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浜ちゃん「ブラックフェイス」騒動 海外メディアの批判厳しく 問われるお笑いの”民度”

[ロンドン発]大晦日に放送された日本テレビの番組「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!大晦日年越しスペシャル!」でお笑い芸人、浜田雅功さん(54)が米俳優エディー・マーフィー主演の映画「ビバリーヒルズ・コップ」 をまね、黒塗り顔、縮れ毛で登場したことが英BBC放送や米紙ニューヨーク・タイムズで国際的な問題として取り上げられた。

それをYahoo!News個人に「浜ちゃんのブラックフェイスは黒人差別なのか 知らなかったでは済まされない」と題してエントリーしたところ、非常に多くの方からご意見を頂いた。というより大炎上したと表現した方が適切だろう。

問題になった番組は「絶対に笑ってはいけない アメリカンポリス24時」と題して新人アメリカンポリスに扮した5人が大物俳優扮する署長との対面や訓練など、研修を積んでいくというお笑い企画。視聴率は「紅白歌合戦」の裏番組だったにもかかわらず、17.3%を記録した。

論点は、顔を黒く塗って歌ったり芸を演じたりする「ブラックフェイス」がお笑いとして許されるのかどうか。海外メディアは、黒人差別の歴史を思い起こさせて不愉快という日本在住の黒人作家らの批判を掲載する一方で、白人優越主義の歴史を持つ欧米の差別意識の押し付けという声も紹介している。

カルチャーギャップはお笑いのネタにはなるが…

筆者は多民族・多文化都市のロンドンで暮らしているので、笑いをとるために「ブラックフェイス」をして公の場に出ることがどういう結果をもたらすのか容易に想像できる。ちなみに800万都市ロンドンの人口構成は白人60%、アジア系18%、黒人13%、ミックスド(異なる人種を両親に持つ子)5%。私たちロンドンで暮らす日本人は人口3万5,000人なので、0.43%の超マイノリティだ。

一方、日本の総在留外国人数は約300万人。日本の人口1億2,670万人の2.37%。日本の在留外国人統計では国籍や地域しか分からないので黒人の人口割合は正確には分からない。日本で暮らす8人の黒人が登場する「ブラック・イン・ジャパン」というYouTubeの動画を見ると「日本は安全」「私たちに期待してくれているし、応援してくれている」「日本では黒人はマイノリティだから仕事のチャンスが豊富」と好意的だ。

海外で暮らして分かるのは日本人や日本、日本企業への評判は概ね良いということだ。入管やホテルのフロントで「こんにちは」「ありがとうございます」と日本語であいさつされるとうれしくなる。たまたま取材で出会った人が現地の日本企業で働いたり、日本で暮らした経験があったりして助けられたことも一度や二度ではない。

しかしその一方で日本の流儀をそのまま海外に持ち込んで現地スタッフにソッポを向かれる日本人駐在員の失敗談もよく耳にする。親しくしている現地の友人を招いた食事会で日本人のロリータ趣味や有料の添い寝フレンドなど海外から好奇の目で見られているステレオタイプの性風俗が話題になって困惑することも決して少なくない。

肌や髪の毛、言葉や宗教、文化、習慣の違いは好奇の対象になり、大衆の関心を集めやすい。こうしたギャップはお笑いの格好のネタになる。違いを強調するだけで理由もなく笑えてくるのである。しかし笑いのネタにされた方は不愉快になったり、困惑したりするだろう。

浜ちゃんがエディー・マーフィーを真似て顔を黒く塗って登場するだけで、どうして面白く感じてしまうのか、私たちはもう一度じっくり考えてみる必要がある。白人が顔を黒く塗った「ブラックフェイス」で歌ったり踊ったり芸を演じたりする「ミンストレル・ショー」で視聴率を稼ぐことが出来ることは歴史が証明している。しかしマジョリティ(強者)がマイノリティ(弱者)のステレオタイプを誇張して面白おかしく演じるのは差別とみなされるようになった。

そうした歴史を知った上で日本テレビがこの問題を企画していたとしたら、極めて悪質と言わざるを得ない。

多くの英語メディアが批判的に報道

海外でマイノリティとして暮らす日本人の1人としては「ブラックフェイス」で笑いを取ったり、視聴率を稼いだりするのはすぐに止めてほしいと願っている。公共の電波を使ってくだらない悪ふざけを垂れ流すより、黒人差別と闘ったアメリカの公民権運動や南アフリカのアパルトヘイト(人種隔離政策)撤廃運動をテーマにした映画やTVドラマ、ドキュメンタリー番組を流した方がよほど日本と日本人のためになる。

「ブラックフェイス」が表現の自由として許されると考えているのなら、日本テレビのプロデューサーは浜ちゃんらお笑い芸人を引き連れて、南北戦争時の南軍指導者像撤去をめぐり人種的緊張が高まる米バージニア州シャーロッツビルや、南アの旧黒人居住区で「ブラックフェイス」のパフォーマンスを企画してみてはどうか。

なぜ公共の電波を使って「ブラックフェイス」をお笑いの対象にするのがいけないかは、筆者のフェイスブックやツイッターへの書き込みを見れば明らかだ。こうした振る舞いが国際的な問題を引き起こすとは全く考えずに、海外メディアの批判に強烈に反発する人がこれほど多いとは思わなかった。

ワーキングホリデーや留学でロンドンにやって来た日本人がハローウィンのパーティーで何も知らずに「ブラックフェイス」で黒人に扮装したらどんな結果を招くのだろう。意地悪な英メディアの反応を想像しただけでマイノリティの日本人移民としては怖くなる。

小学校や中学校の義務教育で、ある程度の人権教育はカバーできるとしても、社会人に対しては新聞・テレビ・ラジオ・雑誌といったレガシー・メディアが啓蒙する役割を果たさなければならない。しかしインターネットの普及で経営が苦しくなったレガシー・メディアが販売部数維持や視聴率稼ぎのために率先して人種・民族・国家間の対立を煽る傾向が日増しに強くなっている。

浜ちゃんの「ブラックフェイス」についてはBBCやニューヨーク・タイムズ紙だけでなく、数え切れないほどの英語メディアが批判的に報じている。それなのに日本人の多くは(1)黒人差別の歴史がない日本の「ブラックフェイス」には差別の意図がない(2)日本国内では何も問題になっていないのに、わざわざ騒ぎを大きくしているだけ――と猛反発している。

お笑いも時代に合わせて進化するべき

BBCのフェイクドキュメンタリー番組「Come Fly with Me」(2010年放送)でも「ブラックフェイス」の演出があったと電子メールで伝えてきた人もいる。読者の反応を見て、筆者が考えたことをまとめると次のようになる。

(1)インターネットが発達した今、日本だけは特別というロジックは通じない。この問題を取り上げた海外メディアの数を見ただけでもそれは明らか。「笑ってはいけない」のスポンサー企業は「ブラックフェイス」を促進するためにオカネを出しているのだろうか。

(2)「Come Fly with Me」で顔を茶色に塗ってジャマイカ女性に扮したコメディアン、マット・ルーカス氏はその後「ブラックフェイスや女性に扮装する癖のある人を笑いのタネにしない」とビッグイシューのインタビューに答えている。もう、そうした芸が笑える時代でなくなった、人々を不愉快にさせるだけというのが理由だった。

(3)少子高齢化で国内市場の成長が見込めない中、海外事業を拡大する日本企業にとってこの手の問題はマイナスにしかならないことは1980年代後半の黒人マネキン・黒人人形騒動で経験済み。アメリカをはじめ世界中で人種的緊張が高まる中、黒人差別と受け止められる表現は止めた方が賢明だ。

(4)日本がグローバル化を掲げるのなら、語学教育だけでなく、メディアが中心になって世界や人類の歴史、ヒューマン・ライツ(人権)、シビル・ソサエティ(市民社会)について啓蒙していくべきだろう。

(5)有色人種の国から初めて西欧列強の仲間入りを果たした日本は第一次大戦後のパリ講和会議の国際連盟委員会で、人種差別の撤廃を連盟規約に明記するべきだと主張した。アメリカでの日本人移民排斥問題が背景にあった。本音は「亜細亜及び太平洋に於ける未開の地方に日本人移民及び貿易の自由を保証せしめ東洋に於ける其優越権を承認せしむる」(1919年、東京朝日新聞)ことにあったとしても、今の日本人は人種差別の撤廃を唱える気概を失ってしまったのか。

平たく言えば、芸人と客の「お笑いの民度」が問われているわけで、浜ちゃんと日本テレビにはお笑いを時代に合わせて進化させて下さいと申し上げるしかない。

参考: Yahoo!News個人「浜ちゃんのブラックフェイスは黒人差別なのか 知らなかったでは済まされない」木村正人
https://news.yahoo.co.jp/byline/kimuramasato/20180105-00080159/

“I wouldn't black up or make transvestite jokes today, says Little Britain star,”Lancashire Post
https://www.lep.co.uk/whats-on/tv/i-wouldn-t-black-up-or-make-transvestite-jokes-today-says-little-britain-star-1-8784919

「日本人の人種観と黒人問題―大正期を中心として―」佐藤宏子著
https://opac.library.twcu.ac.jp/opac/repository/1/3441/KJ00005535863.pdf

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