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ゲームやりすぎは病気なのか、を考察する。

WHO(世界保健機関)がゲームのやりすぎ(による依存)を疾病指定した、というニュースが年明けにリリースされ、一時期話題になった。

すぐに飽きられたのか、あっという間表に出てこなくなったが、これはもう少し深堀すべき問題なのではないか。

問題の論点は一つに集約できる。

「やりすぎは病気か」という論点である。

WHOの定義によれば、ゲームにかける時間をコントロールできずに日常生活に支障をきたす事態が12ヵ月以上続いた場合、疾病に指定される。(https://icd.who.int/dev11/l-m/en#/http%3a%2f%2fid.who.int%2ficd%2fentity%2f1448597234

さて、このモデルが疾病の定義に導入できるとすれば、読書や山登りやキャバクラ通いは同じように疾病の指定対象となるのか、という論点が提起されうる。

四六時中、山のことばかり考えている人はいるし、私自身、若いころはハヤカワのSFやミステリを中心に本を手放せずに睡眠時間を削っていた時期があったし、キャバクラ通いはまあ、どうかな、前の会社の社長はそんな感じだったなあ。

寝食を忘れて没頭する、という状態は全てやりすぎ(→依存)である、という考えが肯定されるのなら、WHOは今後様々なバリエーションを導入しなければいけませんね、で一件落着、終了と相成る。

一方、依存かどうかは行動の在り方によって変わる(ゲームは依存であり、読書は依存ではない)、とした場合、依存か依存でないか、と区別する基準は何なのか、という新たな問題が生じる。

実際、一般的にはゲームは依存といえても、読書は依存とはいわない、とする風潮がかなり強いと思われる。
私が学校薬剤師をやっている中学校でも学校保健アンケートで、一日のゲーム時間の制限を促す項目はあるが、読書時間の制限を促す項目はない。

ゲームと読書では一体何がどう違うのか。

読書は教育的だが、ゲームは教育的ではない、という指摘には、ただの時間つぶしにしかならない小説は山とあるし、クリエイティブなゲーム体験は珍しいものではない、という反論が可能だ。

また、課金制のゲームは際限なく金銭を消耗するのに対して、書籍代はそこまで金がかからない、という指摘もあるだろう。しかし、この問題点は政治的に解決可能な単なる制度上の課題なので、行動の本質に関連する疾病指定のカテゴリーには該当しない。

両者の違いを分別する基準を見出すのは、意外に難しい。

それでもやや強引にその基準をつくるとすれば、受け取る情報量の多寡及び刺激の強化といえるだろうか。

読書(文字)で得られる情報量はゲーム(動画)で得られる情報量よりも少ない。文字で得た情報がいったん脳内で再構成されて意味を見出していく読書に比べ、ゲーム画面において光、音、形状認識が次から次へと提示される情報の波は、脳内でその意味をまとめる作業を必要としない。
(行間を読む、という作業はゲームにおいてはあまり必要としない。)

言い換えれば、脳が刺激される強さ(情報量)が違う。

刺激の強いゲームは、脳内作業を自律的というより他律的に促進するので、依存になりやすい。or行動がループしやすい。orやめる、という自律的な規制がかかりにくい。

と、いちおうは説明ができるが、これも一面的な解釈に過ぎない。

ゲームでも脳内作業を自律的に促進する(創造力が刺激される)ものもあるし、本でもただ単にもともと身体的にビルトインされたありがちなストーリーを自動的に消化するだけのものもある。

ゲーム的なものが依存しやすく、読書的なものは依存しにくい、という程度が妥当なのではないかと思う。

山登りやキャバクラは依存的か否か、はそれぞれ自然との関係性、人間(表情)との関係性から読み解くことが可能だが、ここでは割愛する。(キャバクラの案件の方が面白そうだ。)


蛇足1

仏教の修行項目である戒、定、慧、いわゆる三学は、刺激の極小な状態で心の平安を得る方法論だが、依存症の対策には良いのではないか、と思う。

蛇足2

ゲーム的なものだとか読書的なもの、あるいは日常生活の破たんとかいった概念は量的に測定するのは難しい。WHOのいう12ヵ月以上なる数字には根拠がないし、例えば20%以上の日常生活の破たんを疾病とする、といった定義は不可能だ。

こういった精神的・環境的な状況に左右される質的な問題(依存的な事態とそうではない事態は、自然物に対した時、紺色と群青色をどこで見分けるかという問題と似ている)は、モデル化・計量化が当てはまらない種類のテーマである。
それにもかかわらず、強引に科学的方法論を当てはめようとする状況は非常に現代的であり、このようなあり様は他にも様々な分野(医療・経済学・公共事業等)で見られる。

大変興味深い問題だが、他に客観的に評価する手段を人間は持たないので、仕方がないともいえる。

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