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南北会談 印象に残った北朝鮮の余裕と韓国の弱腰ぶり


【南北会談は北の優勢?】

 臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になった著名人をピックアップ。記者会見などでの表情や仕草から、その人物の深層心理を推察する「今週の顔」。今回は、南北会談での韓国・北朝鮮両国代表の心理戦を読み解く。

 * * *
 2018年元日の朝、薄いグレーのスーツを着た金正恩朝鮮労働党委員長が、「新年の辞」で平昌五輪への参加を表明した途端、南北閣僚級会談が2年5か月ぶりに開かれた。和やかな雰囲気で始まり、北朝鮮側の代表団は融和ムードを演出していたというが、その心中はどうだったのだろう。

 会談が開かれたのは、軍事境界線にある板門店の「平和の家」。韓国側にあるこの施設に、北朝鮮の代表団は軍事境界線を徒歩で渡ってきた。軍事境界線は幅数センチで段差のあるコンクリートの帯。簡単にまたぐことができるその段差を、彼らはまたぐことなくわざわざ踏みつけ、その上に一度上がってから韓国側にやってきたという。わずかではあるが高い位置から、韓国側に足を下ろしたことになる。

 それを、分断の壁をなくそうというアピールという見方もあるが、隠された意図はそれだけではないだろう。というのも、高さは力を意味するのだ。人は高い所にいる者は力が強く、低い所にいる者は力が弱いと感じる。軍事境界線をまたげば、高さは変わらず北朝鮮と韓国は対等となるが、段差に上がれば、北朝鮮側は韓国よりも高い位置から会談に向かうことになる。

 つまり、自分たちが韓国よりも上、南北問題に対する主導権も自分たちにある、ということを示す意図があったのではないだろうか。そう思って会談を見ると、終始、北朝鮮側がリードしていたのも腑に落ちる。

 北朝鮮の李善権祖国平和統一委員会委員長と、韓国の趙明均統一相は並んで姿を見せたが、会場に入る瞬間、李委員長の肩が趙統一相より前に出て、李委員長が先に入った。またどちらの代表団も全員が書類を脇に抱えているのに、李委員長だけ手ぶら。内容が頭に入っているのだろうが、一人だけ手ぶらというのは、それだけ自分の権力や優位性を誇示している。

 強面でいかつい印象の李委員長は笑みを浮かべ、韓国側の施設なのに両手を広げて着席を促し、始めから主導権を握る。緊張した面持ちの韓国側の代表団は、背筋を正して椅子に座ったが、北朝鮮側は皆、肩を張って、ややふんぞり返った格好だ。これは、相撲協会の理事会で貴乃花親方が見せていた、あの対決姿勢と同じ。この姿勢を見ると、彼らの融和ムードがあくまで演出にすぎないことがわかる。

 また融和ムード演出はこんな所にも出ていた。以前なら、握手する手を指し出すのは韓国側。だが李委員長は今回、微笑みながら自分から手を差し出した。映像に納まる二人の姿を見ると、その意図が“融和”だけでないことがわかる。悠然と立って握手する李委員長と、テーブルを挟んで前のめりになって手を伸ばす趙統一相。この会談でどちらが優位に立っているのかを、象徴するような写真となっていたからだ。

 今回、北朝鮮側は全員がスーツ。新年の辞で金委員長がスーツだったことを考えれば、それに倣ったともいえるが、スーツ姿の方が親しみやすく感じるのは確かだ。人は自分と似ている者に好感を持ちやすいという性質がある。

 そんな諸々を考えると、融和というより、韓国を懐柔しているように見えてくる北朝鮮。果たして平昌五輪では、どんなパフォーマンスを見せるのだろうか。

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