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ミシュラン三ツ星を返上したシェフが問う「料理に“星”は必要か」フランスを代表するシェフ・ミシェル・ブラス――クローズアップ - こんどうみほ


 

 昨年9月、料理界に衝撃が走った。ミシュランガイド、通称レッドブックで三つ星を獲得し続けて来たフレンチレストラン「ブラス ル・スーケ」シェフ、セバスチャン・ブラス氏が、フェイスブックの動画を通じて次年度版への非掲載希望を表明したのだ。抜き打ちで行われる同書の調査、評価に対する「重圧」からの解放を求めてのことだという。

「息子、セバスチャンの動画は100万回以上、再生されています。反響は想像を遥かに超えるもので、同業者を含む、その多くが温かい応援と、決断を支持するものだったことは幸いでした。最終的な決定は彼が下しましたが、この件について私たちファミリーは2年前から考えてきました」

 21世紀の仏料理界を代表する一人、自然から料理を創造するアーティストとしてその名を轟かせるミシェル・ブラス氏は静かに口を開いた。

「今回の発信は、ミシュランを否定するものではありません。ゴーミヨ然り、料理店を格付けする有名ガイドのいずれもが、その調査方法や評価に暗黙のルールを設けています。しかし、それは必ずしも私やセバスチャンが思い描く店の在りよう、料理スタイルに沿うものではない。画家や音楽家と同じように、私たちは24時間、常に料理のことを考えています。純粋に作りたいものを作り、自由に表現することにこそ、料理人としての喜びがある。そこには、他者が定めたルールは要らないのです。実際、私は一度たりとも、星を得るために自分を曲げたことはありませんでした」

 ここ20年間、昼も夜もテーブルは満席。ブラス氏が言うところの「青々とした砂漠、不便この上ないライヨール村」まで、ブラススタイルを求めて世界中から客が集う。

「セバスチャンも46歳になり、難しい世代交代を乗り越えて、見事にこの10年、実績を積んできました。ゼロから星を増やして来た私に対して、いきなり三つ星を引き継いだ彼のプレッシャーは、想像を絶するものだったと思います。当初は失敗を待たれていた節さえありました。

 今なお、ブラススタイルを守りつつ、彼らしく、新たな挑戦を続けているわけで、そろそろ『星』に煩わされることなく自由に、雑念を払って進むといい。時は満ちました」

 インターネットの普及で、格付け本がもたらす価値も大きく変わって来ている。

「私を最初に見出したのは『ゴーミヨ』でした。1978年のことです。かつてのガイドブックは新人発掘の色合いも濃かったと思います」

 さて、来月発行の最新フランス版ミシュランガイド。希望通り、掲載はなしに?

「どちらにしても影響はない。ブラス流で進むのみ。店の価値はお客様が決めるのです」

ミシェル・ブラス/1946年生まれ。フランス・オーブラック地方のライヨール村で宿泊施設「ブラス」(旧ミシェル・ブラス)を営む。同施設内のレストラン「ブラス ル・スーケ」は、99年にミシュランの三つ星を獲得して以来、2017年版まで維持。約10年前に子息セバスチャン氏(71年生まれ)に後継を託した。

INFORMATION


「Michel BRAS」

「Michel BRAS」
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 取材・構成:こんどうみほ

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