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朝日、産経、読売 成人式社説「おじさんの壮大なひとりごと」を読み比べてみた! なぜか、居酒屋で絡まれている気分になる社説 - プチ鹿島

 新聞マニアにとって楽しみな日が今年もやってきた。それは「成人の日」。

 新聞を擬人化すればおじさんである。だから張り切って新聞おじさんは新成人にメッセージをおくる。しかしだいたい説教臭くなる。

成人式社説の名作 2012年の朝日「尾崎豊を知っているか」

 私が今でも名作だと大切にしているのが2012年の朝日新聞の社説。

 タイトルは「尾崎豊を知っているか」。


名作! 2012年1月9日朝日新聞

《ああ、またオヤジの「居酒屋若者論」か、などと言わずに、聞いてほしい。
キミが生まれた20年前、ロック歌手・尾崎豊が死んだ。》

 オヤジという自覚を持っているが、次第に饒舌になってゆく。

《彼が「卒業」「15の夜」といった曲で歌ったのは、大人や社会への反発、不信、抵抗。恵まれていないわけじゃないのに、「ここではない、どこか」を探し、ぶつかり、傷つく。
 その心象が、若者の共感を呼んだ。尾崎の歌は高校の教科書にも採用されたほどだ。》

「ともあれ、おめでとう。」

 このあと朝日おじさんは「尾崎豊はどこへ行ったのか」と問う。そして、

《いくら「若者よもっと怒れ」と言っても、こんな社会にした大人の責任はどうよ、と問い返されると、オヤジとしても、なあ……。
 でも、言わせてもらう。》

 壮大なひとりごとが始まった。続けよう。

《私たちは最近の社説でも、世界の政治は若者が動かし始めたと説き、若者よ当事者意識を持てと促した。それだけ社会が危うくなっていると思うからだ。
 だから、くどいけれど、きょうも言う。成人の日ってのは、そんなもんだ。
 ともあれ、おめでとう。》


©iStock.com

 朝日おじさんは「尾崎みたいに社会に対してもっと怒れ」と檄を飛ばした。そして言うだけ言って最後に「ともあれ、おめでとう」。やっぱり居酒屋で絡まれてるみたいだ。この力技を名作と言わずになんと言う。

今年の朝日が駆使したテクニック

 では、今年は新聞おじさんは何と言っていたのだろう。

「朝日」と「産経」が目立った。朝日の社説タイトルは「成人の日『希望と不安と焦燥と』」(1月8日)。出だしはこうだ。

《いったい自分は何者なのか。
 20歳のころは誰しも、見えない未来に思い悩む。》

 イヨ、待ってました! 青春芸!


1月8日の社説は保守おじさんとリベラルおじさんの対決となった

 このあと漫画家・故水木しげるさんの青年時代の手記から「時代はわが理想を妨害する。どうだっていい、理想を押し通そうじゃないか」という言葉を紹介。そして、

《きのうのオピニオン面に原稿を寄せた朝井リョウさん(28)は、大学生活を送るなかで小説家になる夢を忘れかけていた。あと数カ月で20歳という時、それを思い出す。執筆以外のことをやめた。在学中にデビューし、平成生まれで初の直木賞作家になった。》

《お笑い芸人の山田ルイ53世さん(42)は20歳まで引きこもり続けた。中学は進学校で、成績も上位。だが中2の夏休み明けに心が折れてしまった。(略) 引きこもりの6年間は、無駄だったと言う。でも、人生に無駄があってもいい、とも。》

 朝日おじさんは著名人の青春時代を紹介しながら《20歳という通過点での生き方で、一生が決まるわけじゃない。自分は自分の道をいけばよい。》と説く。

 注目すべきは次。

《大人に、ましてや新聞に「かくあるべし」なんてお説教されるのはまっぴらだ、と思うくらいでちょうどいい。その大人たちだって、いまだ冷や汗をかきながらの人生なのだ。》

 またしても朝日おじさんには「新聞」が「説教をしている」という自覚が見えるのだが、一方で先回りして説教臭さを打ち消しているテクニックも感じる。

 ちがう、ちがう、私が読みたいのはそんな予防線を張ったものではなく堂々と説教をする新聞おじさんなのだ! そんなおじさんはもういないのか?

唐突に「君はまだシンデレラさ 」と語る産経おじさん

 いたのである。産経おじさんが。

【主張】成人の日  「誰か」ではなく「自分」が(1月8日)

《大人の仲間入りをした「はたち」の皆さんにまずは、「成人の日おめでとう」とお祝いを申し上げたい。その上で改めて問うてみたい。》

 おめでとうの前に「まずは」とつける。説教する気満々。

 産経おじさんはある曲を紹介する。

《大人の自覚とは何か。これにはさまざまな見方があろうが、考える一つの糸口として「想い出がいっぱい」という歌を紹介したい。CMソングでもよく知られる「大人の階段昇る」の一節のあと、詞は「君はまだシンデレラさ しあわせは誰かがきっと 運んでくれると信じてるね」と続く。》

 かなり唐突な印象だが、引き続き主張に耳を傾けてみる。

《誰かが幸せにしてくれるのを待ち続ける姿勢は「シンデレラ症候群」とも呼ばれるが、ここには大人の自覚は見られない。自らの人生は自らの力で切り開くと決意することこそ、大人の階段を昇る第一歩なのではなかろうか。》


1月8日の産経と朝日 語りかけ方もそれぞれ

 35年前の曲を持ち出し「ここには大人の自覚は見られない」と叱っているのだ。見事である。言い訳しながら説教する朝日おじさんに比べ、威風堂々の説教おじさんの産経。おじさんに照れてない。

読売社説は1日ズラして、堂々と

 さてそんななか、読売新聞は成人の日に若者向けの社説は書いていなかった。読売も威風堂々のおじさんなのでそのメッセージが読めないことに私は寂しさを感じていた。しかし……。

 読売新聞、なんと翌日(9日)の社説に「成人の日 新たな世界の扉を開けえよう」ときた。1日ズラしてきたのである。真打ちという自負があるのだろうか。


真打ち登場! 読売おじさん

 さっそく読んでみると「新成人が生まれたのは1997年だ」。この年は山一證券が自主廃業した等の説明のあとに「国民の10人に1人はインターネットを利用し始めた頃でもある」と書く。このあとどう話を広げるのか?

《ネットは今や、不可欠な社会基盤となった。LINEなどのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)は若者同士の連絡手段として定着している》

 もしかして「今年の成人=ネットの代表」みたいな論旨なのだろうか。読者のふわっとした不安をよそに読売おじさんは続ける。

《確かに、SNSは手軽で便利な道具だ。犯罪に悪用されるなど、危険が潜むのは事実だが、それ以上に様々な可能性を秘めている。賢く上手に活用すれば、新たな世界が広がるだろう。》

 読売おじさんは「諸君が生まれた年はネットが流行り出した年。だから言うぞ、ネットは賢く使え。」とアドバイスしたのだ。

 ここで、「そんなの皆知っている」などと言ってはいけない。社説師匠がわざわざお言葉をくれたのである。

 おじさんがおじさんであるという理由だけで若者に優位性をかます「成人の日」の新聞。ある意味この日は新聞にとって「おじさんの日」なのである。

 早くも来年が楽しみです。


左から産経、朝日、読売

(プチ鹿島)

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