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セクハラ被害の「#MeToo」をその場で「NO」と言える社会へつなげる<いま気になること> - 亀石 倫子

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ハリウッドの映画プロデューサーによる性的暴行、伊藤詩織さんのレイプ被害、はあちゅうさんの電通時代のセクハラ・パワハラ……と性的被害の告発 #MeToo が続いています。これを一過性のブームで終わらせず、セクハラ被害そのものをなくすためにできることとは――?
弁護士の亀石倫子氏にご寄稿いただきました。

セクハラ被害者へのバッシングは性差別意識のあらわれ

 世界中に広がる「#MeToo」キャンペーンに背中を押され、過去に受けたセクハラ被害を告白する人が増えています。しかし日本では、その勇気に共感する声と同じくらい、心ないバッシングを目にします。

 被害者に対する非難や無理解は、性犯罪の刑事裁判やセクハラ被害を訴える民事裁判でも、たびたび直面することがあります。

 典型的には、「なぜ、そんな場所にのこのこついていったのか?」「なぜそんな露出の多い服を着ていたのか?」といった、被害者の「落ち度」を指摘するもの。「なぜ抵抗しなかったのか?」「助けを求めようと思えばできたはずだ」という非難もよく聞きますし、「なぜ今になって?」と、当時は相手の行為を受け入れていたのではないかという疑念をもたれることもあります。

 こうしたバッシングは、日本の男性中心の社会で形作られた性差別意識からきているように思います。

「抵抗しなかった=受け入れた」ではない

 でも、日ごろ私たちは、被害に遭うことを予感しながら行動しているわけではありませんし、どんな服を着ていようと、それは「被害を受け入れる」ことにはなりません。

「なぜ抵抗しなかったのか」と言う人は、密室で、相手との関係性や恐怖心から声も出ないような心理状態になることを、想像できないのでしょう。抵抗できなかったことが、「被害を受け入れた」ことになるはずがありません。

 セクハラは、見ず知らずの人から受けるものではなく、なんらかの社会的な関係におけるパワーバランスが背景にあることがほとんど。その関係性が途切れない限り、はっきり「NO」と言いにくいのは当然です。

 セクハラ被害者に対するバッシングは、無理解、偏見、想像力の欠如に基づく的外れなものばかりだと感じます。

「#MeToo」と声をあげる時の注意点

 セクハラ被害に対する理解が深まっていない日本では、いまだにこうしたバッシングがありますが、そうした社会の認識を変えていくためにも、当事者が声をあげ、セクハラ被害の深刻さを伝えることが大切だと思います。

 もっとも「#MeToo」は、相手に社会的な制裁を与えるためのツールではなく、被害にあった人の気持ちを多くの人々が共有し、問題の深刻さを考え、社会を変えていこうとするキャンペーン。相手の名前を出して(名前を出さなくても、相手が特定できるような情報を示して)被害を告発するのは、それが公共性や公益目的のない単なる復讐だったり、被害に遭ったことを確実な証拠で証明できない場合には、名誉棄損罪に問われたり、相手から損害賠償を請求されたりする可能性があるので、注意が必要です。

セクハラ被害に遭ってしまったら

 もし暴行や脅迫を伴う性的行為(体を触ったり、姦淫する行為など)をされたら、相手に刑事責任を問うことができる場合があるので、警察や弁護士に相談してください。暴行や脅迫がなくても、自分の意思に反して性的行為を強要されたら、相手に民事上の不法行為責任を問うことができる場合があります。また、セクハラが職場でおこなわれた場合には、公務員の場合は人事院規則、民間の労働者の場合は男女雇用機会均等法に基づいて、加害者や事業主の責任を問うことができる場合があります。

 セクハラは人目につかない場所でおこなわれることがほとんどなので、もし相手に「やっていない」とか「合意があった」と言い訳されたら、反論できないと泣き寝入りしてしまう方がたくさんいるかもしれません。でも、行為そのものを証明することができなくても、どちらの言い分を信用できるかを「間接的な証拠」、たとえば相手とのLINEのやりとりや、相手の日ごろの言動を見聞きしていた第三者の証言などから判断できることもあります。

 最初からあきらめず、まずは警察や弁護士に相談してみてください。

相談されたら「ありがとう」と伝える

 セクハラ被害をなくしていくためには、私たちひとりひとりが当事者の立場になって考え、意識を変えていく必要があります。

 もし、身近な人からセクハラ被害を打ち明けられたら、「なぜ」と問わず、自分を信頼して話してくれたことに「ありがとう」「あなたは悪くない」と言ってあげましょう。ずっと誰にも言えず、自分を責めて苦しんできたのは他ならぬその人です。話を聞いて、気持ちを理解してくれる人を必要としています。

 また、自分自身が「加害者」にならないために、自分と相手との関係性を今まで以上に意識する必要があると思います。相手を食事に誘ったり、個人的な関係を求めたりしたときに、相手は自分に「NO」と言えるだろうか。もし「NO」と言えないとしたら、相手がどのように受け止めるかとは関係なく、個人的なつきあいを求める行為自体がセクハラになり得るということを肝に銘じなければいけません。

「NO」と言って失うものは何か?

 そして「被害者」にならないためには、やはりそのとき、勇気を出して「NO」と言うしかありません。

 たしかにセクハラは、一定のパワーバランスが背景にあるケースが多いので、「NO」と言えばなんらかの不利益を受けるかもしれませんし、まわりの人たちは見て見ぬ振りをして、誰も救ってくれないかもしれません。

 でも、「NO」と言ったことで失うものは、本当にそんなに大事なものでしょうか。その人間関係、その職場環境、その教育環境でなければ、夢を実現できないでしょうか。たとえ失うものがあっても、性差別に屈しない強さ、それをはねのけるだけの力を身につけなければならない、と強く思います。

「#MeToo」キャンペーンによって、私たちの日常にセクハラが蔓延していることが広く知られるようになりました。もしかしたら自分も加害者だったかもしれない、という気づきを与えてくれた面もあります。

「#MeToo」キャンペーンの次には、「NO」と言える社会に。私たち自身がその覚悟と勇気をもって、変わっていかなければならないと思います。

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