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学校に馴染めなくても「居場所」はある~異才発掘プロジェクト「ROCKET」の現場から~

「どうして私たちが関係者席に座っちゃダメなんですか?」「僕も話したい!」

12月某日、東大駒場キャンパスの一角で開かれた「異才発掘プロジェクトROCKET」のオープニングセレモニーは、のっけから、参加した子どもたちの「ヤジ」が飛び交う賑やかな場となった。

「君たちは、平均的な教育には収まりきらない可能性をもっている」

撮影:北条かや

挨拶に立った日本財団の笹川会長は、「君たちが国会の野党議員になったら、きっと議論が盛り上がるだろうねぇ」と、ニコニコしながらスピーチを続ける。

「異才発掘プロジェクトは、ユニークで個性のある子どもたちが、個性を存分に発揮するための教育制度です。君たちは、平均的な教育には収まりきらない可能性をもっている。その才能を存分に伸ばしてください」(日本財団、笹川陽平会長)

会場から拍手が起こり、子どもたちの歓声がところどころから聞こえる。

「異才発掘プロジェクトROCKET」は、日本財団と東京大学が共同で行っている教育プログラムだ。対象は小学校3年~中学校3年の子どもたち。学校に馴染めないが、1つのことに強い興味を示したり、突出した能力をもっていたりする子どもたちを集め、さまざまな学習機会を提供する。

1期生は600名の応募から15名の「スカラー」が選抜され、これまでに3期、59名のスカラーが誕生した。4期目となる今年は363名の応募から、32名が選抜されている。

学校教育が奪う、子どもたちの可能性

彼らの多くは、学校に「居場所」がない。不登校だったり、友人コミュニティに馴染めず孤立してしまったり、。イジメられた体験をもつ子もいる。そんな子どもたちでも、「好きなこと」を夢中になって追求している間は、目がキラキラと輝いている――であれば、その能力を学校以外の場で開花させるきっかけを提供してはどうか。学校教育が奪っているかもしれない彼らの可能性を、解放する学びの場があってもいいのではないか。

そんな思いから、「異才発掘プロジェクトROCKET」は生まれた。

ROCKETの教室は、学校生活では体験できないものだ。たとえば「解剖して食す」という授業。子どもたちの前に、いきなり巨大な海老が差し出される。ミッションは「この海老を調理し、仕上がりを考えてカットして、美しく盛り付けよ」。もちろんスマホなど、見てはいけない。教科書も、説明文もない中で、子どもたちは海老と格闘する。そして知らず知らずのうちに、生理学、生物学、熱物理などを体で覚えていくのである。

インドで「無秩序」に直面する

海外研修もある。今年のスカラーたちは、開発途上にあるインドを訪れた。今まさに発展を遂げようとするインドには、対向車線も無視して突き進む車やオートバイ、道路に乱入してくる牛たちなど、無秩序でカオスな空間が広がっていたという。子どもたちは、生きた体験の中で必死に物事を考える。

プロジェクトの責任者を務める中邑賢龍氏(東京大学先端科学技術研究センター教授)は、「バラバラな外の世界の?中に、子どもたちを放り出したい。生きるためのたくましさを身に着けてほしい」と語る。

「今の公教育は、子どもたちが『突き抜けていく力』を育てることができていない。公教育を否定するわけではないが、教育には多様な軸が必要。すでにある義務教育の中で、できる子をさらに伸ばすのは、誰かがやるだろう。僕たちは違うことをやりたい。『はじき出された子どもたち』を応援し、その才能を伸ばしたい」(中邑賢龍氏)

「変わり者」同士が集まれば、変わり者はいなくなる

子どもたちは、制限されない学びの中で、自らの限界を突破していく。学校ではうまく自己主張ができなかった子も、「邪魔者扱い」されていた子も、ROCKETでは変わり者同士が集まって、誰も自己主張を曲げない。だから面白い。

セレモニーの最中、笹川会長が、「学校よりここ(ROCKET)が良いっていう子は、どのくらいいるかな?」と問いかけた。何人もの子どもたちが、「はい、はい!」と手を挙げる。

「学校ではできないことがやれるから、ここが好き!」という子もいれば、「ROCKETで好きなことをやって、学校でのストレスがなくなったから、今はまた学校へ行ってもいいかなって思ってる」と話す子も目立った。

子どもたちには、もっともっと「居場所」があってもいい

学校に馴染めないけれども、無限の可能性を秘めている子どもたちを前に、教員免許をもっている私は微妙な気持ちであった。公教育は、子どもの能力を総合的に伸ばすために、かなりの時間を割いている。教科書ひとつとっても、体系的な学びになるよう、実に多くの工夫がされているし、学習指導要領は分厚く、子どものことを(建前上かもしれないが)第一に考えた教育プログラムが日本の知を支えてきた。

しかし、公教育がカバーできる範囲は、意外と狭いのかもしれない。

ROCKETに参加する彼らは、実に活き活きした表情をしている。それを見ていると、学校になじめない子どもたちにはこれまで、居場所がまったく用意されてこなかったのだと痛感する。学校側は、彼らを見て見ぬふりをしたり、「みんなと同じことをやりなさい」と、無理やり枠に当てはめようとしたり、そんな型通りの教育しかしてこなかった。「枠から外れた才能」を扱いきれないのだ。

子どもたちには、もっともっと「居場所」があってもいい。そのひとつが「異才発掘プロジェクト」なのだろう。

ただ、参加者には今のところ男子が目立ち、女子が非常に少ない。それを責任者の中邑教授が指摘したところ、スカラー生の1人が、「いいじゃないか、フェミニストどもに遠慮することはない!」とヤジを飛ばしたのは少し残念だった。

思春期にイデオロギー的なものへの反発が生まれるのは仕方ないが、子どもたちには、学びの多様性とともに、男女平等や性の多様性についても学ぶ機会を与えてほしいと願う。

[ PR企画 / 日本財団 ]

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