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2018年 米国は北朝鮮を攻撃する? “第3の道”はあるのか?

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 2018年が明け、「核のボタン」をめぐって「机には常に発射ボタンがある」「彼のよりはるかに大きく、強力だ」と早速応酬を繰り広げた金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長とアメリカのトランプ大統領。昨年来、相次ぐミサイル実験などで緊張が高まる北朝鮮情勢ですが、アメリカの攻撃はあるのか。別のシナリオはあり得るのか。元航空自衛隊幹部で小説家の数多久遠氏に寄稿してもらいました。

【写真】緊迫する北朝鮮情勢(上)アメリカはどこまで「本気」なのか?


[写真]ホワイトハウスのトランプ大統領。新年早々、金正恩委員長に対し「自分の核ボタンは大きくて強力だ」とツイッターで述べた(ロイター/アフロ)


 昨年1月の就任以降、トランプ大統領は、金正恩委員長、あるいは北朝鮮を過激なセリフで“口撃”し続けて来ました。曰く「チビのロケットマン」だとか、「彼等はもう長くないだろう」とか、果ては「役に立つ手段は一つだけだ」と言って武力攻撃を示唆するなどしてきました。

 しかし最近、特に昨年末12月に入ってからは、そうした発言が少なくなっています。

 これを、嵐の前の静けさと見るのか、トランプ大統領による瀬戸際政策の頓挫と見るのか、それともそうした軸とは別の動きなのか。識者の見解も割れています。

 2017年は結局大きな動きがないまま過ぎ去りましたが、2018年はどうなるのか。以下、元自衛官として、軍事的視点で起こりえることと起こりえないことを分析し、小説家として、トランプ大統領の思考を想像することで占ってみたいと思います。

(1)軍事的観点から見た攻撃の可能性

 軍事的な観点だけで情勢を見た場合、アメリカによる北朝鮮攻撃の可能性は極めて低いと考えざるを得ません。

 1994年の北朝鮮核危機の際、当時のクリントン米大統領は、空爆実施の一歩手前まで検討したことが明らかになっています。この当時は、韓国ソウルに向けられている長射程榴弾(りゅうだん)砲による報復が行われる懸念から、攻撃は見送られました。現在も北朝鮮側から「ソウルを火の海にする」という発言がなされるように、この状況には大きな変化は生じていません。

 大きな変化が生じているのは、「対韓国」ではなく、「対アメリカ」への直接攻撃能力です。

 度重なるミサイル発射実験により、北朝鮮の弾道ミサイルが、相応のペイロード(爆弾搭載能力)を持ってアメリカまで到達させられることが明らかになりました。大気圏再突入技術については、問題解決ができていないと見られていますが、弾頭の種類によっては、大きな被害が出ることは確実です。

 例えば、ミサイルに放射性廃棄物を搭載した「ダーティーボム」と呼ばれる手法を採れば、大気圏突入後にミサイル軌道がそれても、正常なタイミングで起爆しなくても、極端な話、全く起爆せずに、地上に落下して壊れただけで、非常に大きな損害を与えることができます。

 ダーティボムを米ニューヨークのマンハッタンに打ち込めば、福島第一原発事故で発生したような放射性物質の拡散が、ニューヨーク全体を避難指示区域にせざるを得ない状態にします。ミサイルによる直接の死者は出なくとも、その経済的影響は、アメリカのみならず、全世界に及ぶでしょう。

 トランプ大統領が北朝鮮攻撃を行う場合、1994年当時とは比べものにならない大きなリスクを負わなければならないのです。

 しかし、当時と最も異なるのは、リスクの度合いではありません。最も異なるのは「作戦目的」と「目標」です。

 1994年当時、北朝鮮は核開発を進めていましたが、まだ核爆弾を作るには程遠い状態でしたし、ミサイルもノドンミサイルがやっとでき上がったところでした。

 クリントン大統領の目的は、空爆によって核開発能力に直接の打撃を与える以上に、核開発を進めてきたことに罰を与えることでした。空爆は、その後の核開発を止めさせるための懲罰でしたが、当時は北朝鮮の核・弾道ミサイル能力が低かったため、それで良かったのです。そのため、空爆の目標も、ある意味何でも良かったのです。

 しかし、今や北朝鮮は米本土に脅威を及ぼす核・弾道ミサイル能力を持つに至りました。単に懲罰を与えたのでは、許容できない強力な反撃を受ける可能性が出てきました。

このため、米軍が攻撃を実施する場合、その目的は北朝鮮の反撃能力を破壊することになります。具体的な目標は、ミサイルの発射装置である輸送起立発射機(TEL:transporter erector launcher)です。

 最近話題になる「策源地攻撃」、あるいは「敵基地攻撃能力」は、このTELを攻撃できるかどうかが焦点です。

 防衛省も、アメリカ同様の能力を持つべく、「JASSM-ER」「LRASM」「JSM」の3種類のミサイル導入に向けて動いています。これらは、いずれも攻撃目標を検知できる赤外線画像誘導による終末誘導で、TELを標的とすることが可能です。

 しかし、自衛隊はもとより、米軍も、これらのミサイルを持っているだけではTELを破壊できません。

 これらのミサイルは、目標の近くまで到達すれば、搭載している赤外線カメラによってTELに向かって突入します。しかし、近くまで到達させるためには、発射前にミサイルに情報をインプットするか、発射後の飛翔中にデータリンクによって情報をアップデートしてやる必要があるのです。TELの位置が分かっていなければ、これらのミサイルによる攻撃はできません。

 今までの北朝鮮の発射実験の際には、首相が官邸に泊まり込むなどしていたことから、政府も事前に発射の兆候をつかんでいたようです。しかし、これはあくまで実験だったからに過ぎません。

 TELは、地中貫通爆弾(バンカーバスター)などによる破壊を防止するため、洞窟などの地下に隠されています。発射の際は、こうした洞窟から移動し、ある程度開けた場所でミサイルを発射します。

 TELを攻撃するためには、衛星画像などによる情報で、TELが隠されたおおよその位置を把握し、弾道ミサイルを発射するために移動を始めた時点から発射されるまでの間に、偵察機や付近に潜入させた特殊部隊が情報を送ることで、初めてJASSM-ERなどのミサイルによる攻撃が可能となるのです。

 こうした一連の活動は、湾岸戦争の際にも、イラクのスカッドミサイルを封じるため、スカッドハントとして実施されています。

 当時と比較し、ミサイルの能力自体は、進歩していますが、こうしたターゲッティングと呼ばれる目標を把握し、その情報を航空機等に伝達する方法は、大きく変わっていません。

 湾岸戦争では、スカッドミサイルのTEL捜索を、上空から「J-STARS」などの偵察機が行うほか、米軍の「グリーンベレー」や「SEALs」、イギリスの「SAS」などの特殊部隊が地上から捜索しました。ほとんどが砂漠であり、捜索が容易なイラクでも、これらの活動は困難を極めました。山がちで森林の多い北朝鮮では、こうした活動は、さらに困難でしょう。

 当時と比較して、アメリカ側に有利なのは、弾道ミサイル防衛が可能になっていることです。

 しかし、戦術級の短射程弾道ミサイルに対するものを除き、実戦でIRBM(中距離弾道ミサイル)やアメリカ本土に到達するようなICBM(大陸間弾道ミサイル)の迎撃が行われたことは、いまだかつてありません。アメリカが攻撃を実施する際、その作戦は極めて困難なものになることは、間違いないのです。

 しかも、アメリカが地上部隊を送り込めば、北朝鮮もそれに対して攻撃を加えます。アメリカは、オスプレイやヘリを多数保有しているだけでなく、特殊部隊の移送を行える潜水艦まで保有していますが、こうした地上部隊の潜水艦やヘリを使用した侵入・離脱は困難を極めます。

 結果的に、作戦は、地上戦闘を伴うものになります。

 そして、作戦を、極めて短期間に、奇襲的に行わない限り、朝鮮戦争のように中国軍が北朝鮮側に立って参戦するなどの可能性さえ出てきてしまうのです。

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