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再びの「夫婦同氏強制」違憲訴訟の行方

2015年末に「民法750条合憲」の最高裁判決が出た時は、やっぱりな、という感想しかなくて、それ以上何かどうかしなくては、などとは全く思いもしなかったのだが、ここに来て、また勇気ある人々が現れた。

「結婚時に夫婦別姓を選べない戸籍法は法の下の平等を保障する憲法に反するとして、ソフトウエア開発会社「サイボウズ」の青野慶久社長(46)ら4人が9日、国に計220万円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こした。夫婦別姓を禁じる民法の規定を合憲とした最高裁判決から2年。結婚後の姓を巡り、再び法廷で争われる。」(日本経済新聞2018年1月9日付夕刊・第10面)

昨年末にNHKでも取り上げられていて、いつ提訴するんだろう、と思っていた矢先の話。

原告を代表しているのが、数年前に育休取得で話題を集め、最近では「働き方改革」にも物申す等、一家言持つ経営者の方ということもあり、さすがだな、という思いは強い。

純粋な法律論の観点からすれば、「そもそも戸籍法って、民法の人事関係規定の施行法のような位置付けの法律ではなかったっけ?」という素朴な疑問も当然出てくるところだし*1、平等原則違反の根拠として、

「日本人と外国人の結婚・離婚や、日本人同士の離婚の場合は戸籍法にもとづいて姓を選べるのに、日本人同士の結婚では姓を選ぶ規定がない点」(同上)

を挙げているのも、ちょっと筋が悪い気がする*2

ただ、先の最高裁判決の際の原告側主張のように、「男女不平等(女性差別)」を前面に出して争ったところで、法廷で「夫婦同氏強制」の壁をぶち破ることは到底できない*3から、ここで、男性である青野社長自身が前面に出て、より本質的な問題である「社会的な不利益」を全面に押し出してきた、というのは、問題提起としては大きな意味があるのではないかと思っている。

裁判官が通称使用で判決を書ける時代になったとはいえ、やっぱり、傍で見ていて、「事実上の」ものに留まらない不利益はたくさんあるように思うので。

もちろん、戸籍法に縛られない生き方*4を選択してしまえばそれがある意味最強(笑)なわけだし、違憲判決や法改正を待つまでもなく、それが氏名と相互の独立性を維持したまま生き続けるための最も簡単で手っ取り早い方法だと自分は思っているのだけど、誰もが同じことをできるわけではないことも十分承知はしているだけに、今は良識ある人々の賢明なる判断によって事態が好転することを期待したい。

*1:戸籍法第14条1項の規定(戸籍上の氏名記載順序に関する「夫婦が、夫の氏を称するときは夫、妻の氏を称するときは妻」という規定)や、同法第74条1号の規定(婚姻時の届出事項として「夫婦が称する氏」とする規定)等を見る限り、民法750条の規定が当然前提となっているように思われるし、その民法750条が合憲と認められているものである以上、戸籍法にその例外規定を置かないことが違憲か、と言われると、???という気になってしまう。

*2:外国人との結婚の場合、そもそも外国人が日本の戸籍に組み込まれるわけではなく、あくまで事実上記載されるだけだと思うし、前提となる日本の民法750条も適用されないのだから、日本人同士の婚姻の場合とは前提が違いすぎるように思う。

*3:だって、法律のどこにも「妻が夫の姓に改めなければならない」とは書かれていないのだから・・・。また、今、事実上そうなっているからといって、未来永劫そうとは限らないわけで、将来的には、夫が妻の姓に合わせるのが主流になることだって考えられるのだが、そうなったらもう同氏強制でもいいよ、ということにはならないはずだ。

*4:要は婚姻届を出さないまま夫婦関係を継続する、ということ。

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