手のことはあまり知らないですね。今で言えば、パパ活かな?」

不思議な出会いもある。中学生の頃、60代の一人暮らしの男性とネットを通じて知り合った。しかし、彼とは今に至るまで一度も会ってない。

「その人は女性経験がない独身です。なぜか、会ってもいないのに、好いてくれています。そして、お金を口座に振り込んでくれます。そのため、名前も住所も教えています。なぜ教えたか?その人は安全かな?と。根拠はありません。でも、なんでも買ってくれます。洋服の通販サイトの情報を伝えると、段ボールいっぱいの洋服を送ってくれます。中高の頃は怪しまれないように郵便局留めにしていました。母親はお小遣いで買っていると思っているのか、不思議には思われませんでした。昔は電話もしていましたよ。ただ、最近は疎遠になったかな」

落ち込んだときに『大丈夫だよ』と声をかけてくれる人が欲しかった

こうした出会いがあったため、沙英にとっては「プラマイゼロ」だったというのだ。それくらい病んでいたというのか。援助交際でも性暴力の危険もあったが、暴れれば、性行為を拒否できたという。殺される心配も感じなかった。

ただ、援助交際に興味があったというだけで、多くの男性に会い続けられるだろうか。他の理由はなかったのだろうか?

「友達には自分をなかなか見せられないんです。一人になったときにほっとする。彼氏もいない中、落ち込んだときに、『大丈夫だよ』と声をかけてくれる人が欲しかった。友達とは遊んでいて楽しいけど、それだけの存在でしたね」

「学習面では高校時代にクラスで一番になったことはあります。ライバル視していた女の子がいて、お互い負けたくなかったんだと思います。高校1年のときは委員会の委員長をしており、高校3年のときは学級委員もしていました。いい子のように見えますが、『就職に使える』と思っていたんです。大学には行くとは思わなかったのかって?心理学を勉強したいと思ったんですが、心理学では就職が厳しいと聞いたし、実際の大学生を見たら、行きたいとは思えなかったんです」

関係した男が逮捕され、警察から電話がかかってきた

ただ、18歳未満と援助交際をしている男性は、沙英との関係では性行為がなかったとしても、児童買春をしている可能性が高い。実際、20歳のとき、高校時代に援助交際をしていた男性が逮捕されて、警察から電話がかかってきたことがある。

「縁は切っていたんですが、連絡先に私の名前と電話番号が載っていたというのです。その男は細かくメモをしていたようで、女性警察官から『この人のメモにはこう書いてある』『なんでも話して』『どういうことをしたの?』と言われました。私は『話しただけです』と言ったんです。本当にゲームセンターで30分ぐらい話をしたくらいでした。女性警察官に『なんでしたの?』と聞かれたんですが、『病んでいたから』と答えました」

このとき実は母親と一緒に警察に出かけている。警察で事情を聞かれたために、母親にバレたかもしれないと思ったという。たしかに、こんなときに親は何を話せばいいのか。説教をしてしまう親もいるだろうが、それでは子どもは話を聞かないだろう。バレているのかどうかはあやふやで、母親は何も言ってこなかった。

被害者意識はない。止めようと思ったこともあるが....

18歳未満で援助交際をしている場合、警察統計では「性犯罪の被害者」として扱われる。児童買春禁止法違反だからだ。しかし、私が取材する多くの当事者は「被害者」という意識はほとんどない。沙英も被害者意識はない。

「“買われた”という意識も、“売った”という意識もないですね。出会えて良かったと思っています」

ただ、援助交際を止めようと思ったこともあった。そのとき、信頼できる男性に話を聞いてもらっていた。

「その人に『援助交際をする』と伝えると、止めるんです。私は反発してしまいました。なぜ伝えたかというと、もし危ない目にあったら、助けてもらおうと思っていたんです。生きる手段ですね。でも、そんな人からもキスをされたんです。信頼していたのに....」

結局、今でも、援助交際同様の行為は続けている。

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