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イラン反政府デモ:目覚めた若者、抑圧への蓄積した不満……鎮圧も根本解決遠く

 12月28日に始まったイランの反政府デモは、政権側の取り締まりにより鎮圧された。報道によると、「独裁者に死を」のスローガンのもと、抗議活動は2週間近くにわたった。国内の苦しい経済状況が引き金となったようだが、ほかにも複数の要因が若者を反政府行動に駆り立てていると識者らは分析している。

◆インフレと生活水準に不満

 NPOで国際防衛政策を研究するリチャード・バッファ氏によるUSニューズ&ワールド・レポート誌の記事によると、今回の反政府行動の参加者らは、最高指導者の退任とイスラム体制の解体を求め、警察署、政府機関、軍事施設などを襲撃した。反政府の抗議デモは、都市マシュハドで始まり、国内各都市へ広がりを見せ、「独裁者に死を」のスローガンの下、2週間近く続いた。

 記事では活動の背景として、物価上昇と低い生活水準を挙げている。政権は核合意の対価として巨額の資金を獲得したものの、イラン国内の状況は好転していない。経済成長は鈍く、依然としてインフレが起きており、若年層の失業率は40%を超えると指摘する。

 米ウィリアムズ大学で客員教授を務めるシャーウィン・マレクザデエ氏はワシントン・ポスト紙に、高等教育の普及を今回の反政府デモの要因として捉えた論説を寄せている。それによると、デモによる拘束者の大半は若者だとのことだ。イランでは18歳から24歳のうち70%以上が高等教育を受けており、10年前の3倍の水準となっているが、仕事や収入がない状況だ。マレクザデエ氏は高等教育の普及でイラン人口の半数を占める若年層による政治的議論が活発化し、イスラム体制への脅威となり得ると見ている。

◆繰り返す反政府運動

 経済以外にも、民衆の抑圧で政権への不満が高まっていたことが反政府運動に繋がった。USニューズ&ワールド・レポート誌の記事は、1905年に始まったイラン立憲革命などの例を引き、イランでは民主化を求める運動が活発であると指摘する。2009年の不正選挙でも抗議行動が行われ、イラン・イスラム共和国の名に相応しい、特権階級による支配を受けない「共和国」の概念の実現が強く訴えられた。これに対し政権は、時に暴力的な手段を交えてデモを沈静化した。こうした対応への不満がイランの人々の根底にくすぶっているという。

 ニューヨーク・タイムズ紙(1月8日)は過去のデモの事例の一つとして、2003年にテヘラン大学で発生したケースを振り返る。外交問題優先で国内投資を行わず、失業率抑制に失敗したことから、「パレスチナは忘れろ、我々を顧みろ」のスローガンを掲げ改革派が決起した。記事執筆者であり同紙の元テヘラン支局員であるナジラ・ファティ氏は、「イスラム革命防衛隊の民兵集団であるバシジの隊員らが、一般市民を殴打し突き刺しているのを私は目撃した」と、デモ粛清の生々しい目撃談を綴る。過去に繰り返されてきた反政府行動への抑圧が民衆の不満を招き、新たなデモの火種になっているようだ。

◆アメリカはデモを支持すべきか

 イラン問題では、アメリカの出方も注目される。USニューズ&ワールド・レポート誌では、従来の政権と異なり、トランプ大統領が抗議者らを強く支持するメッセージを発信していることを評価している。2009年の反乱時には、それまでの綿密な交渉に悪影響が出ることなどを恐れ、アメリカは静観の構えを貫いた。しかし対照的にトランプ氏は改革派を支持し、イラン側に政策変更を促したいという立場を明確にしている。

 ただしニューヨーク・タイムズ紙は、誤った支援は問題を招くと警告する。反政府デモへのトランプ氏の支持表明は、結果としてイランの保守派に改革派への攻撃材料を与えたと記事は指摘している。また、イランの核合意順守を認めず、合意破棄をほのめかしたことについても、外敵に対するナショナリズムを扇動し、保守派への好材料となったと論じる。

 今回の反政府行動はほぼ収束したものの、問題の根本的解決に必要なアプローチは様々な見解があるようだ。

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