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デジタル・ヒューマニティーズの講演が面白かったのでまとめる

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 そして、「文体を決めるのは時代やジェンダー」については、マシュー・ジョッカーズ『マクロアナリシス』が紹介される。これは、「文体は何によって決まるか?(作家、時代、国、ジェンダーetc...)」を計量文献学的にアプローチしたものだ。

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 コンピュータを使ったテクスト分析(テキストマイニング)をすることで、「文学作品を読む」ことから離れたところから新たな発見を得ることができる。19世紀英国の小説を読み込ませ、「教養小説」「ゴシック小説」などのジャンルを自動分類させたり、使用語句におけるジェンダーの差異があるかの仮説を検証する。さらには文章からジェンダーを当てるといった試みがなされる。結論からすると、文体に影響を与えるのは、「作家」「時代」「ジェンダー」が大きい一方、「国」「ジャンル」は低いらしい。

 イメージとしては、GoogleのコンコルダンスのNgram Viewerが近いかも。これまでに出版された全書籍のおよそ4%にあたる500万点以上の書籍データから約5000億もの語句を追跡することで、時系列に観た言葉の使用頻度の推移を可視化する仕組みだ。この横軸(時間)に相当するものをあれこれ変えることで、新しい読み方ができそう(もはや、「読み」ですらないのだが)。

 こうした紹介のなかで、面白い学会の変化を知った。それは、「文学との違和感」だという。昔は、文学をするということは、一人で作品を読み、一人で論文を書くやり方だった。しかし、今では一人ではなく、「チーム」になっているという。つまり、方向性を考えデータを解釈をする文学者(統計学者?)と、その方向性をコードで実装しデータ化するエンジニアで構成されている。学会の発表者も、昔は一人だったのが、今は一人が発表し、技術的な質疑にはエンジニア(チーム)が答える風景になっているという。「文学は一人でするもの」ではなくなっているようだ。

 以上、3つのトピックスを紹介したが、他にも興味深い話が大量にある。わずか165行のコードと地名の外部ファイルを元に生成された小説『ワールド・クロック』の話や、計量文献学として村上征勝『シェークスピアは誰ですか?』やベン・ブラッド『ナボコフの好きな色は藤色』(Ben Blatt ”Nabokov’s Favorite Word Is Mauve”)、「同じ雑誌・同じ号に載った詩人=強い相関」という判断で文学世界のコミュニティのネットワーク図を構築するホイト・ロング『霧と鉄』の研究、何がハイク(≠俳句)かを大量データ分析によりパターン認識させる試みなど、どれも楽しそうな遊びばかりなり。

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 もちろん、デジタル・ヒューマニティーズについて、批判もあるという。ビックデータ解析といういわゆる流行に乗って、教授のポストやテニュア(終身雇用資格)、研究資金を確保するための方便なのではという批判や、単なるデータの寄せ集めと「知」の混同をするのではないかという懸念などだ。

 講演を聴講して良かったのは、わたしが抱いている疑問、メタ・デジタル・ヒューマニティーズの可能性についてもヒントが得られたことだ。あるデジタル・ヒューマニティーズの成果をAIに読み取らせ、別の方向性を探る方法だ。

 たとえば、古典文学をAIに食わせ、コピーされた作家性から「古典の新作」を著す試みがある。スタニスワフ・レム『ビット文学の歴史』では、ドストエフスキー・シミュレータからドストの新作が書かれ、それを読んだAIが評論を書き、さらにその評論を別のAIが読み討論する世界が描かれている。そんな可能性を質問したところ、レムの『一分間』に想を得て、『ワールド・クロック』の小説を書くコードのアイデアが生まれたのだというお返事をいただいた(おそらく『主の変容病院・挑発』所収の「人類の一分間」のことだと思う、ぜひ読んでみたい)。デジタル・ヒューマニティーズの可能性は、SFにありそうだね。

 何千年も営々と続けられてきた、作品を創造する、それを受け取る行為の根底に、何か無意識の構造があって、それを上手くすくいとり、可視化することで、「人間とは何か」に迫る。そのためのアプローチとして、デジタル・ヒューマニティーズは、これからもっと面白くなっていきそうだ。

 最後に。秋草さん、たいへん面白くためになる講演をありがとうございました。おかげで読みたい本がさらに積み上がりそうです。

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