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日本的平等主義で社員全体の報酬抑えるのは怠慢経営者のエゴ


【大前氏が報酬を抑える経営者を叱る】

 厚生労働省の発表によると日本の初任給は院卒者が23万3400円、大卒が20万6100円なのに対し、中国の通信機器大手ファーウェイ(華為技術)が日本で大学卒のエンジニアを「初任給40万円」で募集して大きな話題になった。経営コンサルタントの大前研一氏が、エンジニアを冷遇し、日本的な平等主義で社員全体の報酬を抑える経営者の怠慢とエゴを批判する。

 * * *
 私がファーウェイを訪れた時に印象的だったのは、社内の掲示板に「北国の春」と題した任正非CEOの檄文が貼り出されていたことである。

 日本を他山の石とせよとの主旨の檄文には概略、次のようなことが書かれていた。自分(任氏)は大好きな日本の歌謡曲『北国の春』を歌った千昌夫の故郷・東北地方を旅したが、かつてあれほど繁栄していた日本は見る影もなく衰退していた。我々は日本の失敗に学び、同じ轍を踏まないようにしなければならない──。

 かつての日本は優秀なエンジニアを輩出し、最先端技術で世界をリードしてきた。しかし、日本企業のエンジニアに対する報酬は、あまりにも低い。

 たとえば、東芝でフラッシュメモリを発明した舛岡富士雄氏への報奨金は、わずか「数万円」だったという。舛岡氏は、発明者が本来受け取るべき対価として10億円の支払いを求める訴訟を起こした(8700万円で和解)。また、日亜化学工業で青色LEDを発明した中村修二氏も、発明対価として200億円を請求した(8億4000万円で和解)。

 フラッシュメモリも青色LEDも会社の利益の大半を稼ぎ出したのだから、舛岡氏や中村氏が相応の発明対価を要求するのは当たり前である。にもかかわらず、日本企業は彼らのような傑出した人材の貢献に正当な報酬で応えてこなかったのみならず、裁判で争うという醜態を晒している。社員の能力や成果に対して給料を払うというシステムになっていないからである。

 大量生産・大量消費の20世紀はそれでも何とかなったが、21世紀は無理だ。「尖った人間」「特異な能力がある個人」をうまく生かせるかどうかで、企業の命運が決まるからだ。かつてのNHKの名番組『プロジェクトX~挑戦者たち~』では、たびたびチームプレーが礼賛されたが、もはや「和を以て貴しとなす」「みんなは一人のために、一人はみんなのために」という日本的な平等主義で社員全体の報酬を抑えるのは、怠慢経営者のエゴでしかない。

 ファーウェイの「初任給40万円」は、そういう日本企業のガラパゴス的な経営に風穴を開けるものだ。

 とはいえ、世界的に見ればファーウェイもまだ“バーゲン価格”である。スポーツ界では、しばしば日本人メジャーリーガーらの高額報酬が話題になるが、エンジニアや経営者も世界の一流企業ではトップアスリートと遜色のない高給を得ているという現実をもっと知るべきだ。

 そうしたグローバルスタンダードが日本でも当たり前になり、自分の大学の同期が新卒で年収1500万円の会社に就職したり、会社の同僚が年収5000万円で他社に引き抜かれたりするようになれば、日本の内向きな若者たちの目の色も変わるはずである。

 残念ながら日本企業は、ファーウェイが20年前に学んだ「日本の失敗」に、未だ学んでいない。それを変革するために、ファーウェイには今後も給与レベルをどんどん引き上げて、日本の採用市場を大いに引っ掻き回してもらいたい。

※週刊ポスト2018年1月12・19日号

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